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電話を掛けるのは初めてだった。プライベートが見えにくい人というのはいるもので、彼もその一人、家にいたとしても少々頼みづらい。 「よう、俺」 「だろうな。お前から掛かってきた」 声の向こうは静かだった。 「部屋の鍵失くしたんだわ、夕方まで入れてくれる?」 小さく息を吐く音が聞こえる。断られるかもしれない。幸い、紺堂翔吾は広く浅い付き合いの友人が多い。 「場所送るから切るぞ」 言い終わると同時に通話が切られ、すぐに通知の音が鳴った。 翔吾の電話から5分後に、部屋のインターフォン