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番外 - 浪踏江湖

1
00:00:26,880 --> 00:00:29,720
衆人:おいおい 爺さんまた
江波亭に講談しに来たのか?

2
00:00:29,720 --> 00:00:30,420
なあ彼はいつもここで講談して 何が狙いだ?
衆人:おいおい 爺さんまた
江波亭に講談しに来たのか?

3
00:00:30,420 --> 00:00:33,000
なあ彼はいつもここで講談して 何が狙いだ?
 
 

4
00:00:33,000 --> 00:00:33,560
なあ彼はいつもここで講談して 何が狙いだ?
 
え? 店が頼んだんじゃないのか?

5
00:00:33,560 --> 00:00:35,060
え? 店が頼んだんじゃないのか?

6
00:00:35,060 --> 00:00:35,720
違うよ
え? 店が頼んだんじゃないのか?

7
00:00:35,720 --> 00:00:36,080
違うよ
え? はあ 構うもんか

8
00:00:36,080 --> 00:00:38,400
え? はあ 構うもんか

9
00:00:38,400 --> 00:00:39,160
行こうぜ

10
00:00:39,160 --> 00:00:41,600
どんな江湖の話するのか聞いてみようぜ!

11
00:00:42,960 --> 00:00:44,660
給仕:お客さま どうぞこちらへ

12
00:00:44,660 --> 00:00:45,920
何名さまで?

13
00:00:45,920 --> 00:00:47,720
かしこまりました!

14
00:00:47,720 --> 00:00:52,920
──江波亭はまさに春風十里、今は誰に
買われたのか分からぬ、湖に面して建つ酒楼である

15
00:00:54,920 --> 00:00:59,040
講談師:俗に言う 人多ければ口雑わる
王八多ければ乱れ這う
(*人多嘴杂=人が多いほど意見は多様であること)

16
00:00:59,040 --> 00:01:03,600
江湖中の血生臭い風雨が
いつまで経っても衰えぬのは
(*经久不衰=隆盛な状態がずっと続く)

17
00:01:03,600 --> 00:01:07,320
おおよそこの一言に尽きる

18
00:01:07,320 --> 00:01:09,280
私のような爺が

19
00:01:09,280 --> 00:01:13,560
江波亭の一方に座して 小槌で卓を叩いて一句

20
00:01:13,560 --> 00:01:17,760
“世風日を下り 人心古ならず”の下九流も皆
(*世风日下=世間の状況がだんだん悪くなること *人心不古=心が邪悪 *下九流=芸人など下賤な家業)

21
00:01:17,760 --> 00:01:22,360
年年今日であれ 歳歳今朝であれ なのだ
(*年年有今日,岁岁有今朝=めでたく幸せな今日の幸運が毎日続くようお祝いすること)

22
00:01:22,360 --> 00:01:27,760
しかして過去に武林の荒波を踏み越えた大人物は

23
00:01:27,760 --> 00:01:34,200
山河令の主高崇 長明山の古僧 鬼谷の谷主らの如く

24
00:01:34,200 --> 00:01:38,080
今となっては老いたるは老い 去りたるは去り

25
00:01:38,080 --> 00:01:41,080
もはや行方は覓め難し

26
00:01:41,080 --> 00:01:47,400
この江湖はまた新しき者が
頭角を現し風浪を巻き起こすのである

27
00:01:47,400 --> 00:01:50,160
紛擾(ふんじょう)争奪を数えてみても

28
00:01:50,160 --> 00:01:54,480
結局は酒 色 財 気の四文字に過ぎぬが
(*酒色财气=気は気性の勢いのこと)

29
00:01:54,880 --> 00:02:00,240
どれだけの英雄好漢が窮死しただろうか?

30
00:02:00,240 --> 00:02:03,800
今や 城中に一大事があろうと

31
00:02:03,800 --> 00:02:06,960
諸君は南へ北へと行き交い はるばると来たりて

32
00:02:06,960 --> 00:02:10,280
恐らく詳らかには知らぬであろう

33
00:02:10,280 --> 00:02:16,960
爺が皆さんにお話しして
数枚の銅板をもらい酒銭をこさえよう

34
00:02:16,960 --> 00:02:18,440
衆人:いいぞ いいぞ 聞かせてくれ!

35
00:02:18,440 --> 00:02:25,600
晋江文学城 Priest原作 猫耳FM
音熊聯萌連合出品

36
00:02:25,920 --> 00:02:33,400
古風武侠ラジオドラマ《天涯客》
番外「ぶらり江湖」

37
00:02:36,080 --> 00:02:39,400
講談師:さて 我々の街には
陸員外(ルー・ユェンワイ)殿がおられるが

38
00:02:39,400 --> 00:02:42,440
あれは第一級の善人だ

39
00:02:42,440 --> 00:02:47,920
不作の年に散財し 厄災の年に粥を
施すような事をせねば気が済まぬ者である

40
00:02:47,920 --> 00:02:50,200
物乞い:ありがとう 良き人には良き報いがあります

41
00:02:50,200 --> 00:02:53,960
講談師:彼は良田と美しい妻を持ち
馬を引き茶を売った

42
00:02:53,960 --> 00:02:57,080
今では更に 生業を子や孫に引き継がんとする

43
00:02:57,080 --> 00:03:00,240
自身はただの富貴な閑人だ

44
00:03:00,240 --> 00:03:02,360
諸君 言うてみれば

45
00:03:02,360 --> 00:03:04,640
員外殿のような者は

46
00:03:04,640 --> 00:03:10,320
侠盗みたいな正邪のはっきりせぬ輩どもとは
毛ほども柵(しがらみ)はないのでは?
(*侠盗=金持ちから金品を盗み皆に配る者 *瓜葛=親類縁者との瓜や葛のツルのように絡まった縁)

47
00:03:10,320 --> 00:03:10,560
衆人:そうね

48
00:03:10,560 --> 00:03:11,480
そうだ その通り
衆人:そうね

49
00:03:11,480 --> 00:03:12,960
そうだ その通り
 

50
00:03:12,960 --> 00:03:17,160
講談師:しかし この員外殿の手を
煩わせようとする者がいる

51
00:03:17,560 --> 00:03:22,200
数日前 三輪の金花が表面に描かれた小旗が

52
00:03:22,200 --> 00:03:26,240
この陸員外の部屋の戸に突き立てられた──

53
00:03:31,480 --> 00:03:32,360
随行人:危ない!

54
00:03:32,360 --> 00:03:33,800
何者だ?!

55
00:03:36,600 --> 00:03:41,160
陸天枢(ルー・ティェンシュー):父上
三輪の金花が描かれた旗に書付けが綴られて……

56
00:03:41,640 --> 00:03:42,720
陸員外:もしや──

57
00:03:42,720 --> 00:03:43,720
早く

58
00:03:43,720 --> 00:03:46,040
書付けには何と書いてある?!

