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お散歩、海と月

舟で隣の島に渡り、反対側の港まで自転車を漕ぎました。

島のおばあちゃんに借りている、生協のレジかごが荷台についた潮風でさびさびの自転車です。もはや元の色はわからないくらいですが、日差しが当たると一部青のメタリックが反射します。

見た目はぼろぼろですが、意外とパワーのある子なんです。
ブレーキ以外は軋まないし上々です。
島で生きてきた自転車という感じがしてちょっと誇らしい。

隣の島の反対側の港は、この島の主要な港として栄えていて、コンビニもあります。

久々のコンビニでのお買い物はビールとコロッケ。港で海を眺めながら食べました。
なんだか学校帰りの買い食いのような背徳感。
たまにはいいものですね。

帰り際は月が綺麗でした。
船の上から月を見るときはいつも中原中也の「湖上」を思い出します。

ポッカリ月が出ましたら、
舟を浮べて出掛けませう。
波はヒタヒタ打つでせう、
風も少しはあるでせう。
沖に出たらば暗いでせう、
櫂(かい)から滴垂(したた)る水の音は
昵懇(ちか)しいものに聞こえませう、
――あなたの言葉の杜切(とぎ)れ間を。
月は聴き耳立てるでせう、
すこしは降りても来るでせう、
われら接唇(くちづけ)する時に
月は頭上にあるでせう。
あなたはなほも、語るでせう、
よしないことや拗言(すねごと)や、
洩らさず私は聴くでせう、
――けれど漕ぐ手はやめないで。
ポッカリ月が出ましたら、
舟を浮べて出掛けませう、
波はヒタヒタ打つでせう、
風も少しはあるでせう。


真っ黒の海に優しく伸びた月明かりは、耳を澄ますときらきらと音がしそうな気がします。

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