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深セン発スタートアップのイヤホン型AI翻訳機タイムケトルの実態

はじめに

中国のシリコンバレーと呼ばれる深セン。
ソフトウェアというよりハードウェアの部品、エンジニア、起業家、そして投資家、謂わばヒト・モノ・カネ情報がすぐに集まる環境が整っている、というのが実態の背景と言えます。

私が個人的に注目、もしくは応援という方が適切かもしれませんが、気になっている企業の1つが深セン発スタートアップのタイムケトル。
中国語では、「时空壶」と書きます。
深センスタートアップさながらのハードとソフト両方開発しています。

時空の壺、とは響きがかっこよく、今と未来を繋いでくれる世界が社名から感じとることができますね。
というか、ドラえもんのアイテムみたい。

今市場に出しているプロダクトはタイトルの通りイヤホン型AI翻訳機で、WT2 Plusと呼ばれています。
WTとはWearable Translatorの略称です。

最近メディアでも取り上げられることが多くなっているのと、私の知人がタイムケトルのマーケティングを担当していることもあり、今回はご紹介できればと思い執筆しています。

タイムケトルとはどのような会社?

タイムケトル創業者田力(リール)は、2010年電子科学大学から卒業後、HUAWEIにてマーケティング、プロダクトマネジメントを担当。
HUAWEI在籍時代、総裁賞及びゴールドメダル賞受賞(当時最年少受賞)。
その後、Makeblock国内兼国外市場の責任者を歴任し、2016年10月、Timekettle Technologiesを創立。
2017年10月、Kickstarterにて約3000万円(日本円換算)、2018年6月Makuakeでは約980万円の支援を獲得。2018年12月に二世代目の「WT2Plus」の販売を開始。
WT2Plusは、2018グッドデザイン賞, 2018 iF Design、2019 CES Innovation Awardなど、国際的な賞を受賞しています。

「WT2 Plus」「ZERO」など、人工知能とハードウェア技術を組み合わせ、最先端の技術と革新的なデザインを統合したAI翻訳機を開発し、翻訳機のNo.1ブランドを目指しています。

世界に12カ国拠点を設けており、各国で販売していて、ニューヨーク・タイムズやBBC、TechCrunchで取り上げられ、一時期問い合わせが相次いだと言われています。

ただ、日本ではあまりメディア露出をしないことで有名ですが、これから日本でも多数のメディアで取り上げられることは間違いないでしょう。

最近めざましTVにも紹介がされていたので、Youtube動画を貼り付けておきます。

日本の翻訳機の市場

日本では明石家さんまさんでお馴染みのポケトークの一人勝ちで、市場の95%を牛耳っています。
おそらく、翻訳機の日本市場は100億から200億円(正しいデータが見つからなかったのでポケトークの単価と年間販売台数予測で概算)くらいですが、これからも市場規模は緩やかながら伸びていきます。

日本で翻訳機が必要とされる背景としては下記が挙げられます。

・東京オリンピックにおける外国語ニーズ
・大阪万博時の外国語ニーズ
・日本の労働人口減少に伴う外国人労働者の増加


また、昨年深セン企業のLangogoも日本に進出したばかりです。
こちらの企業はストリーミング翻訳技術を採用し、翻訳速度はわずか1秒程度。
サーバーは、アメリカ、フランス、香港、日本の4カ所に設置されているので、一番近いサーバーへ接続することでレスポンスが早いようです。

中国の翻訳機の市場

中国でも翻訳機のマーケットは年々伸びています。
2018年時点で中国人の海外旅行客の70%は団体旅行ですが、今後は個人旅行の比率が高まっていき、それと同時に翻訳機のニーズは高まります。
2020年では561億元の市場規模と予測されており、日本円でいうと1兆円弱の規模で夢のあるマーケットですね。

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中国で翻訳機の有名な企業は、中国4大AI企業の1つのiFlyTek(アイフライテック)で、他にも搜狗sogou、准儿、有道翻译蛋、途鸽、猎豹、全语通DOSMONO、纽曼Newsmy、魔芋、逸豆など、私も知らない隠れ企業が沢山存在しています。

