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【総診ローテ前必読!】初期研修医が知っておくべき総合診療科の基礎知識とオススメ本

■はじめに

■自己紹介 〜“ねころんで読める総診”を目指して〜
 総合診療科に対してどんなイメージを持っていますか?大学病院のポリクリを思い出すと,「総合診療医ドクターGのように,難解な病気を見つけ出す科」だったり,「どこの専門科も引き取ってくれない入院患者さんを診る科」だったり,「僻地で働くために何でも診る科」だったり.イメージはさまざまかもしれません.

 私は卒後8年目で,東京都北区にある東京北医療センターの総合診療科でスタッフとして働いています.当院は340床中90床近くを総合診療科がメインプレイヤーとして入院を受け持ち,内科系の入院診療,外来診療,研修医教育を行っています.

 なんとなくふわっとした「総合診療科」のイメージを,ねころんで学べるように気楽に紹介したいと思います.

■総合診療ってなんだ?
 「総合診療専門医」は,19番目の基本領域として新しく作られた専門医で,領域別専門医が「深さ」が特徴であるのに対して総合診療医は「扱う問題の広さと多様性」が専門的な特徴とされています.

 「ふつうのお医者さんって何でも診られるんじゃないの?」という疑問があるかもしれません.本当は,そうあるべきなのです.ですが専門性が細分化されていくにつれて,すべての知識をアップデートしつづけることは,かなり大変でもあります.

 一方で「専門でないのでわかりません」と患者さんについ言ってしまう医療者側の言い分が,世の中から見た「お医者さん」像と違うこともありえます.19番目の専門医,総合診療医を知るにはぜひこの漫画をお読みください.

 また「幅広さ」には,職種を越えたチーム作りや病気にならないための予防医療など,病気への対応とは一味違ったものも含まれます.

 後述する総合診療で必要になるIllnessという視点も含めて「家庭医療理論」という学問も勉強しています(大学や多くの初期研修病院ではまだまだ学ぶ機会はなく,あまり馴染みはないかもしれません).

■どこで働いているの?
 総合診療科のフィールドは幅広いです.初期研修医の先生方が働く研修先は,下の図のように総診がメインのところかもしれないし,各専門科が強いところでの総診という立場かもしれませんが,置かれた環境下で,総合診療科はふるまいを臨機応変に変えます.

図1

 当院のような市中病院総合診療科は入院内科診療がメインで,感染症(肺炎,尿路感染症,蜂窩織炎など)や心不全,脳梗塞の加療,糖尿病教育入院,発熱や意識障害,食思不振,浮腫,胸水貯留の精査など,多岐にわたる病態の患者さんを担当します.

 フットワークを軽くして患者さんの診察に行き,胸腔穿刺や腰椎穿刺,骨髄穿刺,集中治療が必要な時はCVC挿入など,手技も多くアクティブに動いています.また,患者さんの退院調整のため,患者さんの家族や関係者と面談やカンファレンスを開くことも大事な役割です.

 一方で,外来診療,訪問診療を中心とした総合診療研修は,診療所や小規模病院などで行われています.慢性疾患の外来管理など,長く診ているからこそわかる患者さんのささいな変化や,生活している場と診察室で診る患者さんの様子の違いなど,入院ではみられない視点が多く学べます.

 幅広い働き方がありながら,根底には「患者を多角的に診る」「家族・生活背景まで診る」「地域全体を診る」というマインドがあることには変わりません.総合診療科研修は,初期研修医の皆さんが学生から社会人,医師になるために必要な,基本的な医師としてのマインドをたたき込むのにふさわしいと思っています.

 皆さんが将来の進路をどこに行くかに限らず,医師として持つべき基本的態度は「患者さんは病気を抱える人であり,決して病気のみを治療することはしてはならないこと」です,忘れないでください.

■どんな仕事をしてるの?
 患者さんの立場からすると,具合が悪くなったときに,自分の症状はまず誰に診てもらえばいいんだろう,どこを受診したらいいんだろう,とりあえず近くの内科に行ってみるか,というように迷うはずですよね.患者さんの主訴,言葉から医学的問題に落とし込んで,精査し,しかるべき治療が必要なら専門科にも依頼して治療方針を立てる.診断の道筋をしっかりつけること.これって,初期研修医になる皆さん全員にとって当然必要なスキルです.

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