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羽生善治九段愛用、竹風師のお店(大竹碁盤店)に行ってきました。

どうもぞにきです。

昨年のお盆、新潟の三条にある大竹碁盤店に行ってきた話をしたいと思います。

私は、最近『教養としての将棋』という本を読んだことをきっかけに駒の魅力を知るとともに、駒に興味を持った人間でして、そんな矢先に将棋仲間のAさん(仮)から今回のお誘いをいただき、大変ありがたかったと思っております。

ちなみに自前の駒に関しましては、ついこの間、薩摩黄楊(さつまつげ)で掘駒の一字駒を買ったばかりではありましたが、あの羽生善治九段も愛用している駒の作者である竹風師(大竹日出男さん)のお店ということなので、買わないにしても見てみたいと思い、話に乗っからせていただきました。

お店に行く道中、Aさんと話していて、

「果たしてお盆に店やっているのか」

という話題になり、二人とも事前に問い合わせもしなかったんですよね。

それで、着いたら特に明かりが付いている様子はなかったのです。

ただ、鍵は閉まっていなかったので、開けてみたら、

・木村義雄
・大山康晴
・羽生善治
・森内俊之
・佐藤康光
・藤井聡太
※敬称略

扇子や色紙等が沢山でした(写真を撮るタイミングなかったと許可をいただくのが恐縮だったので撮ってません)。

そして、

「すみませーん」

と言ったところ、

「はーい」

との女性のお声。

後に竹風師の奥様と分かりました。

そして、ちょっと待っててくださいと言われて、直ぐに出てこられたのが竹風師。

大竹日出男さんだったのです。

そして最初に説明されたのが、このお店には展示品はございませんとのことでした。

あくまでオーダーメイドで専門なので、製造過程の物はお見せできるけれども、作り終えた物は置いていませんと。

私達としては、製造過程のものもみたいということで、持ってきていただいたのが、

・字を掘った駒(紙に木が挟まれている状態)
・掘り駒に漆を塗った状態の駒(乾燥させて磨けば完成)
・掘り埋め駒に漆を埋め込んだ状態の駒(乾燥させて磨けば完成)

この3つでした。

そして、次には

・四角に切る前の御蔵島黄楊(切るための線が入っている)
・四角に切られた御蔵島黄楊

この2つも出していただきました。

また、
・御蔵島に行って森中に入っている写真

こちらも見せていただきました。

お話いただいた工程をまとめますと次の様になります。

・1月~3月に御蔵島(東京都の島)の森に木を見に行く

・樹齢100年以上の黄楊を探して森を巡る

・天然物に良いものが多いが、植林のものでも良いものもあり、良さそうなものを現地の方にお願いして切ってもらうように言う

・切ってもらった木は、根本に近い方から盛り上げ駒といった高級品とし、先の方へ行くに従い、掘埋め、掘り駒といったふうに選別し、一本の木から大体3組くらいの駒を作る。

・駒が作れるように四角の適切な厚さに予備(たしか5枚くらい)を含めて切る

・5年くらい乾燥させる

・盛り上げ駒を作る場合、5年間乾燥させた後に1月半程作成の時間がかかる

・字を彫る

・乾燥させる

・漆を埋める

・乾燥させる

・駒全体を削り、文字以外に着いた漆を削り落とす

・そして最後が盛り上げる為の作業で、筆を使って文字の上に漆を塗る

・そして乾かす

・また塗る

・また乾かす(最終的に5回くらい塗り重ねる)

⇒これでようやく完成

というところでした。

木を切って5年乾かして、そこからまた1月半とはかなりの長期間だと思いましたね。

これを聞いたらオーダーメイド限定な理由が分かった気がしました。

こういった工程以外にもいろんな話を伺いました。

後継者がいない問題が1つ話題になりましたね。

天童市もそうみたいですが、中々跡継ぎがいないとのこと。

大竹日出男さんは二代目で今、75歳くらいと仰っておられました。

自分の時は当たり前のように親父の跡を継ぐものだと思っていたということで、高校卒業と共に東京に3年間の駒師としての修行をされたとのことでしたが、今の子供達はそれぞれの道を歩ませているとのことでした。

ここからは私の分析ですが、今はサラリーマンをしながら駒を作ったり、脱サラして駒師になったりというパターンが多いのかなと思われます。

『教養としての将棋』の熊沢良尊師の章を読む限りそのような感じでした。

ただ、「竹風」というブランドが失われるのは寂しいものだと思います。

他には書体の話がすごかったですね。

書体の見本の書がありまして、ものすごい量の書体がありました。

錦織、巻菱湖といった基本的なものから、隷書体と呼ばれる特殊な物まで様々でした。

中には細いために盛り上げ駒にしか用いることの出来ない書体もありました。

天童市に行かれたAさんが、どこに行ってもなかったという書体も作ることが出来るというお話を聞き、感動しましたね。

ちなみに書体の一覧になかった一字駒は、捧隻夢(ささげせきむ)という書体で、竹風師の親友だった方が書かれた書体を使われているそうです。

残念ながら、その方は既に亡くなられているとのことでしたが。

ちなみに、ご存命の方の書体の場合、書体の使用許可が必要で、亡くなられている場合は不要というのが基本みたいです。

著作権みたいなところですね。

漆が欠けた場合の修理に関連してですが、竹風師が作られたものであれば無料で修理してくださるそうです。

ただ、椿油が塗られていると木が痛むため、修理できないとのことです。

メンテナンスで椿油を塗られる方がおられますが、高級感のある飴色には近づきますが、木は痛むということなので駒師はいつも売るときに乾拭きだけで結構ですと仰るそうです。

先日私が駒を購入した時もそうでした。

この点は皆さんに知っていただきたい知識ですよね。

最後に、非売品の駒について。

こちらの駒ですが、生涯でこんなに良い材木はみたことがないものだそうです。

理由については、ちょっとブログで書くのは躊躇します。

ご存じの方はご存知ですかね。


もやっとさせて申し訳ないです。

他にも色々お話を伺いましたが、とりあえずのお話はそんなところです。

ちなみにAさんさんは、駒をオーダーされておりました。

個人的に連絡をいただいて、拝見させていただきましたが、大変立派な駒で本当に美しいと思いました。

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