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『21年ベスト:映画編』ではない映画に関する雑記

映画については年間ベストを選べる/語れるレベルにない。

という以前に映画館に行ってすらいない。(昔は一人でミニシアターでもシネコンでも時間あれば行ってたのに。)

外出が減ってる等理由は幾つかあるけれど、結局のところは「長時間映画館に座って2時間超の作品を鑑賞する忍耐力がなくなっている」という事に尽きる気がする。

自分は「映画は映画館で観ないといけない」とか「中断入れながら観るのは言語道断」とかは思わないし、個人が好きな視聴スタイルで良いと昔から思ってる派なのだけど、映画館のスクリーンで観ることによる体験=映画の本質と言う側面があることも否定し難い。

よって、冒頭から述べている体たらくな状態/マインドにある自分のような人間が「映画」について評価したり、ベストは何かについて語るのはやはり憚られるので、今回は今年(家で)観た映画リストと一言感想レベルにとどめたい。

前置きが長くなったけど、上記のような背景から必然的に旧作ばかりのリストになる。

そういえばつい最近音楽については「旧作に嵌ると新作に時間を割けないのであまり聴かない」と言ってたのとは正反対だなと思った。
(映画と音楽は言語面や配給・配信面等で鑑賞する/できる範囲や環境が違うから自分にとってはこれも必然なのだけど。)

【今年観た映画(印象に残っているもの) ※順不同】

グレタ・ガーウィグ 『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』

私は恥ずかしながら過去『若草物語』を読んだことも見たこともない。

なので初見的に楽しんだのだけど、何より本作は構成が素晴らしかった。

ラスト、私は主人公が原作(ネットのネタバレで知った)とは異なる選択をしたエンドで解釈したし、その方が好み。

主役のシアーシャ・ローナンはブルックリン、レディ・バード、本作とどんどん役者として良くなっているなと感動した。

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バーツラフ・マルホウル 『異端の鳥』

体力無い時に「169分」「容赦ない描写」と言われて観るのを迷った。

過去のリアリズムが極まると現代で寓話化すると言いたい所なのだけどこれは現在進行形の善悪の問題であり、ホロコースト経験者である原作者イエールジ・コジンスキーは91年に自殺している。

映画自体に凄く嵌ったわけではないけど、原作を読みたいと思ったので復刊してほしい。

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ティム・バートン 『ダンボ』

私はダンボすらアニメで観ていない。

なのでそちらとの比較はできないのだけど、どうやらアニメ版と違って人間サイドにかなり重点が置かれ描かれてるみたいだし、ラストも異なっているようだ。

すなわち『シン・ダンボ』。

ティム・バートンらしい世界観は凄く好きで、音楽はやっぱりダニー・エルフマンだな、と思った。

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セリーヌ・シアマ 『燃ゆる女の肖像』

18世紀フランスを舞台に望まぬ結婚を控える貴族の娘と彼女の肖像を描く女性画家との関係を描く。

正直なところクィアを特別視するのは時代的に遅れてる気がしててクィアパルム賞なんて要らないし、これが普通にパルムドールでも良いレベルだと思う。

特にラスト、この数分の凄みのためにこの映画があると言っても過言でない。

それくらい圧倒的。

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キム・ボラ 『はちどり』

80~90年代の韓国のおさらいをしておくと物語が頭に入りやすい。

自分はポン・ジュノの『殺人の追憶』の再見から続けて観たのでスムーズに入っていけた。

主人公ウニの表情が少し変わったようなラストが印象的。

地味ながらとても良い映画。

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フー・ボー 『象は静かに座っている』

タル・ベーラを師と仰ぐフー・ボーのデビュー作にして遺作。

ひたすら長い。

『異端の島』の比ではない234分。

しかしこの長さがこの映画の肝なんだと思う。

ネメシュ・ラースロー『サウルの息子』とのカメラアングルの類似性はタル・ベーラ繋がりに依るものなのだろうか。

印象的なラストの続きとして新たな物語をフー・ボーには撮ってほしかった。

中国のバンド花伦(花倫)の音楽もとても良い。

今年観た中で一作選ぶとしたらこれかな、とは思う。

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スパイク・リー 『ブラック・クランズマン』

久々のスパイク・リー。

ラストの賛否はありそうだけど、緊迫感のある潜入捜査が意外とすんなり終わってしまう分、必要なパートだったように思う。

『國民の創生』だけでなく黒人ヒーロー物やカンフーアクションの揶揄でバランスが取られているのは抜かりない。

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ルカ・グァダニーノ 『サスペリア』

偏愛度では今年一番。

わかりやすく言えばドイツのカルトがアメリカに蹂躙されるという構図なんだろう。

「ミス・ターナーが最後生き残るのは何故か?」はわかったようで解釈に自信がない。

何回か訪れるクライマックスシーンがいずれも迫力ある。

観る前は「音楽はゴブリンが良い!」と駄々をこねていたのだが、トム・ヨークの音楽も凄く合っていたと思う。

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ライアン・ジョンソン 『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』