59
00:03:46,880 --> 00:03:48,560
陸天枢:書いてあるのは

60
00:03:48,800 --> 00:03:52,120
父上に必ず全ての家財を失わせ

61
00:03:52,120 --> 00:03:53,600
それから……

62
00:03:53,600 --> 00:03:56,800
それから妹を城北の尼寺送りにして静修贖罪させろ

63
00:03:56,800 --> 00:03:58,560
さもなくば……

64
00:03:58,560 --> 00:04:02,760
父上の過去のことを天下にぶちまけると

65
00:04:02,800 --> 00:04:03,360
父上──
 

66
00:04:03,360 --> 00:04:03,760
父上──
陸員外:もういい 分かった

67
00:04:03,760 --> 00:04:06,000
陸員外:もういい 分かった

68
00:04:06,000 --> 00:04:06,880
陸天枢:父上

69
00:04:06,880 --> 00:04:07,760
過去に何をやったのですか──

70
00:04:07,760 --> 00:04:09,440
陸員外:みなまで言うな

71
00:04:09,440 --> 00:04:12,080
この件はお前とは関係ない

72
00:04:12,080 --> 00:04:15,560
講談師:皆々さまの中には 年若い少侠もおられ

73
00:04:15,560 --> 00:04:18,160
恐らくその謂れを知らぬであろう

74
00:04:18,280 --> 00:04:25,280
この三輪の金花は何処の何方か
まずは爺が一からお聞かせしよう

75
00:04:25,360 --> 00:04:26,600
衆人:ほぅ?

76
00:04:26,600 --> 00:04:28,600
──講談師は悠々と茶をすすって喉を潤した

77
00:04:28,600 --> 00:04:35,440
講談師:この爺のような年を取った者は
大体みな四季荘の話を聞いたことがある

78
00:04:35,960 --> 00:04:37,000
衆人:四季荘?

79
00:04:37,000 --> 00:04:37,440
聞いたことがあるな……
衆人:四季荘?

80
00:04:37,440 --> 00:04:38,480
聞いたことがあるな……
講談師:これは前朝の先帝が在位していた時

81
00:04:38,480 --> 00:04:40,440
講談師:これは前朝の先帝が在位していた時

82
00:04:40,440 --> 00:04:43,000
一人の奇人によって創設されたのだ

83
00:04:43,000 --> 00:04:45,640
荘主においては 名は愚か姓も分からぬ

84
00:04:45,640 --> 00:04:48,480
我らの世代でも預かり知らぬこと

85
00:04:48,480 --> 00:04:52,080
ただこの人は神出鬼没で

86
00:04:52,080 --> 00:04:54,240
易容変化の術に精通しており

87
00:04:54,240 --> 00:04:56,200
軽功は頂点を極めておった

88
00:04:56,200 --> 00:04:58,800
荘主が何人(なんぴと)を師としたのか分からぬが

89
00:04:58,800 --> 00:05:00,720
正体を人に示さぬのに

90
00:05:00,720 --> 00:05:05,360
武林の中で一二を争うとびきりの名手であった

91
00:05:05,360 --> 00:05:06,960
衆人:その人ってもしかして……

92
00:05:06,960 --> 00:05:10,480
講談師:この四季荘は秘密の家業を持っており

93
00:05:10,480 --> 00:05:14,080
天底の下(もと)で彼らに調べ出せぬ事はないと称され

94
00:05:14,080 --> 00:05:18,480
どれだけの者が金品を支払って
情報を買ったか分からぬほどだ

95
00:05:18,480 --> 00:05:22,040
しかし後に 四季荘は鳴りを潜めた

96
00:05:22,040 --> 00:05:25,120
伝え聞く話では 老荘主が世を去ってから

97
00:05:25,120 --> 00:05:29,880
若荘主は四季荘を太子に
売り渡すことに決めたということだ

98
00:05:29,880 --> 00:05:33,320
それこそが今の皇帝である

99
00:05:33,320 --> 00:05:35,960
それ以来皇資を糧とし

100
00:05:35,960 --> 00:05:39,320
江湖ではあまり活動をしておらぬ

101
00:05:39,320 --> 00:05:44,240
それで金花の旗はまさにその四季荘からの文なのだ

102
00:05:44,240 --> 00:05:47,280
衆人:わぁ ならその荘は今は
皇家の命を授かってるんだろう?

103
00:05:47,280 --> 00:05:48,040
無頼漢:はぁ
衆人:わぁ ならその荘は今は
皇家の命を授かってるんだろう?

104
00:05:48,040 --> 00:05:48,480
無頼漢:しかし金花荘だかの鳥人は
人んちの令嬢の器量に惚れ込んで
(*鸟人=常識外れで人を惹きつけるひねくれ者)
衆人:わぁ ならその荘は今は
皇家の命を授かってるんだろう?

105
00:05:48,480 --> 00:05:52,000
無頼漢:しかし金花荘だかの鳥人は
人んちの令嬢の器量に惚れ込んで
(*鸟人=常識外れで人を惹きつけるひねくれ者)
 
 

106
00:05:52,000 --> 00:05:54,320
娘婿になるつもりなんじゃないのか?
 
 

107
00:05:54,920 --> 00:05:55,680
農家の酒飲み老人:ケホケホ……

108
00:05:55,680 --> 00:05:57,960
衆人:朝廷の鷹犬が大根の塩加減を心配してるのか
(*咸吃萝卜淡操心=お節介を焼くこと)
農家の酒飲み老人:ケホケホ……

109
00:05:57,960 --> 00:05:58,840
衆人:朝廷の鷹犬が大根の塩加減を心配してるのか
(*咸吃萝卜淡操心=お節介を焼くこと)
 

110
00:05:58,840 --> 00:06:00,880
──近所の老農夫が二人で飲みに来たようだった

111
00:06:00,880 --> 00:06:01,080
もう一人の農家の老人:アイヤー

112
00:06:01,080 --> 00:06:02,520
衆人:つまり 尻は宮家の腰掛けに置いて
もう一人の農家の老人:アイヤー

113
00:06:02,520 --> 00:06:03,120
衆人:つまり 尻は宮家の腰掛けに置いて
 

114
00:06:03,120 --> 00:06:03,480
衆人:つまり 尻は宮家の腰掛けに置いて
もう一人の農家の老人:あなたって人はさ

115
00:06:03,480 --> 00:06:04,040
もう一人の農家の老人:あなたって人はさ

116
00:06:04,040 --> 00:06:05,080
衆人:手はそんなに長く伸ばせるってことか!
もう一人の農家の老人:あなたって人はさ

117
00:06:05,080 --> 00:06:06,640
衆人:手はそんなに長く伸ばせるってことか!
もう一人の農家の老人:意地でも老けようとして

118
00:06:06,640 --> 00:06:07,920
もう一人の農家の老人:意地でも老けようとして

119
00:06:07,920 --> 00:06:10,480
球みたいに背中を曲げて

120
00:06:10,480 --> 00:06:14,440
酒を飲むのに顔を上げることもしないの?

