行き先のわからない旅行記 8(最終回)

ラジオの収録さえできればあと2日ほど延長することができるこの旅行。僕は、神戸に住んでいる友人に連絡を取ることにした。出先でラジオを録ることを想定せずに旅に出てしまったので、パソコンに音声を取り込むための装置を借りるためだ。

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宮崎空港から神戸空港への空の便は無いので、大阪の伊丹空港へと飛ぶことにした。数日前に「トランプ大統領をはじめたくさんの外国要人が来てるから、大阪には行かないほうが良いな」と思っていたはずなのに、結果的に大阪に(しかもトランプ大統領が伊丹空港から、エアフォースワンで帰国する、まさにその日に)行くことになってしまった。

伊丹空港の警備はものものしく、あちらこちらに配置された警備員さんの間を縫うように外へと出た。伊丹空港からバスで神戸へ。神戸では友人とバーを巡ったり、レンタルスタジオを借りてラジオを録音したりして過ごすことに。(気持ちの中で、神戸での時間は「旅行」とは違う気がするので、割愛しますね笑)

さて。無事に収録も済んだので、あと2日ほど帰宅までの余裕ができたことになる。当てずっぽうで行き先を決めないまま、町の人やバーテンダーさんに勧められたところだけを回った旅だったが、最後くらいは自分で行き先を決めようと思う。それならば、ぜひとももう一度行きたかった県があった。

某氏がその県出身であることはもちろん知っていたのだが、その県について話せる話題に乏しかった当時の僕は、以前彼に「僕が前にその県に行った時、肉まんをファミマで買おうとしたら『スジョーユワ?』と聞かれたことがあって、僕はその『スジョーユワ』の意味が分からず、その地方独特の方言なのかと思い何度も聞き返してしまった」という話をしたところ、おかげさまで盛り上がった。しかし最後に行ったのもかなり前だし、中心部を見たことが無いのはさすがに…と引っかかっていたので、それ以上の話題も欲しかった僕は、今一度行っておきたいと常々思っていたのだ。

三宮からバスに乗り、淡路島・鳴門を経由して向かったのは、肉まんに”酢醤油”を付けてくれる県、徳島県。

※文章の流れ的に「酢醤油付けるのは徳島」と言い切ってますが、その他の県でも酢醤油を付けてくれるところはありますよね。

「そんな、ね。いくら阿波踊りが有名だからって、徳島のそこらじゅうで人々が阿波踊りを踊ってるわけないじゃないでs… おやおや〜!?」

ホンジャマカ石塚さんばりの一人芸をかましたのも当然で、到着直後、川沿いの公園で学生さんたちが、チントンチントンと阿波おどりの練習をしていたのをに目の当たりにする。すごいな徳島。

徳島に着いて、すぐに駅前の趣のある大衆酒場に向かった。早めに済ませておきたい儀式があったのだ。

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安兵衛(徳島駅前)

なんてことのない写真だが、僕にとっては感慨深い一杯。実は、この一杯をもって僕は、「47都道府県すべてで”お酒を飲む”」という20歳以上に許されるスタンプラリーを完遂したのだ。うひょー!

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徳島ラーメン麺王、Bar ARCHE、Bar 鴻、Bar 豊川、LONG BAR、【翌日】いのたに本店

徳島県もまた、素敵なバーばかりでとても思い出深いものだった。近所のスナックのママが阿波踊りファンのため、行く度にさんざん聞かされていたスポットである「阿波おどり会館」にもようやく行くことができた。これで思い残すことなく、東京に戻ることができる。

偶然選ばれた渡航先「益田市」から始まり「徳島市」で終わった今回の旅の総移動距離は、3116km。また機会があれば、いろいろなことが落ち着いたのちに全国の土地を歩いてみたい。(その時はまたぜひ、全国のいろいろなお店や場所を教えて下さい!)

無題 6

帰路につきながら、徳島のバーで、女性のバーテンダーさんが、特にこちらから話を振ったわけでもなく、笑いながらこんな話を投げてくれたことを思い出していた。

「あの方は絶対、曲のタイトルを『すだち』にしようって思ってたに違い有りません。でも、どなたかから色々言われた結果、泣く泣く『Lemon』にしたに決まってるんです!同じ徳島県出身として、悔しい気持ちがすごくよくわかるんです!」

___地元民以外のお客さんが来たと分かった時のための、ご当地のバーテンダーさんが有する「すべらない話」の一つだったのかもしれない。

「そうかもしれないですね」

僕は内心、<これで酢醤油の話以外の話題ができたな…>などと思いつつ、その場は笑ってお返しするにとどめた。

【終】

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旅行に行けない今だからこそ、あの時の旅行を思い出して旅行気分をもう一度楽しむという、自分にとっても良い機会になったと思います。また全国の土地をまわる機会を頂けることを願いつつ、8回にわけてお届けしました旅行記を締めくくろうと思います。お付き合いくださいましてありがとうございました!
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