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SCARPA 新作達をレビューしてみました

皆様こんにちは。ジップロッククライミングジム渡辺数馬です。
長きにわたってスポンサードしていただいているスカルパですが2024年はかなり沢山の新作をリリースしていて私も何足か提供していただきました。
手元にあるシューズを数えたらなんと9足!
選手活動をしているわけでも無いのに毎回充分すぎるサポートをしていただいているスカルパに感謝しております。
今日は提供していただいた4足の2024年新作
【ベローチェレース】
【ブースター】
【インスティンクトS】
【オリジンVS】

を1足ずつレビューさせてもらいます。
今後本気シューズ/メインシューズで履けるか?履けないか?や、個人的に改善すべき点かな?
っていうような内容も入れていくので有料記事とさせていただきます。


【ベローチェレース】
初心者/中級者向きシューズのスタンスとしてリリースされたのに上級者にも愛された超名作ベローチェのレースアップバージョン。
個人的には足裏感覚も良く値段も手頃なのでファーストシューズとしてお客さんにオススメする事も多い1足です。
ベルクロモデルとレースアップというクロージャーの変更以外には変更点は無いようにみられます。ホールドへの足裏感覚もほぼ同様に感じます。
「なにも違いないならベルクロベローチェで良いか」と思われるかもしれませんが、このクロージャーの違いだけでここまで別のシューズに出来るのかとビックリした1足でした。

爪先側は左右の紐の通す穴のデザインが異なっていて足首側はしっかり締めれる様に左右同じ穴になっています。

紐を締め込んだ感想は「テスタロッサみたい」でした。スポルティバ/テスタロッサリリース時代のデザイナーと現スカルパのデザイナーは同じ人なので(確かそうだったと思います)、何か特殊なテクノロジーを受け継いでいるのかもしれません。

タンも非常に完成度が高く外側は大きく開く様にデザインされています。

タンの「包み込むような拘束感」と前述した「普通じゃないレースシステム」によってテスタロッサのような自然なダウントウが生まれます。

ベルクロベローチェは面のり専門ってイメージでしたが、ベローチェレースは軽いダウントウと締め込みによって生まれた爪先への集中でより強傾斜やポケットホールドに対応したように感じます。

レースはタンが大きい分足首周りまでカバーされています
ターンインや足裏感覚はほぼ一緒
ヒールカップも変わりは感じませんでした

ヒールカップやトウラバーに変更点は無いのでフックはやはり苦手なシューズと言えますが、それを払拭する性能を持っている事はベローチェベルクロで認識されているクライマーも多いと思うので敢えて詳しく触れませんが、
「ベローチェの掛け方」を理解するとトウフックもヒールフックも結構かかってくれます。

ベローチェフリークには是非手にしてもらいたい一足です。

【インスティンクトS】
10年ほど前、オレンジ色のビビットカラーでデビューした「硬いスリッパ」の代表格インスティンクトSの新作。
日本ではあまり展開されなかったシューズですが、本国では何度かリブートモデルがリリースされていました。
今回のインスティンクトSも例に漏れず「硬い」です。
どこのメーカーも「硬さ」というのはアッパーやヒールカップの剛性とあわせてアウトソールのシャンクを硬くしトータルで出すものですが、
インスティンクトSは「シャンクだけ硬い」という意外と他に例を見ないシューズです。
アッパーS72と思われるかなり柔らかいラバーでアウトサイドのランドは省略されていてそのままトウアッパーのラバーが巻き込まれています。

フットジャムにも良さそうだけどシャンクがあるので柔軟に足指を曲げていくようなジャムには不向きかも。


ヒールカップは他インスティンクトシリーズにかなり似ています。インスティンクトSは両サイドがブルーのラバーに変更されていて他インスティンクトシリーズよりもサイドの剛性は高いです。
このブルーのラバーはフューリアSのヒールで使われていた土踏まずからヒールに伸びていたラバーと同じ材質と思います。ランドラバーよりはフリクションがあり、アウトソールよりは柔軟なラバーです。

サイドラバーの剛性でスリッパなのにヒールは上々でした

トウフックに関しては個人的にはVSやVSwmnの方が掛かるイメージです。
ドラゴやキメラにも言える事なのですがアッパーを覆うように構成されているトウラバーより、
ランドとは別に「トウフック用に」1枚追加されているトウラバーの方がトウフックは掛けやすいと思います。

また、サイズなのですが「スリッパモデルだから小さめ」という考えでのセレクトはやめた方がいいです。
シャンクとヒールカップの剛性がしっかりあるのでベルクロ/レースモデルと同じサイズ感(個人的にはそれらよりもハーフ大きくしたい位です)がいいと思います。
今回紹介する4足の中では最もサイズを合わせるのが難しい1足です。試し履きは必須です。

個人的にはデザインもかっこよくスリッパシューズは好きなので本気シューズ候補にいれていたのですがちょっと難しいかな。というのが正直な所です。ドラゴやフューリアのシャンクを搭載してくれていたら日本人には凄く評価が高かったのかと思います。


【オリジンVS】
ファーストシューズの代表格「オリジン」のニューモデル。
前モデルは耐久性をテーマにしたラバーを使っていたので上級者にはフリクションの部分で難があった1足でしたがVSはベローチェでも使用されているフリクションが高評価のS72ラバーに変更されています。足裏感覚もかなり良く、
ベローチェと同じ位の足裏感覚でハリボテやホールドを捉えることが出来ます。
「一本ベルクロ+トウラバー」という日本のマーケットを意識した(訳ではないでしょうが)デザインも素晴らしいニューモデルです。

