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「悲しき60才」と森山加代子

少し前の事になるけど、森山加代子さんが亡くなった。亡くなったとき、すぐに思い浮かんだのが「悲しき60才」という映画だった。

その時、この映画の事を書いておきたいと思ったので、そんな映画を久しぶりに見直してみる。

ウィキペディアで調べると森山加代子は何本もの映画に出ていて、「黒い十人の女」とか、見た記憶のある映画も数本あったけど、申し訳ないけど、まったく印象にない。

「悲しき60才」という映画がすごくイイ映画かと言われると、素直にハイとは言えない出来の悪い映画だけど、出来の悪さが魅力的でもある。

この映画1961年製作で、今、見直してみると、60才という年齢の描き方に、すごく違和感を覚える。

「悲しき60才」の歌詞そのものが、{奴隷の娘を好きになり、彼女を買うために一生懸命働いていたら60才になっていた}という話だ。

そして映画の中で60才に扮した坂本九と森山加代子は、今のイメージだと90才ぐらいに思える。

どちらにしろ1961年の60才のイメージは、死にそうなほどの年寄りだったのだろう。

映画の中で60才になった坂本九も、おにぎりを食べていて入れ歯がはずれ、その入れ歯がのどに詰まって死んでしまうという設定だ。

映画は天国の入り口で、生き返らせて欲しいと言う坂本九に、ちょうど死にそうな若者がいるから、その若者として生き返るか、と問われ、その若者の人生を垣間見る事になる、この若者も坂本九で、オーソドックスな一人二役である。

そして、ここから歌謡映画になってゆく。

坂本九はタイトルの「悲しき60才」と「九ちゃんのズンタタッタ」「ステキなタイミング」の3曲が入り、

森山加代子はタイトルがわからない1曲と「じんじろげ」の2曲。

ジェリー藤尾が「悲しきインディアン」渡辺トモ子が「いとしのクレメンタイン」ダニー飯田とパラダイス・キングが「それが悩みさ」

それらの音楽が流れる。

この映画の森山加代子は魅力的だ、雑に作られた映画の中で光っている。こういう時に映画はいいなと思う。

森山加代子の輝いていた時代が残されている、それを60年近くたっても見る事が出来る。

もちろん、森山加代子はこの時代だけで終った人ではないけど、デビューしたばかりの若々しい姿は、誰でもどんどん失われていく。

そんな中、歌謡映画が1本でも残された事は幸せだと思う。

坂本九は日活で「上を向いて歩こう」という大ヒット曲をタイトルにもつ映画があるにもかかわらず、「上を向いて歩こう」は歌謡映画ではない。

大映の「悲しき60才」は坂本九の歌謡映画でもあるけど、森山加代子の歌謡映画でもある。

下に貼り付けた動画の1曲目は映画「悲しき60才」の中で「じんじろげ」を歌う森山加代子の姿だ、訳のわからない映像に、口パクも合ってるような、まったく合ってないような・・・でも、それが魅力だと思うしかない。

言っちゃなんだけど、なんでこんな歌がヒットしたのか理解出来ない。




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