見出し画像

読書完走#431『インド残酷物語』池亀彩 2021

のっけから衝撃的な展開(詳しくは本書で)。このまま残酷な物語が続くのかと思ったら、過酷なインド社会でたくましく生きる人々に徐々にフォーカスしていって引き込まれ一気に読了。映画の都ボリウッドとも、IT大国のイメージともまったく異なる未知のインドの姿が本書には描かれている。

何事にも“袖の下"が威力を発揮するインドだが、金以上にモノを言うのが人脈。「カネよりコネ」の世界だ。著者の現地でのドライバーであり調査の相棒でもある男性は、カーストに由来する理不尽な境遇を淡々と受け入れ実力と人柄で今の仕事と生活を勝ち取ったという。

日本人にとって馴染みの深い仏教の故郷でありながら、カレーと紅茶のほか身近な体験は少なく、むしろ異彩を放つ文化圏インドの一端に触れ、旅に出たくなる刺激を与えてくれる一冊だ。

著者は大学同期の池亀彩さん。彼女は学部と院で6年間建築を学んだ後インドへ渡り、カーストやグルの調査を重ね英国で社会人類学の博士号を取得、この秋から京都大学で教鞭を取る。今度じっくり現地の話を聞きたい。