121
00:06:14,440 --> 00:06:17,840
老けるだけならまだしも 人にまで嫌われて

122
00:06:17,840 --> 00:06:20,960
喉笛にどんな穴杓子があれば

123
00:06:20,960 --> 00:06:23,960
むせて死なないでいられるの?

124
00:06:23,960 --> 00:06:26,400
近くの人:この農家の爺さんの話は面白いな

125
00:06:26,400 --> 00:06:28,040
“意地でも老ける”ってなんだい

126
00:06:28,040 --> 00:06:30,800
年を取るかどうか 選べるのか?

127
00:06:30,800 --> 00:06:33,120
おい 講談師よ 続けろよ!

128
00:06:33,560 --> 00:06:35,760
衆人:そうだ旦那 続けてくれ

129
00:06:35,760 --> 00:06:37,560
その陸員外はどうしたんだ?

130
00:06:37,560 --> 00:06:39,080
農家の酒飲み老人:老温──

131
00:06:39,320 --> 00:06:40,480
もう一人の農家の老人:ん?

132
00:06:40,480 --> 00:06:42,680
──酒飲み老人がもう一人を指さすと
もう一人は指を握ってしばらく手のひらで遊んだ

133
00:06:42,680 --> 00:06:42,840
農家の酒飲み老人:チッ──

134
00:06:42,840 --> 00:06:43,760
講談師:あぁ このように大仏の
機嫌を損ねてどうするのだ?
農家の酒飲み老人:チッ──

135
00:06:43,760 --> 00:06:44,160
講談師:あぁ このように大仏の
機嫌を損ねてどうするのだ?
 

136
00:06:44,160 --> 00:06:45,120
講談師:あぁ このように大仏の
機嫌を損ねてどうするのだ?
もう一人の農家の老人:ふっ──

137
00:06:45,120 --> 00:06:46,360
講談師:あぁ このように大仏の
機嫌を損ねてどうするのだ?
 

138
00:06:47,360 --> 00:06:49,000
講談師:今や諸説紛々であるが

139
00:06:49,000 --> 00:06:51,720
その金花の旗は三日を期日としており

140
00:06:51,720 --> 00:06:55,040
今夜こそがその三日目だ

141
00:06:55,040 --> 00:07:00,080
我らは員外殿がいかに弁明するかを見てやろう

142
00:07:00,080 --> 00:07:03,520
──銅銭入れの鉢には目もくれず
茶がらを撒き散らして出て行った

143
00:07:04,080 --> 00:07:06,920
日が暮れると陸家の裏に
江波鎮の閑人たちが見物に集まってきた

144
00:07:06,920 --> 00:07:09,280
衆人:その四季荘って一体何をするつもりなの

145
00:07:09,280 --> 00:07:12,000
この陸員外 陸大善人は結局
過去に一体どんな事をやらかしたんだ?

146
00:07:12,000 --> 00:07:12,520
行って見てみるか?

147
00:07:12,520 --> 00:07:13,000
行こう行こう
行って見てみるか?

148
00:07:13,000 --> 00:07:13,680
行こう行こう
趙兄:やぁ 呉兄も来たのか?

149
00:07:13,680 --> 00:07:15,200
趙兄:やぁ 呉兄も来たのか?

150
00:07:15,200 --> 00:07:17,840
呉兄:趙兄もあの金花の旗の続きを見に?

151
00:07:17,840 --> 00:07:20,000
趙兄:あぁ 決まってるだろ

152
00:07:20,000 --> 00:07:23,240
その四季荘が再び江湖に出てきて
何をするのかも分からんのだろ?

153
00:07:23,240 --> 00:07:26,200
陸員外はどのような対応をするのかね……

154
00:07:26,200 --> 00:07:30,760
呉兄:だが最近 最も名を馳せた優秀な
新人 張成嶺少侠も来たのを見たから

155
00:07:30,760 --> 00:07:32,320
上手く行くことを願うね

156
00:07:32,320 --> 00:07:33,120
趙兄:えぇ?

157
00:07:33,120 --> 00:07:35,520
張成嶺? そりゃ誰だ?

158
00:07:35,520 --> 00:07:39,200
呉兄:そりゃさっき大荒剣を背負って
陸家荘に入って行った人だよ

159
00:07:39,200 --> 00:07:41,280
その張成嶺ももとは名門の出身で

160
00:07:41,280 --> 00:07:44,440
少年だった当時 琉璃甲の事件に巻き込まれて

161
00:07:44,440 --> 00:07:46,840
無惨にも一門全滅した

162
00:07:49,080 --> 00:07:52,280
彼の父親 張大侠の遺言に従って趙敬に身を寄せた

163
00:07:52,280 --> 00:07:53,360
趙兄:えぇ?

164
00:07:53,360 --> 00:07:55,680
趙敬……ってあれか……

165
00:07:55,680 --> 00:07:56,440
呉兄:そうだ

166
00:07:56,440 --> 00:07:58,000
その後の鬼谷大戦のさ中

167
00:07:58,000 --> 00:07:59,720
趙敬のような武林のクズと

168
00:07:59,720 --> 00:08:03,280
鬼谷の悪鬼 それと毒蝎は共に綺麗さっぱり殺された

169
00:08:03,280 --> 00:08:05,600
だがこの張小公子は行方が分からなかった

170
00:08:05,600 --> 00:08:09,080
皆が彼はもう鬼谷の混戦の中で
殺害されたと思っていたが

171
00:08:09,080 --> 00:08:12,040
五年の後 再び江湖に出てくるとは思わなかった

172
00:08:12,040 --> 00:08:14,160
誰を拝んで誰の門下になったのか

173
00:08:14,160 --> 00:08:17,360
その功夫は世間をあっと言わせたものだ……

174
00:08:19,960 --> 00:08:22,000
衆人:陸の若様が来たぞ

175
00:08:23,580 --> 00:08:26,480
張成嶺:あっ 陸兄

176
00:08:26,480 --> 00:08:28,160
陸天枢:成嶺?

177
00:08:28,160 --> 00:08:30,040
いつ来たんだい?

