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子どもたちの学びに寄り添うサマースクール

 動物園はただ動物を飼育展示するだけの施設ではなく、動物たちの姿や行動、匂い、声、肌触り、暮らしぶりなどから様々なことに気がついたり感じたり学んだりしながら、動物に興味を持ってもらい、生物多様性保全と環境保全の意識を育み、行動に移すきっかけをつくる場所です。
 その役割を果たすために、ZOOMOでは動物を間近で観察することができる給餌体験や、飼育係のガイド、園内の林や沢を使った自然体験、遠足で来園してくれた団体に向けたプログラムなど、たくさんのイベントや教育プログラムを行ってきました。

水の中の生き物観察

ピューマ餌

 その中でも今回は、開園以来夏の恒例イベントとなっているサマースクール(小中学生一日飼育係体験)についてお話をします。

 サマースクールはZOOMOが開園した平成元年から実施されている体験学習プログラムで、今年で33回目を迎える大人気企画です。単純計算でこれまでにのべ6000人以上が参加したことになりますので、今お子さんを連れて来園して下さっている方々の中にも、子どもの頃に参加したことがあるという方もいらっしゃるのではないかと思います。

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 参加者はお世話をしてみたい動物種を自分で選び、数名ずつ飼育係について動物たちのお部屋の掃除やごはんの準備などを体験します。また、飼育作業の合間には動物のことを勉強したり、野生動物や環境と人との関わりについて学ぶ、学習の時間も設けています。

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 昨年度からは、より内容を充実させるべく、全国各地の動物園で教育プログラムの開発や実践的研究を行っている近畿大学の松本朱実先生にご協力いただいて、プログラムの開発と評価を行っています。

 昨年は「ツキノワグマってどんなクマ?~クマと人とのより良い関係を考える~」をテーマに、野生のニホンツキノワグマの暮らしから体のつくりや行動を想像した後に、獣舎に移動して実際のツキノワグマを観察、農作物被害や人身事故などの課題や人との関わりについても知ってもらい、自分たちにできることを考えてもらうというプログラムを行いました。

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 岩手県内には推定3400頭のニホンツキノワグマが生息していると言われていますが、人里に下りてきて農作物を食べてしまったり、山菜採りやキノコ採りに山に入った方が遭遇して怪我をしてしまったりというような悲しい事故が毎年起きており、年間に200~300頭が捕殺されています。

 多種多様な植物をたくさん食べ、広い行動圏を必要とするツキノワグマがたくさん棲んでいるということは、その森が豊かである証でもあります。そして、食べた植物の種子が遠くに運ばれることで森を育て、多くの動植物と支え合って生きています。
 豊かな自然が残り、多くの野生動植物が身近に生息する北東北で暮らす子どもたちだからこそ、野生動物と人とのより良い関係について考え、行動に移せる人になってもらいたいと思い企画をしました。

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 子どもたちの主体的な学びを支援することを意識した問いかけをするよう心がけることで、子どもたちが自ら気づき、考え、子どもたち同士の会話の中からイメージが膨らんだり、議論が進んだり、飼育作業の中で見たものや普段の暮らしの中で見たもの聞いたことと関連付けて物事を考えていく姿が見られ、子どもたちにとっても価値のある体験になったと感じています。

 今年のサマースクールは7月下旬と8月上旬に計4日間実施しました。
 昨年の反省点を踏まえて、子どもたちの体力や安全面を考慮して実施時間を短縮するなどの変更をしつつ、飼育体験ができる動物種を昨年よりも増やしました。
 今年は職員3名がプログラム開発の担当をして、「飼育係の取り組みを通じて動物たちの本来の暮しを知ろう」をテーマに、動物の体のつくりの観察や各動物種の飼育環境、飼育作業を通じて野生での本来の暮しや生息環境について考え、最後に人の暮らしとの関わりや抱えている問題について子どもたちと共有をして、自分たちに出来ることを考えてもらうというプログラムになっています。

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 プログラムの開発だけでなく評価も共同研究として行っているため、これまでは企画者の主観で終わっていた事後評価が、より次につながる形で整理することができています。これらの研究結果は、動物園水族館教育や環境教育に関係する研究会や学会で発表をしていますので、興味のある方はぜひご覧ください。

 これからもZOOMOを通じて一人でも多くの方に自然の大切さや命の尊さを伝え、持続可能な地域や社会、生物多様性保全と環境保全に寄与する取り組みを続けていきたいと考えています。

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 余談ですが、現在イオンモール盛岡南2階で行っているパネル展示のテーマが、9月から「ZOOMOと地域の環境保全」に変わります。地域の野生動物の現状や、ZOOMOの取り組みについての紹介と、日本在来種の写真を展示します。イオンモール盛岡南にお越しの際にはパネルブースの立ち寄っていただき、ご覧いただけたら嬉しいです。

企画営業広報担当 荒井