高揚
世界も個人的にもこれまでとは違う景色に囲まれた今年。
日本には四季があり、わたしが暮らすこの街では、今年も変わることなく木々が紅く染まり始めたようだ。
最近は限られた空間の中で過ごすことが多いので、今年の紅葉を楽しむことができるかどうか怪しいところだが。
春の淡く儚げな桜も好きだが、冬の訪れを前に最期の力を振り絞ったかの如く燃える紅葉も好き。
それはまるで炎。その心のうちは知る由もない。でも、”わたしを見て”—そんな風に語りかけられているような感覚に陥る。ハッとするような紅。足下を優しく照らしてくれているような橙。燃え上がる瞬間を虎視眈々と狙っているような緑。
普段は咲き誇る花の影に隠れている彼等がここぞとばかりに自己主張をしている。健気にも見えるし、力強くも見える。その姿が哀れで美しくて見惚れてしまう。
"わたしを見て"
少し前にそんな衝動に駆られた。
"わたしは見てるから"
少し前にそれを言葉に出してみた。
それは心の奥で高揚し紅く色づき始めた。
それはきみだけに見える紅。時々、黒が混ざる紅。
その眼に醜くも美しく映っていて欲しい紅。
去年見た紅葉の画像を見返しながらそんなことを考える秋の夜長。
夜はこれから。
良い夜を。