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読書記録:塗仏の宴〜宴の始末〜

あらすじ
後の始末をお願いします――。京極堂、覚悟を決める。

「愉しかったでしょう。こんなに長い間、楽しませてあげたんですからねえ」。その男はそう言った。蓮台寺温泉裸女殺害犯の嫌疑で逮捕された関口巽と、伊豆韮山の山深く分け入らんとする宗教集団。接点は果たしてあるのか? ようやく乗り出した京極堂が、怒りと哀しみをもって開示する「宴(ゲーム)」の驚愕の真相。

塗仏の宴~宴の支度~を読み終わったと同時に~宴の始末~のページを開いていました。読書になかなか時間も割けず、過去作の登場人物が次々出てきた前作を読み終わるまでに二か月かかりました。本当は少し休憩を挟んで短編小説などを読みたかったのですが、当たり前のように後編の~宴の始末~を開いて読み始めた時には、俯瞰で自分を見ている自分がその光景を鼻で笑っていました。結局読むんかい!と。

そんな後編は前編以上に面白かったです。
前作で大量に出てきた宗教団体や催眠術によって記憶も自分もあやふやになっている登場人物たちを一つ一つ紐解く後編。前編で作られた点が後編で一気に線となっていく気持ちよさったら。読みながら鳥肌が何回も立ち、心の中で何回も「あーーー!!」と叫んでいました。
特に後半の登場人物全員がある理由を持って同じ目的地を目指すのですが、
その描写がまさに「宴」で、タイトル回収してる!と興奮しました。

私は、関口君も京極堂も勿論好きなのですが、やっぱり榎木津さんが活躍するのが一番うれしいです。眉目秀麗で喧嘩も強くて不思議な力もあって・・完璧すぎませんか?(笑)
百鬼夜行シリーズはメインキャラだけでなくサブキャラ(青木刑事やあっちゃん、鳥口君等)もすごく魅力的で今作は皆大活躍していてそれもまた読んでいて楽しかったです。そして関口君のヒロインっぷりも個人的には好きでした。関口君にはいつも囚われの姫でいてほしいです。
そんな個々のキャラの魅力も満載でしたし、先ほども述べたように前作から繋がっていく点が線になる描写はさすがとしか言いようがありませんでした。正直前編の序盤に出てきて、ふわっとだけ名前を読んだだけでそのあとにこれでもかってくらい登場人物が増えるので誰だっけ?ってなってた人物が後編のラストの種明かしの時に大事だったりして、あ・・あ・・!よ、読み返さなきゃとなって、鈍器本を2本持ち歩かないといけない状態でした。
記憶力に自信のない方は絶対に登場人物をメモしながら読むべきです。

ネタバレをせずに感想を述べるのが難しい後編ですが、私はどこかシャーロックホームズ感を感じました。やはり探偵役にはライバルが必要なんだなというのはどれだけ時代が経っても変わらない現実なのかしれません。
そして案の定そのライバル役も過去作に出てきていたようですが、すっかり忘れており、誰だっけ?状態でした。
百鬼夜行シリーズ専用の登場人物ノートも必要かもしれません(笑)

また、後編は好きなシーンや文章が本当に多く、いくつも感銘を受けました。
不思議な事に先生の本を読んでいると、その時ちょっと悩んでいることや思うことがあることへのアンサーやアドバイスを感じることが多いです。
これが陰陽師の力??
沢山あるので抜粋して一つだけ

「言葉を発する者の真意は発せられる言葉とは別のところにあって、それは言葉自体からは汲めないのだと、かなり長い時間をかけて貫一は学習した。」

言葉、会話、伝えることの難しさを日々感じる自分にとってこの言葉はまさに思っていたことを言語化された気持ちでした。

特に今回は催眠によって記憶や自己が不安定、不確定になっていく中でアイデンティティとは、記憶とは何かがテーマになってるので心に響く文章や台詞が多かったです。

久しぶりの京極先生の本は分厚く、読み、覚えることも多いですが謎解決の爽快感と同時にやるせなさ、切なさもあり、読了後はその世界観に暫く浸っていたくなります。

17年ぶりの新作、鵼の碑まであと2作。

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