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城山文庫の書棚から085『マルクス・ガブリエル 日本社会への問い』丸山俊一 NHK出版新書 2023

欲望の時代を哲学する、マルクス・ガブリエルシリーズ第三弾。昨年5月に来日した哲学界の“ロックスター”がインタビュー形式で語るわかりやすい入門書。首都高を走る車内でタルコフスキーの映画『惑星ソラリス』を想起して興奮する彼にとって、東京は刺激的な街のようだ。

世界の現状をガブリエルはネステッド・クライシス=「入れ子構造の危機」と表現する。相互に絡み合い影響し合う輪の中で、もはや一つの危機が他の危機の一部となって組み込まれているような状態だ。すべての出来事の背景には気候危機がある。

アジア=共同体主義で西洋=個人主義というステレオタイプは、コロナ禍への対応を見ると逆なのかもしれない。日本は個人主義的な解決策を取り、最も社会主義的だったのがアメリカだったとの指摘は興味深い。

6月に早川書房から日本限定発売された新刊のテーマは「倫理資本主義」。彼が日本的なスタイルだと指摘する「カット」=切断・遮断がキーワードだ。行き過ぎた資本主義を否定するのでなく、人間の良心を信じて乗り越える方策を探る野心作となるだろう。