178
00:08:30,880 --> 00:08:32,640
張成嶺:私はこの地を通りかかっただけで
本来なら首を突っ込むべきではないのですが
 

179
00:08:32,640 --> 00:08:33,920
張成嶺:私はこの地を通りかかっただけで
本来なら首を突っ込むべきではないのですが
趙兄:えぇ? これは一体……

180
00:08:33,920 --> 00:08:34,760
張成嶺:私はこの地を通りかかっただけで
本来なら首を突っ込むべきではないのですが
呉兄:陸天枢 陸家の若様は

181
00:08:34,760 --> 00:08:35,400
張成嶺:今しがた江波亭でお宅に
何かあったと聞いたので
呉兄:陸天枢 陸家の若様は

182
00:08:35,400 --> 00:08:36,960
張成嶺:今しがた江波亭でお宅に
何かあったと聞いたので
呉兄:幼少より名師の門下に入り武を習い

183
00:08:36,960 --> 00:08:37,560
張成嶺:来てみたのです
呉兄:幼少より名師の門下に入り武を習い

184
00:08:37,560 --> 00:08:38,360
張成嶺:来てみたのです
呉兄:十八歳で師門を出た

185
00:08:38,360 --> 00:08:39,080
呉兄:十八歳で師門を出た

186
00:08:39,080 --> 00:08:40,080
家に戻って商売を引き継ぎまだ日は浅い

187
00:08:40,080 --> 00:08:41,080
張成嶺:陸兄に何かあれば
家に戻って商売を引き継ぎまだ日は浅い

188
00:08:41,080 --> 00:08:41,520
張成嶺:陸兄に何かあれば
 

189
00:08:41,520 --> 00:08:43,320
張成嶺:遠慮なく私に申し付けてください

190
00:08:43,320 --> 00:08:44,920
──陸天枢は非常に含蓄のある表情で笑った

191
00:08:44,920 --> 00:08:47,160
(陸天枢):昔 北の地で出会った頃は

192
00:08:47,160 --> 00:08:51,240
人を恐れるということを知らないノロジカと
この張成嶺を比べる者がいたが
(*狍君=ノロジカは一般的に馬鹿だと言われている)

193
00:08:51,240 --> 00:08:52,680
今はどうやら

194
00:08:52,680 --> 00:08:56,600
本当にどこかに困り事があれば
行って用聞きをしているようだ

195
00:08:56,600 --> 00:09:01,920
どんなものを与えればこんなに鈍い真の君子を
育て上げることができるのだろうか

196
00:09:02,680 --> 00:09:04,040
だが……

197
00:09:04,040 --> 00:09:05,600
一家の苦難を

198
00:09:05,600 --> 00:09:08,040
どうして他人に任せられようか……

199
00:09:08,760 --> 00:09:11,320
陸天枢:成嶺 感謝する

200
00:09:11,320 --> 00:09:13,480
しかし これは我が陸家の──

201
00:09:13,480 --> 00:09:15,520
張成嶺:あの日 陸兄が北海で私と飲み交わした時

202
00:09:15,520 --> 00:09:17,280
私とは 一見故の如しだと話していました

203
00:09:17,280 --> 00:09:20,000
機会があれば必ず姓の異なる兄弟となりましょうと

204
00:09:20,000 --> 00:09:24,200
兄弟である以上 陸兄に苦難があって
私はどうして知らない振りができますか?

205
00:09:25,000 --> 00:09:27,280
(陸天枢):この遊歴に出た際の話を

206
00:09:27,280 --> 00:09:29,280
彼は真に受けたのか……

207
00:09:31,400 --> 00:09:34,120
陸天枢:兄弟 その情けを受け取りこそしたが

208
00:09:34,120 --> 00:09:36,120
しかし……はぁ

209
00:09:36,120 --> 00:09:38,040
──陸員外は気性が荒く、挑発されずとも
自ら攻撃するほどであった

210
00:09:38,040 --> 00:09:40,320
陸天枢:この件は非常に好転し難いが

211
00:09:40,320 --> 00:09:43,800
その金花の旗は私を目の前にして
入り口に挿されていた

212
00:09:44,920 --> 00:09:47,440
だが意外にも私は 少しも察せなかった

213
00:09:47,440 --> 00:09:49,320
私も父親に質問したのだが

214
00:09:49,320 --> 00:09:51,160
無論 私がどんなに頼もうと

215
00:09:51,160 --> 00:09:53,840
父親も事の経緯を話そうとしない こんな……

216
00:09:53,840 --> 00:09:55,580
──金花銀花の旗に脅されるはずがなかった

217
00:09:55,580 --> 00:09:57,640
小姓:大若さま 早く出て来て見てくださいよ

218
00:09:57,640 --> 00:10:00,200
門前に頭に麻袋を被った人が大勢来てます!

219
00:10:00,200 --> 00:10:03,240
張成嶺:頭を麻袋で覆って
彼らは窒息死が怖くないのかな?

220
00:10:03,240 --> 00:10:05,320
小姓:若さま 旦那さまと
お嬢さまももう行きました

221
00:10:05,320 --> 00:10:06,200
陸天枢:何だって?!

222
00:10:06,200 --> 00:10:07,680
どうしてお嬢を見ておけなかったんだ

223
00:10:07,680 --> 00:10:09,040
早く見に行くぞ!

224
00:10:14,040 --> 00:10:18,400
──陸家荘の外には人だかりができ
塀の木の上でさえ天下が乱れないことだけを恐れる
豪傑たちが立っていた

225
00:10:18,400 --> 00:10:21,340
他人はやはり人の不幸には
喜びを抑えられないものである

226
00:10:21,340 --> 00:10:23,120
衆人:本当に何十人も来たとはな!

227
00:10:23,120 --> 00:10:26,520
四季荘はどうして金花刺繍の白絹で
顔を隠した男どもを使うんだ

228
00:10:26,520 --> 00:10:28,120
女々しいな

229
00:10:28,120 --> 00:10:30,080
先頭の黒衣の大男は

230
00:10:30,080 --> 00:10:33,280
かぶり笠と銅の面具を着けてるのが
却って少しまともに見える

231
00:10:35,480 --> 00:10:36,960
陸天枢:誰か

232
00:10:36,960 --> 00:10:38,280
お嬢を部屋に連れ戻せ

233
00:10:38,280 --> 00:10:39,520
下人:はい

234
00:10:39,680 --> 00:10:41,880
陸文玲(ルー・ウェンリェン):放しなさい

235
00:10:41,880 --> 00:10:45,200
私はこの蔵頭露尾の醜い化け物どもが
どんなものか見てやるのよ!

236
00:10:45,200 --> 00:10:47,600
あなたは関係ないでしょ……

237
00:10:47,600 --> 00:10:50,960
──女は父親に似ると言われるが、陸家の
お嬢さんにはその父の風格があった

238
00:10:50,960 --> 00:10:52,160
陸天枢:父上

239
00:10:52,160 --> 00:10:53,880
陸員外:うむ

240
00:10:53,960 --> 00:10:57,000
──金花の刺繍の白絹の男たちが京劇の
侍女たちのように黒衣の男を囲んでいた

241
00:10:57,000 --> 00:10:58,880
黒衣の男:陸童(ルー・トン)

242
00:10:58,880 --> 00:10:58,960
三十年ぶりだな

243
00:10:58,960 --> 00:11:00,200
衆人:陸童?
三十年ぶりだな

244
00:11:00,200 --> 00:11:00,280
三十年ぶりだな

245
00:11:00,280 --> 00:11:01,320
衆人:陸員外のことを呼んだのか?
三十年ぶりだな

246
00:11:01,320 --> 00:11:02,280
衆人:陸員外のことを呼んだのか?
黒衣の男:私をまだ覚えているか?

