2022年5月8日 天皇杯奈良県代表決定戦 奈良クラブ 2-0 天理大学 感想

大学生チーム相手に負けたら終わりのノックアウトステージのなか、内容はどうあれ難しいゲームをとにかく勝ったことは素晴らしい結果だ。これで、5/22㈰にロートフィールド奈良にてHondaFCとの対戦が決まった。3/19のJFL第2節では勝ちきれなかった相手にロートフィールド奈良で再戦できるチャンスを獲たのは嬉しい限りだ。JFLでこれから躍進するためにもHondaFCから逃した勝ち星をここできっちりと掴み取って欲しい。そして、6/1㈬ユアスタでJ2ベガルタ仙台が相手とはいえ、臆することなく全力で戦って8年前の奇跡のジャイアントキリングを再び起こしてもらいたい。そして、その先のC大阪戦まで駒を進めて欲しい。それが天皇杯の最大の魅力でありそれを想像できることが天皇杯の最高の楽しみ方だろう。

それではこの試合についてだが、先述したように正直称賛できるような内容ではなかったかと思う。それはなぜかということをここでは考えてみる。まずは相手の天理大学の基本フォーメーションは4-2-3-1で守備時のシステムは4-4-2。攻撃時のシステムは90分間のそのほとんどを守備に割かされていたこともあって見ていて分からなかったが、おそらく見た感じだと基本フォーメーションと同様で4-2-3-1ではなかったかと思う。守備時は前線の2人が奈良クラブの最終ラインである2CBへプレッシングをかけてはいたが、JFLの各クラブのインテンシティの高いプレッシングと比較すれば、決して強いものではなかったかと見ていて感じた。そのため、奈良クラブの2CBとCHと右IHが降りて4人でビルドアップしていくと、この試合では自陣から容易に相手陣内まで前進することができていた。

天理大学としては前線で上手くプレッシングがかけられなかったことで、前線と中盤で連動してボールを奪いにいくというようなことができなくなってしまったので、最終ラインは下がらざるを得なくなり、4-4-2の4-4の2ラインを固めてブロックを作ってゴール前を守ることに90分間専念させられることになってしまった。それでも開始早々は学生らしいアグレッシブで激しい前線からのプレッシングを見せてくれていただけに、これには少々残念に思った。とはいえ、しっかりと組織された守備ラインは、1人少なくなったとしても大きく崩れることがなかったことはとても素晴らしかった。これだと天理大学はこれからも安定して戦えることだろう。付き加えるとすれば、天理大学のCFの27番の攻撃時の思い切りの良さはこれからも十分に期待できるのではないだろうか。

一般論として、守備側がゴール前でブロックを作ってきた相手に対して、攻撃側が取り得る戦術としてよく言われているのが、ピッチに対してワイドへ展開してサイドや逆サイドを繰り返して起点を作ることで、守備側がサイドへ引っ張られていくうちに、そのフォローやマークに誰がつくのかといったような混乱が守備側に生じ、少しづつそのブロックにスペースが生まれる。そして、そこへIHなどがライン間へ強引に突破していくことで守備側のギャップを作り出しやすい状況となり、CFへのスルーパスや自身のシュートチャンスを増やしていくというのがある。この場合は個人能力に差があればあるほど有効だと言われている。JFLではHondaFCが相手陣内で押し込んだ展開時にこのような戦術でゴールを奪っているのをよく見る。

果たして、奈良クラブはこういった戦術をこの試合で見せてくれたかと言われて、おそらくできていたと即答できる人はいないであろう。確かにゴールを奪った2得点はサイドから展開した見事なゴールだった。そして、森田選手や片山選手もよいショートを放った。いつものスタメン構成ではなかった。しかし、私がこの試合を見る限りにおいては、奈良クラブと天理大学との選手の個人能力の差が歴然にあったように感じたので、先述したような展開をもっと数多く見せてほしいと期待して見ていたが、私の期待を上回るようなことは正直見当たらなかった。

その要因として一つ挙げられるのは、JFLではこれまで押し込む遅攻とよばれるような展開をほとんどみせることがなかったからだろう。ゴールを奪う確率が高いのは速攻というのは今やリバプールを始めとして世界の最先端では当たり前の事例だ。そのため、奈良クラブが速攻をまずは思考の一番先にくることは理解できる。だからといって遅攻をおろそかにして良いという理由は何一つない。このままでは相手のJFLのクラブがこの試合を分析すると、奈良クラブから先制点を奪いさえすれば、終了間際はゴール前を固めてブロックを作って簡単に勝点+3を獲得できると思われるのではと今から不安を覚える。前節の新宿戦では終了間際にCBの伊勢選手がゴール前まで上がってのパワプレーでからくも同点に追いつくことはできたが、最初からパワプレー頼みでは勝負にならないのは明白だ。押し込んだ状態からゴールを奪うバリエーションを今からでも速やかに増やして貰いたい。このように、この試合では幾つかの問題点が垣間見れた。なのでこの試合の内容を称賛することができないのである。

最後に、この試合を地上波放送ではないにしても奈良県内で普及率が非常に高いKCNさんで、毎年恒例とはいえ今年もライブ放送して頂けたことを本当に感謝したい。今期の奈良クラブのJFLの試合では地上波放送はもちろんTVでの放送はない。JFL公式のYou Tubeチャンネルだけだ。奈良クラブの試合を選手のアップやプレーのリプレイを交えたブレのないきれいな画角で楽しめたのはとてもありがたかった。しかも、この試合では実況者と解説者付きと本当に贅沢そのものだった。欲を言えばオンデマンド放送があれば言うことなしなのだが…

NHK奈良放送さんや奈良テレビ放送さんは普段奈良クラブの普及活動にご協力して頂けていることは承知している。奈良クラブが来期Jリーグへ昇格すればおそらく奈良クラブのライブやオンデマンドはDAZNで放送されることになるだろう。しかし、奈良県内における奈良クラブの認知度アップにはこの3社の協力なくしては成り立たたない。それは、DAZNは有料のコンテンツであり奈良クラブを全く知らない無関心層に対してのPRにははほとんど向かないコンテンツだからだ。そのためJリーグへ昇格した後も、この3社からのこれまで以上のバックアップが必要不可欠なのは言うまでもない。今期JFL優勝とJリーグ昇格を本気で目標として掲げる奈良クラブを、私からもここで3社へお願いして今回の感想は終了する。

追記:高知ユナイテッドSCの公式You Tubeチャンネルでは天皇杯 高知県代表決定戦 高知ユナイテッドSC vs KUFC南国戦 をハイライトとはいえ動画が上がっていた。奈良クラブの公式でもハイライト動画を以前からここで要望しているのだがまだ実現されていないのが残念だ。

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