もっと詳しく知りたい方は、下記の中国国内翻訳機ランキングTOP10をご参照ください。

WT2 Plusのデザインは他の翻訳機と大きく異なりクール

肝心なプロダクトの見た目とは?
昔のガラケーのような形をした翻訳機と大きく異なり、イヤフォン型の翻訳機となっています。
しかも、イヤフォンが2つあり、自分と相手の二人で片方ずつ使用することが想定されています(後ほど説明)。

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雪見だいふくを2つに割ったような形をしている白いケースは充電器です。
AirPodsを利用している方ならわかるかと思いますが、使っていない間はこちらに格納して充電できます。

1度で5時間利用することができ、ケースを使えば2-3回は充電して利用可能です。
ずっと通訳をするわけではないので、1日2日は十分に利用できそうですね。

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実際のアプリの画面

現在春節が始まっているので、それに絡めた会話を一人二役で中国語と日本語を翻訳してみました(翻訳機で遊んでくれる友達欲しい)。
その際のアプリの画面は下記の通り。

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最近登場した新単語の「新型コロナウイルス」もバッチリ翻訳をしているので仮に現地でウイルス感染したとしてもこの翻訳機を使えばコミュニケーションを取れそうです。

ただ私の日本語の発音のせいか、「苦ではありません」が「ヘクタールありません」と認識されてしまったので、ハキハキと話してみてください。

今回使ったのは、Simul Mode(同時通訳モード)で、ハンズフリーで双方が話したことは即時に翻訳されますが、騒がしい環境下では周りの雑音も拾ってしまうというデメリットがあります。

そのため、Touch Mode(タッチモード)に切り替えれば、翻訳機をタッチすることで、イヤフォン内に搭載されたイヤフォンセンサーが上記デメリットを解決してくれます。

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Simul ModeとTouch Mode以外に、Speaker Modeがあります。
これは1人は翻訳機を耳にかけ、もうひとりはスマホに向かって話しかけたり、読み上げられた翻訳内容を聞いたりすることで会話が成立します。

「他人が使ったイヤホンを自分にかけるのはちょっと...」

と感じてしまう潔癖症の方にはありがたい機能ですね。

スマホのスペック次第では最大6人まで同時使用で翻訳が成立します。
今年の6月までには通信環境がなくても翻訳できるオフラインモードが搭載される予定みたいです。
ソフトウェア企業でもあるので、新しい言語や機能がアップデートすることで追加できるのも魅力の1つ。

今日本で販売されている翻訳機はこちらです。
詳しくはAmazonページに記載されているので御覧ください!

私が管理人を務めるリバ邸深センにもデモ機が置いているので、深センに来られた方には無料で貸し出しを行っているので是非試しに使ってみてください!
尚、2年以内に発売されたスマホなら問題ないと思いますが、下記のOSじゃないと作動しない可能性があります。
iOS:11.0以降
Android:7.0以降

また、Appleのアプリストアを見てみると、毎月のようにアップデートを行っているので、随時対応言語が増えています。

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タイムケトルの日本進出

タイムケトルは2020年に日本に進出予定で、いま着実に準備を進めています。
ポケトーク、Langogoも深センで生産している翻訳機の会社で、日本で深センの会社が戦うのは観物です。
日本市場の概況としては依然としてポケトークがマーケットシェアの9割以上を占めていることから、苦戦することは予想が付きます。
空港や家電量販店を完全に抑えている牙城ポケトークをどのように攻略していくのか楽しみです。

終わりに

「AIが通訳者や翻訳者の仕事を奪う」

と言われて久しいですが、本当にそうなんでしょうか?
今の所日本語の特異性もあって、翻訳機や翻訳ツールで完璧な翻訳を行うことは極めて難しいです。

たとえ日本語の音声のビッグデータを回収してもわからないのは日本語の微妙なニュアンスやハイコンテキストな会話で、生身の人間ですら理解できないことばかりなのに、翻訳機がそれを超えていくというのはなかなか想像できません。
そのため、人間が翻訳機が一歩歩み寄った使い方が求められます。

「AIとは現状人間の補助」

という位置づけというのが私の考え方なので、翻訳機も海外旅行や仕事における補助機能としてうまく活用していけば日本の外国語問題の解決の糸口になると感じます。

東京オリンピックや外国人労働者の増加に伴って言語の壁は以前として課題なので、翻訳機をきっかけに勉強してみると良いですね。
では、日本の言語学習に幸あれ!


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