247
00:11:02,280 --> 00:11:02,400
衆人:陸員外は陸茂徳(ルー・マオドゥ)と
呼ばれてなかったか?
衆人:陸員外のことを呼んだのか?
黒衣の男:私をまだ覚えているか?

248
00:11:02,400 --> 00:11:03,160
衆人:陸員外は陸茂徳(ルー・マオドゥ)と
呼ばれてなかったか?
 
黒衣の男:私をまだ覚えているか?

249
00:11:03,160 --> 00:11:03,680
衆人:陸員外は陸茂徳(ルー・マオドゥ)と
呼ばれてなかったか?
衆人:まさか彼が鉄扇骨の陸童だと言うのか?!
 

250
00:11:03,680 --> 00:11:06,160
衆人:まさか彼が鉄扇骨の陸童だと言うのか?!
 

251
00:11:06,160 --> 00:11:06,560
誰なの?

252
00:11:06,560 --> 00:11:07,320
鉄扇骨の陸童
誰なの?

253
00:11:07,320 --> 00:11:08,520
鉄扇骨の陸童
 

254
00:11:08,520 --> 00:11:11,120
三十年前でもそこそこ有名だった

255
00:11:11,120 --> 00:11:15,240
残念ながら完全に台頭する前に 人前から姿を消した
(*销声匿迹=衆目を逃れ隠れる、鳴りを潜める)

256
00:11:17,840 --> 00:11:19,080
陸員外:李兄

257
00:11:19,080 --> 00:11:20,320
黒衣の男:ふん

258
00:11:20,320 --> 00:11:23,640
お前を困らせる孤独な幽霊たる
私をやはり覚えていたか

259
00:11:23,640 --> 00:11:26,680
ならば私が今 門前に来たのは

260
00:11:26,680 --> 00:11:28,320
なぜだか分かるか?

261
00:11:28,880 --> 00:11:30,160
──陸員外の顔色が悪くなった

262
00:11:32,160 --> 00:11:33,400
黒衣の男:諸君!

263
00:11:33,400 --> 00:11:39,720
三十年前 私と師弟は師父の命に従って
泰山派の黄老人の長寿を祝った

264
00:11:39,720 --> 00:11:43,520
帰りに この陸の盗人と泰山で知り合った

265
00:11:43,520 --> 00:11:45,480
その随行の婦人を見ると

266
00:11:45,480 --> 00:11:49,080
その夫人の顔色は青白く 中毒の兆しがあった

267
00:11:49,080 --> 00:11:52,760
我が師弟は幼き頃より名師に岐黄の術を習っており

268
00:11:52,760 --> 00:11:56,240
その年若き命が消えるのを見るに耐えず

269
00:11:56,240 --> 00:11:58,920
彼女の一命を救ったのだ

270
00:11:58,920 --> 00:12:00,240
陸員外:その通り

271
00:12:00,240 --> 00:12:02,280
師弟殿が家内の一命を救ってくださった

272
00:12:02,280 --> 00:12:04,520
この陸 感銘を受けました

273
00:12:04,520 --> 00:12:06,600
黒衣の男:感銘を受けた?

274
00:12:06,600 --> 00:12:07,320
ふん

275
00:12:07,320 --> 00:12:08,880
我らの目は節穴か

276
00:12:08,880 --> 00:12:12,800
お前とは一見故の如しで 酒を飲み夜を明かしたが

277
00:12:13,840 --> 00:12:19,160
酒が三巡したころ 私は油断して
うっかり天一閣令を見せてしまった

278
00:12:19,160 --> 00:12:21,200
衆人:えぇ 天一閣?

279
00:12:21,200 --> 00:12:25,920
この人はまさか 天一閣 現在の宗掌門の師兄か?

280
00:12:25,920 --> 00:12:27,080
間違いない

281
00:12:27,080 --> 00:12:30,200
若い頃 宗掌門は芸を携えて入門した
(*带艺从师=師門に入る前に他の武芸を習うこと)

282
00:12:30,200 --> 00:12:33,880
天一閣に弟子入りする前は
“蓑衣(さい)の薬郎”の弟子で

283
00:12:33,880 --> 00:12:36,600
当然ながら岐黄の術に精通していた
(*岐黄=漢方)

284
00:12:36,600 --> 00:12:37,960
黒衣の男:その通り

285
00:12:38,320 --> 00:12:41,440
私は当時の天一閣の弟子筆頭 李昂(リー・アン)

286
00:12:41,440 --> 00:12:43,800
現在の宗掌門の師兄だ

287
00:12:43,800 --> 00:12:46,560
当時師父の体調は悪化する一方で
(*每况愈下=状況がますます悪くなる)

288
00:12:46,560 --> 00:12:49,800
天一閣の令牌を私に引き継いだ

289
00:12:51,800 --> 00:12:53,360
衆人:この人 顔をどうしたんだ?

290
00:12:53,360 --> 00:12:54,600
顔の一部の肉がない どうして損ねたんだ?
 

291
00:12:54,600 --> 00:12:55,520
顔の一部の肉がない どうして損ねたんだ?
李昂:陸童は人の皮を被った獣(けだもの)

292
00:12:55,520 --> 00:12:56,120
李昂:陸童は人の皮を被った獣(けだもの)

293
00:12:56,120 --> 00:12:58,960
天一閣の令牌を見ると 悪心を起こした

294
00:12:58,960 --> 00:13:02,680
彼は酒に毒を入れると 我ら兄弟二人に飲ませた

295
00:13:02,680 --> 00:13:06,680
私は功力を全て失い 彼の一掌で
崖から突き落とされたのだ

296
00:13:13,120 --> 00:13:15,800
その崖の下には氷湖があり

297
00:13:15,800 --> 00:13:18,160
私は幸いにも生き残った

298
00:13:18,160 --> 00:13:20,600
たびたび毒が出て 辛く生きる欲を無くした時は
(*痛不欲生=見も世もなく悲しむこと)

299
00:13:20,600 --> 00:13:24,680
氷湖の寒潭に潜り 痛痒を止めたものだ

300
00:13:25,520 --> 00:13:29,000
今となってはもう三十年が過ぎ

301
00:13:29,000 --> 00:13:32,000
私もこのような姿になり果てた

302
00:13:32,000 --> 00:13:33,360
衆人:そんな事があったのか?

303
00:13:33,360 --> 00:13:35,200
陸員外も反論しないようだが これは黙認か?

304
00:13:35,200 --> 00:13:36,400
李昂:陸童

305
00:13:36,760 --> 00:13:39,640
聞いた話ではお前は若い頃
用心棒をするため家を出て

306
00:13:39,640 --> 00:13:42,800
あちこち渡り歩き かなり
威張り散らしていたらしいが?

307
00:13:42,800 --> 00:13:47,280
あの夜 お前に崖から突き落とされ 不当に
死に追いやられた幽霊を覚えておらぬか?