アガサ・クリスティー好き歓喜のオールド・ミステリのメソッドでシナリオが良い。

ダニエル・クレイグが頭脳派の名探偵と言う点だけは引っかかるのだが、続編も作られるらしい。

アナ・デ・アルマスの特異体質は「何でこんな設定にしたのよ?…」と思ってたら最後に回収された。

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ディアオ・イーナン 『薄氷の殺人』

中国発の暗すぎないノワール。

構図も色彩も美しいし、ラストが印象的。

タイトルは原題に沿って『白昼の花火』とかが良かったように思う。

来年は『鵞鳥湖の夜』を絶対観る。

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侯孝賢 『冬冬の夏休み』

歴史的名作を今更ながら鑑賞したけど流石にリマスター版、光の表現がとても美しかった。

まさに夏の映画。

婷婷と寒子の関係性が印象的。

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ジム・ジャームッシュ 『デッド・ドント・ダイ』

無駄に豪華なキャスト達の悪ふざけとメタ的な展開は面白い。

イギー・ポップとトム・ウェイツの扱いが違い過ぎると思ったがよくよく考えると結局同じだし、この映画の誰もがおいしい役と言える。

(『パターソン』の方が10倍好きではあるけれど。)

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ジョーダン・ピール 『アス』

本当は『ゲット・アウト』を楽しみにしてたのにこっちから観てしまった。

ちょっと先読みしやすい展開だけど手堅い。

マイケル・ジャクソンとシャイニングと13日の金曜日を足したような映画。(何を言ってるが自分でもよく分からない)

オフィーリア(≒アレクサ)によるザ・ビーチ・ボーイズ→N.W.Aの流れが鉄板。

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オリヴィエ・アサイヤス 『パーソナル・ショッパー』

アート寄りホラーかと思ったら全然違った。

ジャンルと言うかテーマ自体が揺らいでいて好き嫌いは分かれそう。

絶妙に取り合わせが悪い感じが自分には面白かった。

クリステン・スチュワートが相変わらずクール。

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デヴィッド・クローネンバーグ 『マップ・トゥ・ザ・スターズ』

ここからクローネンバーグ祭。

巷の評価は振るわないようだけど、凄く楽しめた。

こういう悪趣味なセレブ世界撮らせたら流石に上手い。

近親憎悪は愛に変わり、後に翻って血の粛清に転じるんだな。

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デヴィッド・クローネンバーグ 『イースタン・プロミス』

クローネンバーグ祭其の2。

ヴィゴ・モーテンセン、ナオミ・ワッツ、ヴァンサン・カッセルと好きな役者しか出ていない。

シンプル且つ抒情的で物語に没入できた。

伝説的なサウナの肉弾戦シーン必見。

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デヴィッド・クローネンバーグ 『クラッシュ』

クローネンバーグ祭其の3。

J.G.バラードの原作は超傑作だけど実写化されると「おまえら何やってんだよ」と思う。

と言うわけで映画の方も傑作。

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ミシェル・ゴンドリー 『エターナル・サンシャイン』

皆が好きな映画第1位こと『エターナル・サンシャイン』。

チャーリー・カウフマンらしい癖のある脚本。

髪の毛の色で観客を迷宮に誘い込む手法は大発見、思いついた時さぞ楽しかったろうなと思う。

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ギレルモ・デル・トロ 『シェイプ・オブ・ウォーター』

ストーリー自体は平凡だし、サッドエンディングをファンタジーによりハッピーエンディングに見せる手法含め個人的にはもう一捻り欲しかった気も。

ただし、色彩や美術的素晴らしさに加え、カルメン・ミランダとラ・ジャヴァネーズ(ゲンスブール)が劇中流れるだけでほぼ満足したのであった。

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以上。

上記以外に再見した映画は以下位。(通常何回も同じ映画を観ることはしないので例外。みんな大好きな映画)

タイカ・ワイティティ 『ジョジョ・ラビット』

ポン・ジュノ 『殺人の追憶』

クエンティン・タランティーノ 『イングロリアス・バスターズ』

相米慎二 『台風クラブ』

黒沢清 『CURE』

(来年はもう少ししっかり映画を観れる精神状態でいられるといいな。)

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