歌い手さんがワンマンライブをし始めた頃。

昨日書いた旅行に関してのnoteを「前編」とした。何を書くかについては毎日とらわれたくないので「後編」は後日にしようと思う。時間軸がブレてしまう事については申し訳ないが、自由に書いていける方が楽しいのでそうさせていただきたい。

初期にライブを作りはじめたことで、色々な歌い手さんから「自分のライブも作って欲しい」という依頼が来るようになった。「作り方」がまだ知られていない界隈だったので、懐かしい日々の経験は大いに作用したと思う。

歌い手個人のライブ(ワンマンライブ)は、以前もお伝えしたとおり「歌い手が一人でライブをやるなんて」という一部の意見もあった影響で自制されていたような印象だったが、少しずつ許容されるようになってきた。先にお話した「ジョナサン組」と勝手に呼んでいる、天月君・そらる君・佐香智久君の中で初めてワンマンライブをやったのは佐香君だった(僕が作ったわけではない)。そして、そのワンマンライブを見に行ったそらる君が続くことになる。

「あそこでやりたい」と言ったそらる君のために作り始めたのが、彼にとっては初のワンマンライブで、タイトルは「あこそら」という。第1回は渋谷のマウントレーニアホールで、もとは映画館だった場所を改造して作られたライブハウス。ゆったりとした席なので居心地が良い。なぜか覚えているのが、昼食に用意した釜めしを運んできた配達員が「こんなにたくさん注文するなんて」と迷惑そうな顔をしていたことと、その釜めしが出演者に大変好評だったことだった。

今でも思い出深いのが、2回目として開催された「あこそら2~そらるの部屋へようこそ~」である。このライブイベントは、日本青年館ホールで行われた。今はすでに新しい建物に変わってしまったが、取り壊してしまった古い建物の時代である。

この演出はとても凝った。ちょっとした演劇を挟んだのだ。

幕が開くとそこには、本人の部屋を模したセットが組まれている。引っ越し直後で、まだダンボールが積まれているような雑然とした部屋だ。ベッドの上で寝ているそらる君。電話の着信音が鳴り、寝ぼけまなこで電話を取ると、相手は僕。「新居になったんでしょ?今日、見に行くって前に約束したよね。大丈夫?」と聞くと、そらる君は「もちろんです、準備万端です。」とウソをつく。

慌てて用意をしていると、程なくして僕を含めたバンドメンバーが部屋に入ってくる。そして、部屋の中で軽く1曲演奏しつつ、そらる君はアコースティック編成で歌い出すのだ。

「いつか、たくさんのお客さんの前で歌うようになったら。その時は、僕たちをバンドメンバーとして呼んでくれよ!」と言いつつ、部屋を後にする僕たち。そしてそらる君は再びベッドへ。

「ああ…いつかそんなことがあるのかなぁ。」

とつぶやきつつ、再び眠りにつく。

____夢の中。

「なに寝てるんだよ、早くしろよ」と声がする。「何?」と起き上がる、そらる君。「もう本番だぞ…早く用意しないと間に合わなくなる」「どういうこと?」「今日は君のワンマンライブじゃないか」…”夜咄ディセイブ”のイントロが始まる。

「夢か… でも、夢の中ででもワンマンライブができるなら…」と立ち上がって部屋を去る。その直後に部屋のセットごと吊り上がり、バンドセットが登場。登壇しているのは先程部屋にいたメンバーだ。同時に会場の後ろから、衣装に着替えたそらる君が登場して歌い出す…という演出だった。

実は、ベッドに寝た瞬間に、すでに本人は居なくなっており、別の人間がそらる君の役をしていた(薄暗くしてわからなくしていた)。そして本人は即座に着替えてもらい登場するというイリュージョン的な要素を取り入れた。

お客さんは、そんな彼の夢で行われているライブにおける観客の”役”になる…という演出だったのだが、本当に良いライブになったと思う。

実はこの「いつかライブをやることになったら…」というくだりは実話だった。「部屋に遊びに行く」というシーンは脚色したものだが、その昔、本当にそういうやりとりがあったのだ。あの演出は、僕の夢でもあった。

さて。ワンマンライブが増えたことで、そらる君を筆頭に、96猫さん、りぶ君、夏代孝明君のワンマンライブの演出と、制作、そして演奏を引き受け始め、とても忙しくなった。ある時、3つのツアーが同じ時期に固まってしまい、1週間に3回名古屋に行くという珍事もあったことを思い出す。

ちょうど「Rib on」というアルバムを出した りぶ君のワンマンライブのタイトルを決める時、「エンターテイメントを表す”e”と付けて『Rib-on”e”』にすれば、初めてのワンマンライブっぽくて良いのでは」と提案した所、そのまま採用してくれた。96猫さんのワンマンライブツアー「ちょこっと96猫お邪魔します!(略して”チョコクロ”)」は、焼肉屋で思いついたタイトルだった。同時期に「Stars on Planet」や「虹色オーケストラ」も作っていたので、この頃は毎日のようにタイトルを付けていた気がする。

(最初は書いてたオチの話、消しましたすみません笑)


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