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なぜ上野案件を取れなかったことを書くか


はじめに

(表題の図は不忍池上空を走るZippar)
先日、上野懸垂線の新たな乗り物の結果公表がなされ、Zipparは採択されませんでした。

採択されたのは…

引用:

https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/content/000067955.pdf

具体的な名前は出ていませんが、業界の人は一瞬で分かると思います。エコライド(下記)ですね。

泉陽興業さん、おめでとうございます。

このnoteは書くかどうかすごい迷ったのですが、スタートアップとして、掲げた目標を達成できなかった時の対応について、書いた文章になります。
このnoteが世に出ているということは結局書くことにしたので、その理由を以下でつづります。

技術的なことや配点の詳細には触れられないです、ごめんなさい(内部で分析はしているけど、NDAの関係と、言い訳っぽくなるのが嫌なので)

悔しい

めちゃくちゃ悔しいです。実績がある乗り物だったらまだあきらめがついたかもしれませんが、エコライドって商用運行の実績はないんですよね。(もちろん泉陽興業さんはエコライドのベースとなっているジェットコースターについては豊富な実績がありますし、開発自体も権威である東大須田研が関わっています)
実績がなくても、取れているということは悔しさを増大させていますし、自分たちにもチャンスがあったことを残酷なまでに突き付けてきます。結果発表の夜は布団で泣きました。いまでも上野という文字が目に入ったり、聞いたりすると汗が出てきます。悔しい。

1点の世界

一番点数が低かった乗り物は、採択された乗り物の8割近くの点数でした。
これは、最低でも、我々が8割近くの点数を取ったことを意味します。
新たな企業の最初の挑戦としては、頑張った方だという風に言われます。
確かに、実績豊富な企業と戦って、8割の点数まで持ってくることができたのは社員や協力していただいているメンバーのおかげです。これは間違いないです。
本当にありがとうございます。

ただ、残酷なことを言ってしまえば、点数による評価がされるってことは1点でも少なかったら負け、1点でも高かったら価値という勝負なので、どれくらい惜しかったとかは採択に関係ないんですよね。数十億とか数百億の案件がその1点できます。1位が80%もらえて、2位が20%とかはない、勝者が総取りする世界。
点数が低かったから負けた。ただ、それだけ。

目標が達成できなかった時にどうするか

さて、本題なのですが、スタートアップは野心的な目標を掲げます。
そのすべてが達成できることはありません。(逆に全部達成しているのであればそれは目標設定が誤っているといえる)
目標が達成できなかった時にどうふるまうのがよいのでしょうか。私はパターンが2つあるかなと思っています。

①しれっと次の目標を掲げる

世の中のほとんどのスタートアップってこっちだと思うんですよね。なんなら自分だって、過去こっちの方が多かったかもしれません。
イーロンマスクだって、2016年には2025年までに火星に人を届けると言って、たぶん達成できないけど、それについて触れることなんて一切なくて、また、次の大きな目標を掲げ続けるんですよね。
世の中の人は達成されてない目標よりも、数が少ないながらも達成している目標に注目して、また未来を信じる。

これは恐らく多くのスタートアップがとっているので、それなりに合理性があるのかなと思います。少なくても、熱狂を冷やさなかったり、カリスマCEO像を破壊させないという理由はありそうです。ということをCEOが考えている、とかもなくそういうCEOが世の中に求められているからそういう人が残るという説もあるかもです。

②正直に話す

前述した通り、このnoteを書いているということは、こちらを選択したわけなのですが、その理由を書いていきます。

一言で言うと、自分の中では言わないという選択肢はすごいもやもやすると思ったんですよね。

もうちょい自己分析をすると、いろんなメディアとかに露出して、上野案件獲得を目指しますと言っていて、ありがたいことに、多くの人に応援してもらっています。いろんな方が気になっていると思います。なのに、その結果が悪かったからと言って、言わないというのは短期的には良くても、長期的には、ああ、こいつは都合のいいことしか言わないんだなと思われる。その損失はすごい大きいと思うのです。(やってるビジネスが交通というとても長い時間がかかるものだからかもしれませんが)

また、会社の内部を見た時に、あ、うちの代表は都合の悪いことは隠すぞというのはめちゃくちゃカルチャーを破壊すると思ったんですよね。みんな代表の真似をするじゃないですか。Zipのポリシーにも

我々は3つの矛盾を受け入れます
・理想と現実の矛盾
大きな理想を掲げながら、目の前の目標を着実にこなそう
先人に学びながら、未来を描こう
・挑戦と安全の矛盾
挑戦し続けるために安全を守ろう
小さな失敗を沢山しよう
・論理と感情の矛盾
言うべきことを、恐れずに、ただし伝わるようにしっかり伝えよう
みんなが正直に発言できるように「いいやつであろう」
先人を尊敬しつつも、先人ができたということは我々もできる一番の証拠なので自信を持とう

https://woozy-catboat-56a.notion.site/Zip-Infrastructure-72bae1579b2d44368c53cfeff0815b4f

と、ある中で、「いいやつかどうか」という観点で見ると、言わないという選択肢は自分にはありませんでした。ある意味これはポリシーを制定したから、感じるようになったかもです。

自分の体験としても、応援していた企業やサービスがなくなったというのを他の人経由で聞くとちょっとがっかりします。もちろんつらい発表になるのは理解しますが、なるべく発表してほしい。いや、とても大変だと思うんですけどね。たまにみる、会社を畳みましたの発表とかは本当に尊敬します。自分もその状況になったらしたいと思いつつもできるかどうかはわからない。(書いていて、前アンリさんが言っていた連続起業家に投資する条件はあらゆる方面に仁義を通したかという話をちょっとだけ理解できた気がした)

というわけで、もちろん短期的には不利益になる可能性があるというのは承知の上で、この事実を公表するという決断に至りました。

この正直さに価値があると信じています。

さいごに

実は、まだ公表できないんですが、good newsがめちゃくちゃあります。
もちろん、こちらもなるべく早く伝えたいなと思いますが、上野案件の難易度を超えるようなことに成功していたりします。伝えられないのがめちゃもどかしい。

また、今回の件で気づいたので、今後は不利益になるようなこともなるべく正直に出せていけたらと思いました。すごい難しいコミュニケーションかもしれないけど、それがみんなに応援していただいているせめてものお礼かと感じています。

ぶっちゃけ答えがない問題だと思うし、何なら世の中の多くは①で動いているのであれば、私が気づいていない①がいい理由もたくさんあると思っています。ぜひ教えてください。

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秦野試験線の一コマ


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