308
00:13:47,960 --> 00:13:51,480
お前は何ゆえ死んでおらんのだ?

309
00:13:51,960 --> 00:13:53,480
──陸員外の顔色は真っ青になった

310
00:13:56,640 --> 00:13:58,120
陸員外:そうだ

311
00:13:58,120 --> 00:13:59,920
そなたの言う通りだ

312
00:13:59,920 --> 00:14:01,800
私は確かに卑しい

313
00:14:01,800 --> 00:14:04,360
だが私の子供 天枢と文玲は無実だ

314
00:14:04,360 --> 00:14:08,680
私がここで自刎すれば 彼らの
生き残る道を残してやるべきだ

315
00:14:09,000 --> 00:14:10,440
陸天枢:父上!

316
00:14:11,040 --> 00:14:14,720
金花の覆面の頭領:陸員外 お前の勝手にはできぬぞ

317
00:14:15,600 --> 00:14:20,080
衆人:この四季荘の頭領は何をするつもりだ?

318
00:14:20,080 --> 00:14:21,720
金花の覆面の頭領:捕らえよ!

319
00:14:23,120 --> 00:14:24,680
張成嶺:待て!

320
00:14:24,900 --> 00:14:27,360
──陸天枢が振り向くと、群衆を越えて
出てきた彼を数十人が一斉に取り囲んだ

321
00:14:27,360 --> 00:14:29,360
陸員外:こちらの少侠は?

322
00:14:29,880 --> 00:14:31,400
張成嶺:陸おじ上

323
00:14:31,400 --> 00:14:33,480
私と陸公子には予てより親交があります

324
00:14:33,480 --> 00:14:34,720
部外者ではありますが

325
00:14:34,720 --> 00:14:37,680
今この時 話を聞いた上で
厚かましくも一言申さずにはおれません

326
00:14:38,040 --> 00:14:41,240
私は書を読むのは苦手で
道理とは何かを説明できませんが

327
00:14:41,240 --> 00:14:43,800
一人の人としてなすべきことを知っています

328
00:14:43,840 --> 00:14:46,120
たとえ陸おじ上がまことに有罪だったとしても

329
00:14:46,120 --> 00:14:48,400
よもや連座の道理まであるのでしょうか?

330
00:14:48,400 --> 00:14:49,800
大不敬なことを言ったとて
(*大不敬=皇族への不敬)

331
00:14:49,800 --> 00:14:51,280
たとえ現皇帝であっても

332
00:14:51,280 --> 00:14:53,760
一族郎党みな誅殺するような道理があるのかどうか

333
00:14:53,880 --> 00:14:56,680
ましてや 彼が本当に卑劣で恥知らずな輩であるなら

334
00:14:56,680 --> 00:14:58,000
どうしてあなたの一言に苦しんで……

335
00:14:58,000 --> 00:15:00,760
陸員外:賢甥 感謝する

336
00:15:00,760 --> 00:15:04,200
この件は私がけじめを付けねば!

337
00:15:04,200 --> 00:15:05,720
張成嶺:ダメです──

338
00:15:05,720 --> 00:15:07,340
──陸員外は懐から鉄骨扇を取り出し
天蓋に打ち込もうとした

339
00:15:07,340 --> 00:15:10,080
彼が身を躍らせて背中に触れると
重剣が鞘から出て、他愛なく鉄骨扇を開いた

340
00:15:10,080 --> 00:15:11,020
金花の覆面の頭領:かかれ!

341
00:15:11,020 --> 00:15:12,000
覆面の者たち:はっ!

342
00:15:12,000 --> 00:15:13,320
張成嶺:ハァッ!

343
00:15:13,320 --> 00:15:19,480
──張成嶺は身を屈めて手にした剣を回すと
頭上から飛びかかってきた覆面の男たちの武器を
まとめて背後で受け止め、全部弾き返した

344
00:15:19,480 --> 00:15:21,040
覆面の者たち:うあぁぁ──

345
00:15:21,040 --> 00:15:22,600
──陸家荘の門前に広い空間ができた

346
00:15:22,600 --> 00:15:25,160
張成嶺は一方で多数の敵と対峙し、一方で
陸員外が自害しないよう気を付けた

347
00:15:25,160 --> 00:15:27,440
張成嶺:おじ上 絶対ダメです──

348
00:15:28,220 --> 00:15:29,880
──張成嶺は徐ろに目を輝かせた

349
00:15:29,880 --> 00:15:31,560
張成嶺:温前輩?

350
00:15:31,560 --> 00:15:33,800
彼も師父と来たのか!

351
00:15:34,720 --> 00:15:36,200
衆人:これは呼笛の音か?

352
00:15:36,200 --> 00:15:37,720
いいや これは古怪の調べだ

353
00:15:37,720 --> 00:15:39,680
少し油断をすれば精神が不穏になるぞ!

354
00:15:39,680 --> 00:15:40,680
意識をしっかり!

355
00:15:40,680 --> 00:15:42,760
気をつけろ 魔に魅入られるな!

356
00:15:42,760 --> 00:15:44,320
あそこの二人だ!

357
00:15:45,120 --> 00:15:48,600
──衆人は、遠くから二人の男が
肩を並べて歩いてくるのを見た

358
00:15:48,600 --> 00:15:54,920
どちらも細くしなやかで、目元に笑みを
浮かべる男は紅の長袍を着て、もう一人は黒袍で
表情は少し冷たく両手を後ろで組んでいた

359
00:15:55,760 --> 00:15:57,160
紅衣の男:ねえ

360
00:15:57,160 --> 00:15:58,200
聞いた話では

361
00:15:58,200 --> 00:16:03,080
あなたたちのところの旦那方は よそのお宅を
どうだこうだと八卦見するのが好きなのですね

362
00:16:03,080 --> 00:16:04,520
教えてください

363
00:16:04,560 --> 00:16:09,000
四季荘の金花の旗はどんな奇談を求めてるんです?

364
00:16:10,080 --> 00:16:12,480
黒袍の男:たとえ四季荘が大成しておらずとも

365
00:16:12,480 --> 00:16:14,440
顔にオシメを巻く趣味はなかった

366
00:16:14,440 --> 00:16:16,000
金花の覆面の頭領:貴様──

367
00:16:18,160 --> 00:16:20,640
閣下は何処の者か言うてみよ

368
00:16:21,240 --> 00:16:25,160
──黒袍の男はあっという間に相手に近づいて
金花の布を掴み取ると、蝉の羽根のように薄い
何の変哲もない中年男の人皮面具を剥がした

369
00:16:25,160 --> 00:16:28,560
黒袍の男:この程度でも易容と称せるのか?

370
00:16:28,560 --> 00:16:30,200
それでも四季荘か?

