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小説

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小説が繋ぐものを私なりに繋いでみました。初めに書いた「現在」を読んでみてもらえると嬉しいです。
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#高校生

味方

二宮朝陽には、五月に何かに急かされた経験がない。ふと、そんなことを思った。それは今年の五月であるまさに今も例外ではなかった。 連休が過ぎた五月は、面倒でちょっとおもしろい。 高校三年生の放課後だった。日没が随分と遅くなり、授業の後の時間が長く感じるようになる季節だ。教室を出ると図書室に寄って、昨日の授業で触れたキルケゴールの本を適当にめくり、17時を過ぎたところで本を戻して帰宅することにした。 二階の渡り廊下を歩いていると、向こうから一クラス分のノートを抱えた教師が歩いてき