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読書完走#500『明治の建築家 伊東忠太 オスマン帝国をゆく』ジラルデッリ青木美由紀 2015

折返し地点・節目の500冊目は、この連載を始めるきっかけとなった一冊。まずは紹介文から。

「女性美術史家によるきめ細かい調査に裏づけられた建築家の物語。著者が在住するイスタンブールを歩き回りトルコと日本を行き来して取材した迫力のドキュメント。忠太と親しみを込めて語りかける文体は読む者を旅へと誘い、少し変わった天才建築家の人柄がよく伝わります。」

6年前、著者の紀伊國屋じんぶん大賞応募にあたり私が書いた推薦文だ。これが功を奏して⁉︎見事6位入賞。書評を書いて読んでもらう喜びに味をしめ、読書完走を始めたのだった。

何を隠そう、時効だから明かすと当時、本書を読了していない。あらためて読み返し今度こそ通読したが、思った以上に面白かった。

「法隆寺建築の源流はギリシャだ!」という自説を証明するために国費で渡航したはずが、途中で関心が薄れたのか肝心のエンタシス(柱の膨らみ)にはついぞ言及しなかった忠太。“日本建築には壮麗さがない”と言われ憤っていたのに、いつの間にか自身がそのオリエンタリズムに無意識に染まっていた忠太。妖怪のような容貌(自画像が)なのに、なんとお茶目で人間くさいことよ。

あらためて、面白いですこの本。みなさんぜひ読んでみてください。