デザイン変わりすぎ 笑
しかし変更点は全て改善点という感じでかなり性能は上がっています。

デザインがガラッと変わって「上級者向き?」と思われるかもしれませんが、足型やタンの材質は前モデルとあまり変更はなく、
あくまでも初心者向けシューズのアップデート版というスタンスを崩してはいません。

ラストは前モデルとほぼ変わらず。ドラゴやブースターに慣れてるクライマーにはインサイドでの足置きに違和感を感じるかもです。

当然、足入れは最高で長時間の使用も楽チンです。
ヒールラバーはすごい場所で切れていて、
「そもそも私はヒールをする靴ではありません」とオリジンVS自身が言っているかのようです 笑

しかし、このヒール形状のお陰でスリングショットラバーは非常に柔軟になり、足入れ感は前モデルよりも上がっています。
一個人として絶対にオススメしませんが、踵を潰して履く事も出来る位です(オススメしないと言うかダメです)。

ヒールカップは踵を包む程度の拘束感。

オリジンVSは楽なのでウォーミングアップ等で良く履いていたのですが、ずっと
「何かのシューズに似てるんだよな」と思いながら履いていました。
ラバーが少し減ってきてより柔らかくなった時に気づいたのですが
「旧5.10のモカシムに似ている」のです。

ラバーのフリクションが良く、
そこに全振りするかのようにスリングショットを弱め、シャンクも柔らかくしている。
ハイカラなデザインと裏腹に20年以上クライミングをしているクライマーにはノスタルジーを感じでしまうようなシューズです。

個人的にはターンインが強いシューズが好きなので本気シューズにはなりませんが、面のりでラバーフリクションを全開に使わなけゃいけないシュチュエーションの時はベローチェより活用してくれそうなら気がします。
この手の鈍感系シューズは「死にかけの時最高」だったりするので穴が空いて履けなくなるまで期待しながら履いていくつもりです。

【ブースター】
私がスカルパにサポートしていただける前から存在していたモデルです。
その後「ブースターS」と名前を変え当時のスカルパでは最も柔らかいシューズとなりました。
このブースターSのシャンク形状がのちのフューリアを産み、同じシャンクを使用した「ドラゴ」や「フューリアS」がうまれました。
ブースターSはハードシューズのイメージが強かったスカルパのイメージをガラッと変えた1足であります。
ブースターSは廃盤となってしまいましたが数年前からブースターと名前を戻しニューモデルとして存在していました。
今年から日本でも展開がスタートした次第です。

このNEWブースターですが、
一見硬そうに見えますがかなり柔らかいシューズです。土踏まずやアッパーも非常に柔らかく、爪先の足裏感覚はほぼドラゴと同じと考えていいでしょう。現代のニーズにあった柔らかさです。

灰色のラバーはかなり柔らかい仕様になっています。

ターンインは今時では無いのかもしれませんがかなり強目。個人的にはスカルパの中でもっともターンインしているように感じます。

ここからは個人的意見になりますが
私はシューズを選ぶ上でターンインを結構重要視しています。
インサイドで踏む事が多く、大半のフットワークを親指中心で踏んでいるのでターンインが少ないシューズは少し苦手です。
なのでジムでのメインシューズはずっとターンインの強いBOOSTICを使用してきました。 
しかし本気トライ時はやはり柔らかいシューズの方が踏み込めるので今回のBOOSTERは私のニーズに最も合っているシューズだと言えます。

レビューに話を戻しますが
BOOSTIC同様に良く締まる2本のベルクロはトウフックには向きませんが足を入れたあとギュッと足を握ってくれる様な感覚が得られます。
ジムで快適に登るのであれば、意外と足入れの悪いスリップオンやワンベルクロよりも2本ベルクロのほうが快適で楽という面もあります。

スカルパのベルクロはデザインも最高!

ヒールに関しては不思議ラバーが搭載されています 笑

私はこのオレンジラバーをチェダーチーズと呼んでいます

オレンジのチェダーチーズ部分にはフリクションがあまりなく、この部分だけでホールドを捉えてしまうと結構滑ります…。
しかし両サイドの黒いラバーが柔らかいのでそこを潰すようにヒールを乗せていくと結構ヒールフックは掛かります。
そしてオレンジのチェダーチーズの剛性が上手くその潰して掛けているヒールの剛性をキープする役割をしてくれています。
イメージ的にはフューリアSと同じようにヒールを掛けていくとしっかり効いてくる感じです。

私はフューリアSも気に入っていて、あの青いヒールを警戒していましたが、掛け方に慣れてくると「意外と使える」ヒールになりました。
今回のブースターに関しても同じ事が言えそうです。

最後に私の本気シューズですが、私のクライミングの割合はやはり人工壁が多いのでターンインが最高なブースターをメインに履いていこうと思っています。
ブースターの2本ベルクロやチェダーチーズでのクライミングは
「ジムで登る上での楽しみの1つ」として考えたらシューズをより愛せるような気がします。

個人的なレビューとなりましたが、スカルパシューズ購入においてのヒントになってくれたら幸いです。サイズ感などのご質問もお気軽にInstagramアカウントのDMなどで連絡下さい。


今回も長文のご閲覧と有料記事のご購入ありがとうございました。


おしまい

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