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読書完走#329『主権者のいない国』白井聡 2021

「安倍政権を永らく支えてきたのは、完成した奴隷根性と泥沼のような無関心である。」

舌鋒鋭く政権批判を続けてきた白井聡氏の言葉の矛先が、われわれ主権者に向けられる。

かくも有害無能な腐敗政権の存続を、我々はなぜ8年近くも許してしまったのか。これに対する明確な解答を見出さない限り、安倍政権が終わっても安倍的な政治は終わらないし、我々はまた同じ過ちを繰り返すだろう。

ヒントとなるキーワードのひとつが「否認」だ。都合の悪い現実を無かったことにする否認の徹底ゆえに、安倍は評価され重宝された。「戦後レジームからの脱却」というスローガンとは裏腹に、自身の存立基盤であるそれを彼は死守した。「戦後の国体」を終わらせないための政官財学一体となった「死に物狂いの現状維持」を象徴するアイコンに安倍晋三はぴったり嵌った。本人の意思や能力に関わりなく、その血筋だけの理由で。

とは言え、欺瞞と矛盾に満ちた目も当てられない現実から、目を逸らすわけにはいかない。

主権者たること。それは、人が自己の運命を自らの掌中に握ろうとする決意と努力のなかにしかない。白井氏の言葉を借りれば、われわれは、われわれの時代精神を批判するところから始めなければならない。