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ボードゲームのようでボードゲームでない「Game System」について書いてみる。


BoardGameGeekのCategoryのなかで、最も異彩を放つ「Game System」。これについて、あれこれ書いてみます。まとめて一連の流れにしにくいので、断章形式でいきます。

【1】
BGGでは「Game System」を以下のように定義しています。

A Game System is an item whose components are not a game, per se, but are used to play games. Examples include Piecepack, Decktet, Shibumi and Rainbow Deck.

Items that describe a single game or a game that has a set of scenarios are generally not regarded as a games system.

訳しますと、
ゲームシステムは、それ自体がゲームではないが、ゲームをするために使用される要素であるアイテムです。 例としては、Piecepack、Decktet、Shibumi、Rainbow Deckがあります。
単一のゲームまたは一連のシナリオを持つゲームを説明するアイテムは、一般にゲームシステムとは見なされません。


【2】
「Game System」というカテゴリの概念が出てきたのは、「ボードゲーム」ではないが「ボードゲームとしてカテゴライズ」しなくてはならないものが出来てしまった、という事情があったと考えます。


【3】
実のところ、かなり昔から「Game System」は存在していて「ボードゲーム」とも区別されています。

ボードゲーム・カードゲーム

という言い回し、少し前には結構耳にしていたんじゃないですか?
「カードゲーム」は、世界的には「(Traditional)Card Game」とか「Playing Card」とか呼んでいる、ご存知「トランプ」のことです。つまり、ある時期において「Game System」=「(Traditional)Card Game」だった、ともいえます(と言いつつも、BGGでは「Card Game」より以前の「Game System」として「Marble(ビー玉)」など登録されています)。


【4】
2001年に登場した「Piecepack」は、ボードゲーム版プレイングカード(いわゆるトランプ)のアイディアを基に制作されました。
ゲームも150以上のルールで遊ぶことができます。
特筆すべきこととして、2015年に「Infinit Board Game」というタイトルで販売しましたが、Bordgamegeekが携わっています。


【5】
「Game System」であるかどうか、おおよそ判別する方法がいくつか考えられます(例外も存在しますが)。それは、

そのタイトルのボードゲームはない

です。例えば「トランプ」や「ドミノ(Domino)」などというタイトルの「ボードゲーム」は……ないのでは?「トランプ」という「Game System」を用いて「七並べ」や「スカート」というタイトルの「(ボード)ゲーム」で遊び、「ドミノ」という「Game System」を用いて「ストップ」や「ベルゲン」というタイトルの「(ボード)ゲーム」で遊んでいるのです。


【6】
当初は「Game System」ではなかったが、後に「Game System」になってしまった「ボードゲーム」もあります。
実例としては「Looney Pyramid Games」があります。

1989年に「Icehouse Piece」として販売して、ゲームも「Icehouse」のみでした。
その後10年を経て、1999年から「Icehouse Piece」を使ったゲームが次々と作られていきました。
2001年には10以上のゲームをまとめた「Playing with Pyramids booklet」、2016年にはKickstarterでも成功した「Pyramid Arcade」(20以上のゲームルール付き)が販売されました。

【7】
では日本では「Game System」に相当するものがあるのか?あります。
例えば、カワサキファクトリーさんが作った「ni-go」「GEAR11」です。

【8】
BGGでは「Game System」でカテゴリーにしているが、それ違うんじゃない?というものもあります。
例えばチーパスゲームの「Chief Herman's Holiday Fun Pack」など、本来であれば「ボードゲーム集」として扱うほうがしっくりくるものもあります。
クニツィアさんの「古代ローマの新しいゲーム(Neue Spiele im alten Rom)」も「ボードゲーム集(あるいはアンソロジー)」として扱ったほうがよいかも知れません。

【9】
「Game System」と異なる角度のもので、「バリアント」があります。
例えばチーパスゲームの「ペアーズ(Pairs)」。基本となる「フルーツデッキ」は、1つのルールのみ収納されています。
一方で、何種類もデザインを変えたデッキを販売しており、それぞれに、基本ルールと異なるルールのゲームが1つ追加されています。それらは「ペアーズ」の基本ルールの派生(バリアント)ルールとして扱っています。
※それらのルールを集めた「Pairs:Deluxe Edition」もあります。

また、将棋の例だと「回り将棋」。もはや将棋のルールからかけ離れていますが、あれもバリアントルールとみなすことができます。

【10】
あえて暴言を吐くと


「Game System」は「遊具(Plaything)」あるいは「おもちゃ(Toy)」というツールである

と考えたほうが、しっくりくると思います。


【11】
ですから、「Game System」をレビューするのは、実は大変なことだと思います。というのは、本来2つの異なる事象について批評していくものと考えるからです。
1つ目は、「Game System」で遊ぶことのできるゲームを、通常の「ボードゲーム」と同様にレビューすること。
この件に関しては実例もたくさんあるので問題ないと思います。

大変な2つ目は、その「Game System」から新たなゲームを1つ以上作り出してみて、ゲーム作成ツールとしての可能性をレビューする、ということです。

【12】
1つ問題を残して、ここで一区切りします。

「Board Game」と「Game System」、「ゲーム」と「おもちゃ」の違いは、どう説明したらいいだろうか?


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