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野球部の坊主頭について

近年では少しずつ坊主頭で統一しない野球部も増えています。

私個人の意見としては、坊主頭の強制は無くなるべきと考えています。

ただ、ここで現環境や高校野球に蔓延る価値観をただ否定するだけでは建設的な議論になりません。

なぜ坊主は強制されるべきでないか
・坊主に統一することのメリット

この2点を明確にし、私個人の意見を述べたいと思います。

なぜ坊主は強制されるべきでないか

①参加ハードルを下げるため

非常にシンプルな話で、
募集において必須条件が多ければ多いほど募集人数の分母は小さくなります。

企業が採用の募集をかけたりバイトの求人を出す際に
「年齢不問」「学歴不問」
とする方が当然応募数は増えやすく、
「○○市在住の方のみ」「男性のみ」「30歳以下のみ」「経験者のみ」
というように条件を増やすほど、応募数は減ります。
当たり前の話ですね。


では企業は何故求人に必要条件を組み入れるのでしょうか?

これも単純な話で、それによって応募者のスクリーニングをかけています。

企業として求める人物像が明確である為、そこに値しない人物が応募してきたところで時間と労力の無駄になる。
従って必要条件に満たない人からの応募がないようにしているだけのことです。至極合理的です。


では、野球部でいう「坊主頭の統一」というのは、ある意味一つの企業の求人における「必要条件」のようなものでした。
つまり、
「頭を丸める覚悟もない奴が高校野球の世界に入ってくるな」

という暗黙のメッセージ、求める人物像があったということです。

そのスクリーニングを潜り抜けた根性のある人間を鍛え上げ勝利を狙う。
これはトップダウン構造の組織をつくりたい指導者側のニーズにも合致してしまう為、この坊主頭強制というのは長らく続いているのだと感じています。

ただ、目下野球人口減少の話も出ている中で未だに坊主頭の文化が蔓延っているのは、

まるで、自社の人材不足に嘆く経営者が
「業界経験者のみ、早慶卒以上のみ、○○資格保有者のみ、35歳以上は応募不可、男性のみ、・・・・」
というめちゃくちゃ高望みした求人を出しているようなものです。

結論、野球がこれからスポーツを始める子たちに選ばれるに当たって、余計な必要条件は削除するべきです。
ただ一方で、
その子たちを抱える指導者側が、「なんとなく気軽に野球を始めてみました」というスタンスの子を受け入れられるだけのキャパシティがないと不可能な話です。

坊主頭の統一というのは、古いしきたりはさっさと無くせという論だけでは進みません。指導者側のマインドセットの転換も同時でないと難しいのです。

②坊主頭は坊主頭同士で群れやすくなる

経験則上、坊主頭は坊主頭同士で群れます。
坊主以外にも、見た目が同じであることはその組織に対する帰属意識を高める傾向があるように思います。

これは心理学的な分野の話でしょう。
ただ、私はそういった分野を専門で勉強したことがあるわけではないので、あくまで経験則的な意見です。

私自身、高校球児で坊主頭だった頃は、同じ野球部の坊主頭の人間と群れを作っていました。
そして私が所属した早稲田大学野球部では、オフの月曜日以外は学ランで大学の授業を受けなければいけない為、意識的にか無意識的にか同じ学ランの人(同じ授業を取っている部内の人間)と行動を共にしていた記憶です。

これは教員として勤務していた時にも感じていたことで、
野球部やチアリーディング部(髪型がポニーテールで統一)の子は、
部活以外の時間でも同じ部の子と行動を共にする傾向が強いなと感じていました。
勿論例外の子も沢山いましたが。

その観点で考えた時に、髪型や見た目を統一するというのは、
広い価値観や学びを得る上での機会損失を生みます。

他競技に取組む人やスポーツに興味のない人がどんな考え方・価値観を持っているのか。
こういった学びの場になり得る場が坊主頭による帰属意識のせいで失われている可能性があるとしたら、やはり坊主の強制は無くなるべきだと思います。


坊主に統一することのメリット


ここまでの話を雑に纏めると、
坊主で統一することは、野球部の組織運営において都合がいい場合がある

といえます。

それを仮に有効活用していくとすれば、
一般学生の風紀が乱れているような教育困難校が野球部の強化を掲げる場合。
野球部のルールや野球部の価値観に寄せていき部外からの悪影響を減らす策として坊主頭で差別化するというのは有効になり得ると思います。

また、野球の競技特性上、育成よりも勝利(特にトーナメント)を優先する場合においては、
全体の統率がより重要にもなる為、結果坊主であることが良いと考えるのは論としては破綻していません。


まとめ

・野球側が人を選ぶのではなく、人に野球を選んでもらう意識
・トップダウンに偏重しない組織づくり
・勝利ではなく育成を優先する指導価値観
・野球以外の価値観に触れていき多様性を養う

この辺りが並行して進んでいくことで、結果として坊主頭の強制というのは自然になくなるものでしょう。

先進的なチーム・指導者がモデルケースとなって、野球界の常識が少しずつでも良化していってほしいですね。

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