371
00:16:30,200 --> 00:16:31,720
衆人:この人の功夫はなんてすごいんだ

372
00:16:31,720 --> 00:16:33,160
一瞬であの頭領の易容を剥がしたぞ

373
00:16:33,160 --> 00:16:34,040
易容の人の喉のところ見てよ
一瞬であの頭領の易容を剥がしたぞ

374
00:16:34,040 --> 00:16:34,760
易容の人の喉のところ見てよ
 

375
00:16:34,760 --> 00:16:36,760
小さな磁石があるわよ

376
00:16:36,760 --> 00:16:38,680
話によると声を変えられるらしいわ

377
00:16:38,680 --> 00:16:39,960
しかし何のためにこんな苦心して易容するのか
話によると声を変えられるらしいわ

378
00:16:39,960 --> 00:16:41,600
しかし何のためにこんな苦心して易容するのか
 

379
00:16:41,600 --> 00:16:42,640
しかし何のためにこんな苦心して易容するのか
彼は四季荘の人じゃないのか?

380
00:16:42,640 --> 00:16:43,080
その人はこの人が四季荘の者に
相応しくないって言ったか?
彼は四季荘の人じゃないのか?

381
00:16:43,080 --> 00:16:45,000
その人はこの人が四季荘の者に
相応しくないって言ったか?
 

382
00:16:45,000 --> 00:16:45,880
どういう事だ?
 

383
00:16:45,880 --> 00:16:46,240
どういう事だ?
金花の覆面の頭領:貴様──

384
00:16:46,240 --> 00:16:47,320
金花の覆面の頭領:貴様──

385
00:16:47,320 --> 00:16:49,880
──その男はとっさに逃げようとしたが
李昂に引き止められた

386
00:16:49,880 --> 00:16:52,560
李昂:宗師弟? どうしてお前が?!

387
00:16:52,680 --> 00:16:53,720
衆人:宗掌門──

388
00:16:53,720 --> 00:16:54,320
天一閣の現掌門か?
衆人:宗掌門──

389
00:16:54,320 --> 00:16:55,120
天一閣の現掌門か?
本当に彼か?!

390
00:16:55,120 --> 00:16:56,680
この四季荘はやはり本当に偽物なのか?!
本当に彼か?!

391
00:16:56,680 --> 00:16:57,520
この四季荘はやはり本当に偽物なのか?!
 

392
00:16:57,520 --> 00:16:58,120
この四季荘はやはり本当に偽物なのか?!
宗掌門は何のためにこんなことを?

393
00:16:58,120 --> 00:16:58,960
まさかまだ何か別の事情が?
宗掌門は何のためにこんなことを?

394
00:16:58,960 --> 00:16:59,560
まさかまだ何か別の事情が?
 

395
00:16:59,560 --> 00:16:59,800
まさかまだ何か別の事情が?
紅衣の男:やぁ

396
00:16:59,800 --> 00:17:00,520
紅衣の男:やぁ

397
00:17:00,960 --> 00:17:03,200
そこの全身黒い服の真っ黒さん

398
00:17:03,200 --> 00:17:05,440
あなたの頭には穴が空いてるんです?

399
00:17:05,440 --> 00:17:08,440
他人があなたたち天一閣の
令牌を奪ってどうするんです?

400
00:17:08,440 --> 00:17:10,440
タダでくれても全然いりません

401
00:17:10,440 --> 00:17:14,480
この類の事は内部の者がやったと
お子さまでも分かる

402
00:17:14,480 --> 00:17:18,160
あなたの調査を四季荘の人に手伝わせるのに
師弟を探しに行かせたのでは?

403
00:17:18,360 --> 00:17:20,400
だからですね……

404
00:17:20,560 --> 00:17:21,920
あなたは

405
00:17:22,560 --> 00:17:24,280
人に殺されたのではなく

406
00:17:24,280 --> 00:17:26,320
人にバカにされたんです

407
00:17:26,520 --> 00:17:29,080
李昂:ならば陸童はどうして認めたのだ!

408
00:17:29,080 --> 00:17:30,480
彼が害したのは明らかではないか

409
00:17:30,480 --> 00:17:32,720
彼は何ゆえ宗師弟の処罰を受け入れたのだ!

410
00:17:33,640 --> 00:17:37,000
紅衣の男:なぜならこの宗という人は
彼の妻を助けたからですよ

411
00:17:37,000 --> 00:17:38,440
──彼は意味ありげに黒袍の男の体に目をやった

412
00:17:38,440 --> 00:17:40,880
紅衣の男:もし私の妻が重病なら

413
00:17:40,880 --> 00:17:42,760
彼を助けてくれる人がいれば

414
00:17:42,760 --> 00:17:46,080
私もその人のために水火も辞さないでしょう

415
00:17:46,080 --> 00:17:49,400
ましてや身代わりになるなら
なおさらじゃないですか

416
00:17:49,400 --> 00:17:51,640
阿絮 どう思う?

417
00:17:51,720 --> 00:17:53,120
黒袍の男:バカバカしい

418
00:17:53,560 --> 00:17:55,000
まだ行かないのか?

419
00:17:55,840 --> 00:17:57,280
紅衣の男:ほら坊主

420
00:17:57,280 --> 00:17:59,040
一家の主が言ったんだから

421
00:17:59,040 --> 00:18:00,000
さっさと行くよ

422
00:18:00,000 --> 00:18:00,840
張成嶺:はい

423
00:18:01,600 --> 00:18:03,320
陸兄 またお会いしましょう!

424
00:18:03,320 --> 00:18:04,560
陸天枢:成嶺──

425
00:18:05,400 --> 00:18:07,960
衆人:全く急転直下な話だな

426
00:18:07,960 --> 00:18:10,840
その……それで陸員外は宗掌門の罪を問うのか?

427
00:18:10,840 --> 00:18:13,640
なら李昂は間違った人を恨んでたんじゃないか?

428
00:18:13,640 --> 00:18:14,240
全くでかい戦いを見てしまったな

429
00:18:14,240 --> 00:18:15,440
男:周……周荘主?
全くでかい戦いを見てしまったな

430
00:18:15,440 --> 00:18:17,240
男:周……周荘主?
 

431
00:18:20,080 --> 00:18:23,840
──彼は猛然と追いかけた

432
00:18:24,240 --> 00:18:28,960
(男):当時 荘主は老畢に
七竅三秋釘を打ち入れ二日目に出て行った

433
00:18:28,960 --> 00:18:30,960
あれは本当に荘主だったのか?

434
00:18:30,960 --> 00:18:32,720
彼は無事なのか?

435
00:18:32,720 --> 00:18:36,840
まさか本当に七竅三秋釘から
生き残れる者がいるのか?

436
00:18:36,840 --> 00:18:38,200
もしや

437
00:18:38,200 --> 00:18:40,280
もし彼の話が……

438
00:18:40,920 --> 00:18:47,200
──男は天窗に入ったばかりだった当時
一見すると上品な書生のような周荘主に
会ったことをぼんやりと思い出した

439
00:18:47,200 --> 00:18:48,880
男:荘主

440
00:18:52,040 --> 00:18:54,000
周子舒:お前は新しく天窗に入った者か?

