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姫とリオの出会い

 盛岡市動物公園ZOOMOで飼育している2頭のメスのニホンツキノワグマの、来園から同居開始までの様子を紹介します。

 まずは“姫”(ひめ)、2015年生まれです。岩手県の県北出身で、縁があって当園に来園しました。個人のお宅で飼育されていたので、とてもかわいがられて育ててもらったことが行動からもうかがわれます。
 例えば、寝室で食べ物を柵越しにもらう時にこちらが「あ~ん」と言うと、“姫”は口をあんぐりと開けて食べ物をねだります。だた、ちょっとだけお姫様育ちな面があり、呼んでもすんなりと反応してくれない時があります。あくまでも“姫”のペースがあるようです。
 “姫”の特徴として、ツキノワグマのトレードマークでもある胸の月の輪模様がコウモリ模様である、という所です。そして、鼻筋が通った顔とスリムな体型です。放飼場ではとても活発で、走り回ったり、時には斜面を転がったりと大忙しな時もあります。そして、プールに入るのも大好きで、11月の寒空にもプールに入っています。

ブログ(クマ)①

 “姫”はとにかくプール大好き。胸のツキノワグマがコウモリ模様です。

 そして次は“リオ”。2016年1月26日生まれなので、“姫”の一つ下です。お隣の秋田県北秋田市にある「くまくま園」出身で、こちらも縁があって当園に来園しました。「くまくま園」では、たくさんの仲間たちと共に暮らしていたので、クマ同士の接し方も上手ですし、人がとっても大好きです。というよりも、とにかく人が大好きで、運動場にいても飼育係の匂いを嗅ぎかけてすぐに近寄ってきます。寝室で食べ物を食べる時も。キーパー通路が見える所まで食べ物を持ってきて、こちらの様子を見ながら食べます。
 “リオ”の特徴として、胸の月の輪模様はネックレス模様になっています。顔は“姫”と違って丸顔で、ずんぐり体型。ただ、体型のわりに運動神経は“姫”を上回り、櫓の上で立ち上がったり、走るのも早いです。

ブログ(クマ)②

 “リオ”は立ち上がるのが得意です。胸の月の輪はネックレス模様です。

 ここからは、2頭の来園時からの様子について紹介します。
 “姫”は2019年3月7日、“姫”が4歳の時に来園。“リオ”は2019年6月12日、“リオ”が3歳の時に来園しました。
 “姫”が来園後の初めての放飼練習の時に、放飼場の木を保護するために設置していた電気柵に当たってしまい大慌て、ちょっとしたパニックになってあちこち走り回ってしまいした。生まれて初めて広い放飼場に出て運動したので走るのが苦手、そのうえ走ったはいいけど斜面の岩を上手くよけられずにぶつかってしまったり、モート(堀になっている所)に降りたのはいいけれど、1メートルの塀を上がれない。など、“姫”にとって放飼場があまり良くない印象になってしまいました。

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 初放飼でちょっと疲れた“姫”の様子。

 “姫”はその後、放飼扉を開けても外に出ない日が続きました。そこで、大好きなサツマイモを放飼扉から放飼場まで道になるように転々と置き、ちょっとずつでも外に慣れてもらう練習をして約一月後、ようやく放飼場に出るようになってくれました。

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 “姫”が外に慣れてもらうための練習の様子。

 一方“リオ”は、もともと「くまくま園」で寝室と放飼場の移動や、走ったり木に登ったりなど、たくさん運動してきていたので、初放飼のその日のうちに放飼場に馴染んでいました。プールで泳いだり、モートに降りても難なく塀をよじ登ったり、櫓のてっぺんまで登ってみたりと広い放飼場を堪能していました。

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 “リオ”初放飼の様子、完全になじんでいます。

 そして、いよいよ初めて2頭の同居です。寝室は別れているので放飼場で初対面となります。放飼場で初対面するのは、何か闘争があっても広いのでお互いの逃げ場あるからです。1頭だけで育てられた“姫”と、たくさんのクマたちと共に育てられた“リオ”。それぞれ育ちの違いもありますし、どんな動物でも初めての同居は少し心配してしまいます。
 さて初放飼ですが、“姫”も“リオ”もお互いに匂いを嗅ぎ合い、立ち上がりながら威嚇し合うなど、大体が想定していた範囲内の反応で、結果として2頭はすんなりと仲良くなってくれました。ただ、お互いに慣れた頃から“リオ”がマイペースに過ごしている所に“姫”がちょっかいを出しに行く、といった関係が出来上がったようです。“姫”は初めての仲間が出来てうれしかったのでしょう。

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 “姫”と“リオ”の初同居、臭い嗅ぎあいからの立ち上がっての威嚇。この時は“リオ”優勢。

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 “リオ”が寝そべっている所にちょっかいを出す“姫”。

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 プールの中でのじゃれ合い。この頃には既に仲良しです。

 ”姫”と”リオ”のエピソードはまだまだ続きます。次回もお楽しみに。

ニホンツキノワグマ担当 村山