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緊縛不知院死蒲魚振過激痛信女

とある教養バラエティ番組における一幕。
自分よりも少し年上と思われる女性アナウンサー、「私、缶切りの使い方がわからないんです」。
司会者の壮年男性俳優、「へぇ〜、若い世代は違うんだねェ~!」。

キナ臭さを感じた。私は、缶切りの使い方を知っていたからである。
「お恥ずかしい限りです」と照れ笑いする女性アナウンサー。彼女は落ち着いた雰囲気を醸し出していていかにも教養番組にふさわしい人選だと思うし、またお育ちのよさそうな見目だったのでもしかしたらこれまでに缶切りを使う機会や必要が一度もなかったのかもしれない。しかし、あえて聞きたい。どこか嬉しそうに肩をすくめて恐縮したジェスチャーをしているのは、「缶切りの使い方を知らない」ことを恥じているのではなく、「若い世代」と言われたことを喜んでいるのではないのでしょうか?と。
私は、「実年齢よりも若いと言われたことに対して、なんらかの喜び、手応え、老化に抗う努力が報われた達成感、手応えのなさや、拍子抜けするような気持ち、あるいは馬鹿にしているのか?という敵愾心や情けなさ、寂しさを抱いた瞬間から、人はジジイもしくはババアになる」という勝手な偏見に基づいて生活しており、私自身とっくの昔からババアをやらせてもらっている。そして私の勝手な価値観に勝手に照らし合わせてみると、上品にほほ笑む女性アナウンサーはこの瞬間、まさにババアになったのだと言ってよい。我々はババアの誕生に付き合わされたのだ。巻き込まれたとも言える。ジジイ・ババアの誕生に社会的意味はまったくなく、見ていて寒々しいだけである。心理的な寒さや苦痛を感じるだけで、もちろん物理的な冷却機能はもちろん搭載されていない。しかも、ババアの誕生に付き合っている間にも、我々は刻一刻と、しかし確実に老いているのである。何が悲しくて、金を払ってまで一人のババアの爆誕に付き合わされなくてはいけないのだろうか。払ってないが。

成人したにもかかわらず酒類の購入時に店員に年齢確認されるたびにそのことを自慢げに話していた知人は、いつの間にか年確自慢をしなくなった。それは年齢確認をされなくなったからなのか、そもそも疎遠になったからなのか、何か別の理由があるのか、私には知る由もない。
私も、自身の老化、店員さんの熟練とモチベーションの低下、タッチパネルの導入など技術の発達などにともない、酒類購入の際、年齢確認をされるということはなくなった。そうした機会があるとすれば、近所のコンビニエンスストアで深夜にのみ勤務している、偏執狂的に「真面目」な店員さんのだ。明らかに成人しているであろう客であってもなんかチョロそうな奴には、全員行っている儀式に違いない。仲良くする気は毛頭ないが(あ!どうでもいいんですけど、そいつそんな歳でもないはずなのにハゲかけてるんですよ!笑)、少しは客の顔を覚えてはいかがでしょうか。毎度身分証明書の提出を求められ、舐め回すような目つきでいちいち生年月日を確認されることは、なんだか屈辱的で腹が立つ。私は、店員さんに認知されることを嬉しいとはあまり思わない側の人間のため、お互い毎回初めて来店した客の会計だというテイで全然いいと思っていたけれど、そうでもないのかもしれない。ムカつく。煩わしいし。どうせ「なんで深夜にコンビニに酒買いに来てるんですか?アル中かよ」「ドラッグストアとかのが安いから。わかれよそのくらい 情弱乙」「ふーん、そんな所に住んでいるんだ。」「500mlのチューハイばっかり飲みやがって、いい歳こいて。社会のゴミめ。」などと思っていることでしょう。うるせえ!*全部被害妄想です。

わかりきっているのに知らないふりをすることで初心な己を演出することを、かまととぶっていると言います。

私もお恥ずかしいことに、当時は今よりも精神的に幼く、至極恥ずかしがり屋でしたので御多分に洩れず、思う存分にかまととぶらせていただきました。
それは、小学校のいわゆる保健体育性教育のテストにおいてです。ぶっこきました。その頃は「性教育に関心があり、正確な知識を十分に知りすぎていることは恥ずかしい」「エロだ」「変態やん」という恥じらいがありました。それゆえ、あろうことかテストの解答を、わざと間違えたのです。第二次性徴期には、「性器」のまわりに毛が生える と答えるべきところを「おしり」のまわりに毛が生える、と答えました。
そんなことしてると生理の仕組みを正しく認識していない成人女性となりますよ。例えば、生理が来るたびに「今後一生オムツ生活かぁ〜」と嘆き、生理が終わるたびに「閉経した」と言い出しかねません。かまととぶることそのものの痛々しさもありますが、のちの弊害が生まれるんですよ!正しい性知識を身につけておくに越したことはないと思います。それにテストだったらいい点をとっておくにこしたことはありません。私の未熟さ、至らなさゆえに起こった、本来あってはならない事件だと認識しております。今は恥も外聞もない大人になったのでどう思われようがかまいません。ママの[女性期の名称]からやりなおして来た方がいいと思う。

「無知と無垢とをはき違えたイタイやつ」が許されるのは二十歳までです。
いい歳こいて物事を知らなさすぎるのはどうかと思いますよ。

「緊縛」の話題になった時、知人が「えっ、えっ? キンバクって何?」と、突然狼狽始めました。「あの、緊急の緊に、縛る、って書くキンバク?私知らないんですキンバク…。」よく知ってんじゃん。私だったらせめて「金爆」と間違えるね。緊縛エアプ下手くそか?知らないならもっと上手に知らないようにすればいいのに…。知らなくても生きていけるんだし、知らない方が人生幸せなのかもしれない。

性教育の授業で、男性の身体にある精子と、女性の身体にある卵子が、なぜ結合するのか?という質問を投げた奴がいました。先生は、たじたじしていたように思います。私は、「そんなんエッチやん!何言うとんねん!」と、そいつを内心小馬鹿にしておりました。ですが、その当時私は、エッチ、とは裸の男女がハグすること、だと認識し、イキリたおしておりました。本物のセックスについての知見を得るのは数年後のもよう。
そいつが、もし「かまととぶって」おり、セックスとは何かを全て知り抜いた上で、知らないふりをして質問しているのだったら怖いな。

*この記事に出てくる人物、団体、戒名は全て架空のものであり、実在する公共放送、コンビニエンスストア、「きんばくしらないんです かまととぶりすぎげきいたしんにょ」などとは一切関係がございません。


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