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「そこのみにて光輝く」めっちゃキツい

こんにちは、今日は観た映画のお話です。

呉美保監督、綾野剛主演の『そこのみにて光輝く』です。

一言でいうと、「キツい」。

何がキツいって、綾野剛扮する主人公・達夫が出会った家族を取り巻く環境のどうしようもなさ。

以下あらすじです。

達夫は、鉱山を仕事場としており、事故で同僚を亡くしたことをきっかけに休職中。

毎日パチンコ屋で時間を潰しながら、トラウマに苦しむ日々。

その中で、菅田将暉演じる拓児と出会う。

拓児は達夫からライターを借りた礼としてご馳走するため、達夫を自宅に連れて行く。

そこで達夫は拓児の姉である千夏(池脇千鶴)と出会い、惹かれて行くが、

拓児の一家は、脳梗塞で倒れ寝たきりの父、父の介護につきっきりの母、事件を起こし仮釈放中の拓児、そして工場勤めと体を売ることで一家の生活費を稼ぐ千夏の4人。

住まいは海の側のバラック小屋。

そして千夏はお金のために不倫相手中島との関係を断ち切ることができない日々。

精神的にも物理的にもギリギリの生活を送っていた。

達夫は、愛する千夏を救いたい一心で千夏に近づくが現実はそう上手くいかず、お互い傷つけあいながらともに生きていく道を探す。


的な内容です。

以下ネタバレを含みます。

いちばんキツいシーンは、父の介護。

自宅で介護する、と一言で言ってしまえば「大変だな」という感想につきますが、

この介護のシーンでいちばんキツいのは、寝たきりの父の性欲処理。

拓児の母が父の性欲処理を担っていましたが、母の体力も限界に近づき、母の代わりに千夏が行うことも増えていきます。

特に、娘に性欲処理をさせてしまう父、そしてある日偶然その様子を達夫に見られてしまう千夏、この両者の心情がありありと描かれていて、目を背けたいのに正面から見たくなる、見なければ、という気持ちになりました。

そして自分たちの力だけではこの状況を打破できない千夏の苦しみ。

彼女たちには知恵や財力を与えてくれる人もいない。

本当に残酷ですね。

私の目には見えないけれど、きっとこういう話ってあるんだと思う。

調べてみると男性女性ともに、脳梗塞や認知症を患ったことがきっかけで異常性欲という症状を引き起こすことがあるそう。

無知でした。

私は、ありがたいことに近しい家族は皆健在で、はっきり言って家族を介護することの大変さを想像しても、やっぱり想像することしかできません。

だからこそ知ろうとすること、そして自分たちを守る方法を考えなければ、と思いました。

そしてそして、この映画見て池脇千鶴の良さ再確認しました。

千夏がハマりすぎでした、天才。


とここまで一番印象的だった点について話しましたが、

他にも私が「この映画好きだな」と感じたのは北海道という舞台。

この映画には、原作があります。

佐藤泰志氏著『そこのみにて光輝く』です。

これと、同じ著者の作品を原作とする映画『海炭市叙景』(2010年)、『オーバーフェンス』(2016年)を合わせて函館3部作、『きみの鳥はうたえる』(2018年)をそれらに続く最終章として、

函館を舞台とした物語が実写化されています。

この中で海炭市叙景はまだ観ていませんが、どれも閉ざされた社会に生きる若者たちの苦悩や心情の機微が見事に描かれています。

演者の方々も作り手の方々も素晴らしい。

他にも北海道を舞台とした映画というと、

『日本で一番悪い奴ら』(2016年)、『私の男』(2014年)も好きです。

どれも共通して、主人公たちが生きる閉ざされた世界と、寒々とした背景がめちゃくちゃマッチしています。

高校生の頃に日本映画の魅力にハマり、それ以来映画は見続けていますが、私が好きなものって共通してこういう、主人公たちが閉ざされた救いのない世界で生きている系の映画です。

そういう映画では人間の心の機微がリアルにくっきりと描き出されている気がします。

そうじゃないのももちろん好きですが。

そんなこんなでこれからも「キツい」映画見続けます。

それではまた。

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