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楽して稼いだ話

大学生になって初めてアルバイトをした。
初めてにして最高のバイトだった。

テレビ局のマラソン中継で、
カメラマンの手伝いをする仕事。

参加希望者は直接テレビ局に集まる。
テレビ中継のバイトというと
いかにも過酷そうなイメージがあった。
身構えてテレビ局に向かった。

機械的に振り分けられ、
自分の配置はゴール直前のビル屋上に。
カメラマンと二人きりである。
緊張している自分にカメラマンが言った。
「兄ちゃん、君ラッキーだよ」

何がラッキーなのか、現場について分かった。
ゴール直前の一瞬だけ映る地点なので
あんまりやることがないのだ。
前日と本番の2日間拘束されたが、
機材を運んでしまえばあとは暇だった。

カメラマンも気さくな人で、
仕事で会った芸能人の話や家族の話など
コーヒーを飲みながら談笑して過ごした。
それも飽きると二人で週刊誌を買いに行き、
屋上の気持ちいい風を感じながら読んだ。

中継は本当に一瞬だった。
先頭が近づいている連絡を受けると
二人であわてて準備をする。
あとはカメラマンがしっかり撮るだけ。
実際に中継したのは数十秒だった。

その数十秒が終わるとさっさと撤退。
2万円くらいもらえたような気がする。
18歳の自分には大金だったが、
何に使ったのか全く覚えていない。

あんなに楽な仕事はあれ以降一度もない。

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