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従兄弟が行方不明になってたぶん死んでる話

見つからない従兄弟

これは今まであまり他の人に話したことがない話だが、従兄弟の存在を忘れないためにも書き残しておくことにした。

僕には1歳年上の従兄弟がいた。名前は純(仮名)。
小さい頃は同じアパートに住んでおり、毎日のように遊んでいた。とにかくやんちゃな従兄弟だった。足の上にブロックを落とされて骨にヒビが入ったこともある。それくらい元気な従兄弟だった。

小学生に入る1年くらい前、僕の父は家を購入した。
といっても前のアパートから徒歩15分くらいのところであり、生活圏は何も変わらなかった。
同じ頃、純の一家もすぐ近くに家を購入した。

父親同士が酒飲みで仲がよかったため、毎週末のように宴会が行われ、僕と純はファミコンやミニ四駆などで一緒に遊んでいた。

中学生になると純は案の定・・・

小学校を卒業後、僕と純は学区が別れていたため別の中学校に進学した。
中学生ともなると悪い友達ができるようで、純はあっという間にヤンキーになった。僕はただのギターオタクだった。

この頃になると昔のように遊ぶことは減っていた。もちろん仲が悪いわけではない。親戚同士で集まれば一緒に遊ぶが、普段から頻繁に会うことはなかった。

純は地元のヤンキーが集う工業高校に進学した。
ヤンキーの中でもそこそこ名が売れたヤンキーだったようだ。

高校2年生のある日

忘れもしない僕が高校2年生の冬、家に電話がかかってきた。
母親が対応したが、何やら深刻そうな顔をしていた。

「純がどこにいるか知らない?」

そう聞かれた。

車の免許を取得したばかりの純は、先輩の車で先輩と二人で出かけたまま3日ほど家に帰っていないらしい。その先輩も帰っていないとのことだった。

しかし純は激しくヤンキーである。
僕はどうせ仲間とどこかで遊んでるだけだろうと、あまり心配はしていなかった。

でも純は何日経っても帰ってこなかった。

気がつけば数ヶ月、そして

その後すぐに警察には届け出た。叔父が純の友人たちにもたくさん聞き込みをしたそうだが、まるで手がかりがなかった。

そんな状態のまま気がつけば3ヶ月以上が経っていた。
純と先輩の行方不明騒動にはヤクザに殺された、北朝鮮に拉致されたなど、様々な噂が囁かれていた。

そんな春のある日、突如進展があった。
ある釣り人が車のバンパーを釣り上げたのだ。
そのバンパーには先輩の車のナンバーがついていた。

車を海の底から引き上げるには重機などが必要で意外と準備に時間がかかるらしい。
数日経ってようやく車は引き上げられた。
中には誰もいなかった。

何があったのか

車の中には誰もいなかったが、純の免許証が入った財布があった。他には何もなかった。
やはり免許を取ったばかりの運転で調子に乗り海に落ちてしまったのだろうか。

もし車のエンジンがかかっていない状態で海に落ちていたとしたら、それは事件である。
しかし、車の損傷が激しく調べられなかったらしい。むしろ調べなかったらしい。警察は事故として片付けたかったようだ。

結局、純と先輩は今も消えたままだ。海の底で眠っているのかもしれない。
実はひっそり東南アジアあたりで生きていたら…なんてことも考えてしまうが、親族一同はもう死んだものとして扱っている。

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