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社会科を学び直す

久々に、神谷美恵子さんの本『本、そして人』を読んだ。

神谷美恵子さんの本との出会いは、2016年10月にさかのぼる。若松英輔さんの本に神谷美恵子さんの名前が何度も登場し、気になってしょうがなかった。本を調べると、ある本のタイトルに惹かれた。

そのタイトルは、『生きがいについて』

豊かさや幸せに希望などの内面的な心に関心があったこともあり、すぐに手に取った。何度も読み直した本で、そのたびに新しい気づきや発見があった。何よりも、自分の内側を確認することができた。

よく耳にする、“生きがい”とは全然違う。薄っぺらい言葉ではなく、深く息を吸い込んで深く深く潜っていく記憶が今でも残っている。ぜひ、読んでほしい一冊。他にも何冊か読んできた。
『遍歴』、『こころの旅』、『神谷美恵子日記』、『うつわの歌』

ちょうど、『生きがいについて』を読み終えた時に、知り合いがSNSで神谷美恵子さんの紹介をしていたので、想いを共有し合いたくて会いに行った。

そうそう、神谷美恵子さんとはどのような方かを少しだけ紹介しよう。

精神科医であり、哲学者であり、本(エッセイ)の執筆もされている。特に有名なのが、美智子皇后さまの相談役であったこと。弱者に優しく寄り添う、慈愛に満ち溢れた皇后さまに、少なからず影響を与えた人である。
何よりも有名なのは、ハンセン病患者との関わりである。皇后さまがハンセン病患者の療養所に何度も足を運ばれたり、被災者の方にお会いされ耳を傾けられるのも、神谷美恵子さんの影響があるらしい。

私も本を読むまでは、ハンセン病は社会で知った程度でしかなかった。本を読んでハンセン病に関心が向き、岡山県にある「長島愛学園」に行こうと思った。結局いまだに行けていないが。

昨年、樹木希林さんが亡くなられて、過去の出演映画にスポットが当たった。中でも、映画「あん」は改めて注目された。希林さんがハンセン病患者の役を演じられ、ハンセン病を知った人もいたと思う。

学校の社会で習ったことはあっても、その後どうなったかについては何も知らない。もう終わった話(歴史)だと思っていた人も多い。私もそれに近かった。
河瀬監督の何かの記事で、映画のスポンサー集めに大変苦労されたとあった。終わったのではなく、いまだに続いていることを知らなかった。

2015年に水俣市に初めて行った。正しくは、立ち寄った程度の短い時間だったが。屋久島の帰りに、水俣市に立ち寄った。旅行に行く前に水俣市の人と知り合い、水俣市の良さを話されていたので観に行きたくなって、連絡をとって案内をしてもらった。

ところで、水俣と聞いてどんなイメージがあるだろうか。

私の場合、水俣病が真っ先に浮かんだ。社会で習った病気や患者の写真など、暗いイメージしか持っていなかった。実際水俣市に行ってみて、イメージが大きく変わった。
考えてみれば、今から60年以上も前であり、変わっていて当然。しかし社会で習った時から、私の時は止まったままだった。そのことを現地に立って気づいて、正直恥ずかしく情けなくなった。

確かその時に案内してもらった人に、ぽつりと言ったことを今でも覚えている。

「近代社会の歴史が、学校教育から止まっている。」

習ったから終わりではない、習ってからが始まり。
知ったから終わりではない、知ってからが始まり。

こう思うようになったきっかけの旅でもあった。

神谷美恵子さんの本を読みながら、あの時の記憶を思い返した。これからの社会については、多くの人が関心を持っている。未来ばかりみると、いまだに続いていることを忘れてしまう。

現在から未来を過去から現在を同時にみることが、行ったり来たりしながらみることが大切だと思い返した。

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