441
00:18:54,000 --> 00:18:55,160
男:はい

442
00:18:55,760 --> 00:18:57,280
ならば覚えておけ

443
00:18:57,720 --> 00:18:59,560
これからは私を荘主と呼ぶんじゃない

444
00:18:59,560 --> 00:19:01,360
私はとうに荘主などではなくなった

445
00:19:01,680 --> 00:19:05,160
今後は私を周大人と呼ぶべきだ

446
00:19:05,160 --> 00:19:07,760
男:はい 周大人

447
00:19:09,640 --> 00:19:13,360
──彼は頭を振って、その足取りを探すのをやめ
自分の任務に戻った

448
00:19:17,800 --> 00:19:19,360
(男):……まあいい

449
00:19:19,360 --> 00:19:21,320
探し出して一体何になる?

450
00:19:21,320 --> 00:19:23,120
天窗を出て行った人が

451
00:19:23,120 --> 00:19:25,480
また戻って来るとでもいうのか?

452
00:19:25,480 --> 00:19:27,480
それに先ほど見た通り

453
00:19:27,480 --> 00:19:30,480
彼は天窗にいた当時より
どれだけ快適か分からないのに

454
00:19:30,480 --> 00:19:32,600
何をする必要があるのか……

455
00:19:36,360 --> 00:19:37,360
講談師:やあ

456
00:19:37,360 --> 00:19:40,080
公子は講談を聞きに来られたのかな?

457
00:19:40,080 --> 00:19:40,840
男:私は……
公子は講談を聞きに来られたのかな?

458
00:19:40,840 --> 00:19:41,080
男:私は……
 

459
00:19:41,080 --> 00:19:41,360
男:私は……
講談師:今したが仕舞ったところだ

460
00:19:41,360 --> 00:19:42,720
講談師:今したが仕舞ったところだ

461
00:19:42,720 --> 00:19:45,120
明日は早うお出でなされ

462
00:19:45,920 --> 00:19:47,600
はぁ

463
00:19:47,720 --> 00:19:49,880
江湖は紛擾し

464
00:19:49,880 --> 00:19:52,400
穹音(きゅういん)嫋々(じょうじょう)として

465
00:19:52,400 --> 00:19:57,520
もはや いきさつを弁明せずなり──

466
00:20:22,860 --> 00:20:25,060
“这人间困境几何”
(この世に苦境 幾ばくか)

467
00:20:25,060 --> 00:20:28,740
“得超脱又几个”
(逃れ得るのは幾人か)

468
00:20:28,740 --> 00:20:31,900
“如敢以生死来涉”
(敢えて生死を賭けたれば)

469
00:20:31,900 --> 00:20:34,980
“孑然是天涯客”
(それは独りの天涯客)

470
00:20:34,980 --> 00:20:38,460
“谁辞别庙堂 醉山河”
(廟堂を離れ 山河に酔う人が)

471
00:20:38,460 --> 00:20:41,380
“沐得天光赏春色”
(天光浴びて 春色を味わえば)

472
00:20:41,380 --> 00:20:48,260
“欲做闲云鹤 偏又生纠葛”
(たゆたう雲間の鶴ならんとも しがらみまた生じる)

473
00:20:48,340 --> 00:20:51,380
“飞絮身 偏走黄泉路”
(身を飛絮として 黄泉路を進めば)

474
00:20:51,380 --> 00:20:54,820
“看尽英雄嗔癫群鬼舞”
(英雄は尽き憤懣の群鬼が舞うを見る)

475
00:20:54,820 --> 00:20:57,860
“黑白错 风崖起疑雾”
(黒白違えて 風崖に疑いの霧は立ち)

476
00:20:57,860 --> 00:21:01,260
“妙手设局待谁入”
(妙手の罠に誰かが嵌まれば)

477
00:21:01,260 --> 00:21:07,380
“六合渺渺 纵是无觅处”
(六合は遙か たとえ行くあてなくとも)

478
00:21:07,380 --> 00:21:14,260
“携酒来 拔剑去 自有归宿”
(酒を携え来て 剣を抜いて行く 帰る宿がある)

479
00:21:40,580 --> 00:21:42,940
“正邪道人心叵测”
(正邪で人心は測れず)

480
00:21:42,940 --> 00:21:46,340
“甘苦自取自舍”
(甘苦を自ら選び取り)

481
00:21:46,340 --> 00:21:49,780
“遇知己明眸澈澈”
(巡り合った知己の瞳は明澄にして)

482
00:21:49,780 --> 00:21:52,820
“如举灯过渊泽”
(灯を掲げ沢の淵を渡るなら)

483
00:21:52,820 --> 00:21:56,220
“谁以鬼行世 恨善恶”
(世を行く鬼として 善悪を恨む誰かの)

484
00:21:56,220 --> 00:21:59,100
“红袍褪身识得”
(紅い袍を落とせば見える)

485
00:21:59,100 --> 00:22:05,900
“一眼竟万年 情痴终不赦”
(一眼万年の恋情 ついぞ赦されることなし)

486
00:22:05,980 --> 00:22:08,980
“飞絮身 偏走黄泉路”
(身を飛絮として 黄泉路を進めば)

487
00:22:08,980 --> 00:22:12,420
“看尽英雄嗔癫群鬼舞”
(英雄は尽き憤懣の群鬼が舞うを見る)

488
00:22:12,420 --> 00:22:15,540
“黑白错 风崖起疑雾”
(黒白違えて 風崖に疑いの霧は立ち)

489
00:22:15,540 --> 00:22:19,140
“妙手设局待谁入”
(妙手の罠に誰かが嵌まれば)

490
00:22:19,140 --> 00:22:25,060
“六合渺渺 纵是无觅处”
(六合は遙か たとえ行くあてなくとも)

491
00:22:25,060 --> 00:22:31,420
“携酒来 拔剑去 自有归宿”
(酒を携え来て 剣を抜いて行く 帰る宿がある)

492
00:22:31,860 --> 00:22:35,060
“天欲晚 风雪袭巴蜀”
(天は暗く 風雪が巴蜀を襲う)

493
00:22:35,060 --> 00:22:38,500
“何幸借这温存 不孤独”
(この温もりを口実に孤独でない幸運)

494
00:22:38,500 --> 00:22:41,460
“问余生 怎舍好眉目”
(余生に問う 眉目の好しを)

495
00:22:41,460 --> 00:22:45,020
“三秋如梦也愿赴”
(三秋の夢の願いを手放せるのかを)

496
00:22:45,020 --> 00:22:51,220
“六合渺渺 自有自在处”
(六合遙かに 己の居場所があれば)

497
00:22:51,220 --> 00:22:57,900
“竹林响 忘沉浮 寻光欲渡”
(竹林は響き 浮沈を忘れ 光を求め渡らん)






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