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雑司が谷散人の街道遊歩 0738

暗越奈良街道 2日目-10 2019.4.17

暗越奈良街道はこの先、奈良の市街地へ一直線に向かい、平城京の三条大路をなぞる形となる。
宝来交差点の先を右へ入ると垂仁天皇陵があるが、交差点の手前左手には「垂仁天皇陵飛地い号」の標柱の立つ丘。
兵庫山古墳と呼ばれ、6箇所ある飛地陪塚のひとつ。

垂仁天皇陵飛地い号

暗越奈良街道は近鉄尼ヶ辻駅前へ。
かつて4代将軍家綱の寄進による尼寺があり、この地が三条大路と西一坊大路の辻だったことから、尼ヶ辻の地名が生じたという。

尼ヶ辻駅

尼ヶ辻駅の先、暗越奈良街道が阪奈道路と合流する場所に、阿弥陀堂と地蔵堂が建つ。
伏見崗と呼ばれ、東大寺の大仏建立にまつわる「伏見翁」の霊地。
東を向いた阿弥陀仏が見据えるのは、東大寺。

阿弥陀堂と地蔵堂

道幅の広い阪奈道路へ合流し、ここでようやく国道308号は国道らしい様相となる。
すぐに渡るのは秋篠川。
佐保川の支流で、平城宮跡の西側を南下する川。

秋篠川

奈良の中心地が近づくと、国道は佐保川を渡る。
奈良の都に近い川として、古くから多くの歌に詠まれた川で、万葉集や山家集にその名が見られる。
春は桜の名所。

佐保川

暗越奈良街道は三条通りとして奈良駅の北側へ。
JRの高架下をくぐると、右手に奈良駅。
三条通り沿いに建つ2代目駅舎は、昭和9年築。
和洋折衷様式のこの建物は、元は京都帝室美術館の設計コンペ落選案を再利用したもので、平成15年まで駅舎として使用の後に曳家で移動され、今は観光案内所。

奈良駅2代目駅舎

奈良駅前を過ぎると、暗越奈良街道は三条通りとなり、奈良公園、春日大社へのメインストリートとなる。
平城京の三条大路を引き継ぐ道筋。
三条通り一帯は、伊勢参りや春日詣の宿場として賑わい、明治23年の奈良駅開業後は旅館や土産物店が多く建ち並んだ。

三条通り

三条通り左手に南都銀行本店。
大正15年築で、南都銀行の前身のひとつ、旧六十八銀行奈良支店として建てられたもの。
ギリシャ様式の外観は奈良で唯一ともいわれる。

南都銀行本店

三条通りは橋本町の奈良県里程元標前へ。
脇には奈良市道路元標も。
里程元標は復元で、明治期に置かれたものと同じく、京都、大阪、伊勢などへの距離が示されている。
背後は復元の高札場。
三条通りはこの先も猿沢池北側から奈良公園、春日大社へと伸びるが、暗越奈良街道の旅はここで終点。

奈良県里程元標

大阪高麗橋から奈良公園手前のこの地まで、延べ2日で完歩。
生駒山地を挟んで大阪と奈良盆地を結んだ街道は幾筋もあったが、暗越奈良街道はその代表格でもあり、最短ルートでもあり、大陸からのシルクロードの末端でもあった。
これからも様々な道筋で奈良の地を訪れることを楽しみに、この日はこれにて近鉄奈良駅から大阪へ戻る。

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