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【ERローテ前必読!】初期研修医が知っておくべき救急科の基礎知識とオススメ本

■はじめに

 みなさま, はじめまして. 救急医の坂本です. 現在は千葉県の総合病院国保旭中央病院で主にERを担当しています.

 自施設以外にも, レクチャーや症例検討などを通じて多くの研修医の先生達と関わる機会がありますが, その中で生じる日頃の質問や悩みは共通していることが多く, 救急診療においても同様です.

 救急患者を対応する機会が少ない, 手技の経験が乏しい, 数は診ているもののフィードバックがなく自信が持てないなどでしょう. 初めにお伝えしておきたいことは, 症例を多く経験することは必要ですが, 数自体にこだわる必要はありません. そして他人と比較する必要もありません. 目の前の患者さんをその時点で可能な限り適切にマネジメントし, 1例1例大切にしてください.

■事前に押さえておくとローテーション・コンサルトが楽になる, 救急科の常識

①頻度の高い症候に対するアプローチ

 救急外来では数多くの訴えに対してマネジメントする必要があります. 頭痛, 胸痛, 腹痛, 意識障害, 意識消失, めまい, 脱力などなど, 多くの主訴が存在しますが, それぞれアプローチ方法を理解しているでしょうか.

 研修医の先生方が苦手な症候は大凡決まっています. めまい, 腹痛, 脱力, 外傷などではないですか?意識障害や失神なども苦手は人は多いかもしれません. 実際の症例を経験しながら, 身につけていかなければならないことは多々ありますが, まずは事前に症候毎の鑑別疾患や大凡の診療の流れを頭に入れておくことをお勧めします.

②コンサルテーションの仕方

 救急外来では, 初療医のみで解決できないことが少なくありません. 吐血患者に対する緊急内視鏡, STEMI患者に対するカテーテル, 急性腹症に対する緊急手術など挙げ出したらきりがありません.

 また, 原因がわからないときには, なんとか自分でできるところまでと努力することも重要ですが, 自身のその時点での実力を謙虚に受け止め, 適切なタイミングで上級医へ相談, コンサルテーションすることが大切です. 私が信頼する研修医は, わからないことをきちんとわからないと自覚し, 相談できる人です. 知ったかぶりはいけません.

 コンサルテーションするためには, 症候に対する一般的なアプローチを理解しておくことはもちろん大切ですが, 相手が何を知りたいのかを理解し, いざというタイミングで行うことが重要です. また, 伝え方もポイントがあります. SBAR(※)が有名ですよね. 

※SBAR:Situation(患者の状態), Background(患者背景・臨床経過), Assessment(アセスメント), Recommendation(提言)

 胸痛患者がSTEMIであればその時点で循環器内科にcallで問題ありません. それでは, 股関節の痛みを訴える高齢女性が来院し, Xp画像の結果, 大腿骨近位部骨折であった場合にはどうでしょうか?その時点で整形外科にコンサルテーションしてOKでしょうか? この場合には必ず受傷機転を確認し, 「なぜ受傷したのか」を把握してからcallしましょう. 失神の結果, 骨折をしたのであれば, 失神自体の精査も必要になりますからね.

 細かなポイントは多々あるのですが, 初期研修医の時点では, 自身の実力を過信せず, 迷ったら相談すること, そして常になぜそのようなことが起こったのかを考えながら対応することが大切です. この2点を意識しておけば, コンサルテーションのタイミングや伝えるべき情報も自ずと決まってきます. そして, それを実践しながら, 上手なコンサルテーションの技を1つ1つ身につけていけばOKです. 初めから100点のプレゼンはできませんからね.

■救急科でしかあまり経験しないコレ, ナニ?

 救急外来には様々な患者さんが来院します. なかなか一般の外来では遭遇しないような患者さんにも沢山出会うことになるでしょう. アルコールの影響などで暴れている, 精神疾患患者の頻回受診や薬物過量内服, 外傷や虐待, 薬剤に伴う様々な症候や離脱などなど, これ程バラエティーにとんだ患者さん達に出会う場はなかなかありません.

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