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かつて私がひとつぶの粒子だった頃(詩)

 かつて私がひとつぶの粒子だった頃
 混じり合う無限の中で
 そこには過去も未来も性もなく
 ただ漂い 言葉のない歌を聴き
 あるべきままにして
 光の円を描いていた

 押し寄せるような声がして
 音が意味を持ったとき
 うしろに過去が生まれ
 人の形をもった
 
 あの場所がどこにあったのか
 今はもう思い出せない
 
 春の夜のまどろみや
 雨に濡れる若草の中で
 時折温かな匂いだけが蘇る

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