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SUPER GTの環境対応ロードマップに則り、タイヤ持込セット数を1セット減少



不順な天候に翻弄された開幕戦とは一転し、好天に恵まれ安定したドライコンディションで行われたSUPER GTのシーズン第2戦富士ラウンド。今季初となる450kmレースは、開幕戦で荒れた天候に振り回され、結果的にリタイアに終わっていたTOYOTA GR Supra GT500が優勝し、2~3位にはHonda NSX-GTが続き、開幕戦で1-2フィニッシュを飾ったNISSAN Z GT500は4位のTOYOTA GR Supra GT500を挟んで5位がベストリザルトとなった。いずれにしても、GT500における3メーカーの対決は横並びのまま開幕2戦を終えることになったのは事実だ。そんなSUPER GTは、今シーズンからスポーティング・レギュレーション(競技規則)が変更されていて、その大きな変更点のひとつ、一般的なハイオクガソリンからカーボン・ニュートラル・フューエル(CNF)の使用が義務付けられ件は前回紹介したとおりだが、今回はタイヤの使用セット数の変更について説明しよう。

昨年までの競技規則では、レース距離が300kmのレースにおいて使用できるタイヤは、1台当たりドライタイヤが6セット、ウェットタイヤが7セットと決められていた。6セットのドライタイヤはマーキングされ、公式練習では6セットを自由に組み合わせて使用できるが、公式予選ではQ1で1セット、Q2で1セットを選んでそれぞれに識別用のマーキングを施して使用し、決勝レースのスタートに際しては予選で使用したタイヤ…より正確に言うなら、予選Q1で敗退したチームはQ1で使用したタイヤ。予選Q2に進出したチームは、公式予選後のポールポジションインタビューの席での抽選により、Q1もしくはQ2で使用したタイヤのいずれか指定されたタイヤ…を使用することが義務付けられていた。なお、レース距離が300kmを超えるレースにおいてはシリーズを統括するGTAがその都度決定して発表。また当該シーズンに同じメーカーのタイヤを装着する車両が未勝利の場合、そのメーカーのタイヤを装着する車両は、さらにもう1セットのドライタイヤを持ち込むことができ、それはマーキングすることはなく、決勝レースの2スティント目で装着することが可能となっていた。

ところが今シーズンの新たな競技規則では、通常の300kmレースにおいてはドライタイヤの使用セット数が6から5に、ウェットタイヤも7セットから6セットに減少されている。つまり公式練習から決勝までを5セットのタイヤで走り切ることが義務付けられたのだ。タイヤのセット数がより少なく制限されることになったのは、昨年のシリーズ最終戦の際に発表されたSUPER GT Green Project 2030。~2030年までにシリーズ全体のCO2排出量半減を目指して~と題されたSUPER GTシリーズにおける環境対応ロードマップを具現化したもので、タイヤメーカーでは、グリップが長持ちするタイヤ技術の開発が進むことが期待できる。また各チームの経費と環境コストの削減に貢献すると同時に、チームとドライバーはタイヤを上手く使う車両のセッティングや、より長くグリップ力を発揮できるドライビング技術が問われることとなり、レース後半での攻防がより盛り上がることも期待されるところとなった。さらにロードマップでは2030年までの継続的な取り組みとして、再生タイヤ導入に向けた具体的検討を推進することも予定されている。なおレース距離が300kmを超える大会についてはその都度、エキストラのセット数が設定されることや、前年シーズンと当該シーズンの前戦までに未勝利のタイヤメーカーに関してプラス1セットの持ち込みが許されているのは変わりない。


ZFがサポートしている#100 STANLEY NSX-GTは昨シーズンの最終戦を飾っているから、装着しているブリヂストンの場合、今回の富士450kmで通常の5セットに、レース距離が300kmを超えることでエキストラの1セット、合わせて装着する各車1台ずつに6セットが持ち込まれている。もちろん、その6セットをどんなスペックでそろえたのかはチーム次第だが、おそらくは昨年までの5月の富士の気温や路面温度(路温)といったデータをもとに本命のタイヤとそれに次ぐ準本命のタイヤを合わせて6セット持ち込んでいるはずだ。

本命のAスペックをミディアム、準本命のBスペックをソフトとするなら、Aスペックの3セットとBスペックの2セットをマーキングし、公式練習で両スペックを1セットずつ使ってその日のコンディションでどちらがベストスペックなのかを確認する。Aスペックがベストスペックだった場合には、Aスペックの残り2セットを午後の公式予選、Q1とQ2でのアタックにそれぞれ使用する。翌日の決勝レースは公式予選で使用したタイヤでスタートするから、2回のピットストップ時に交換するタイヤを2セット用意することになるのだが、ニュータイヤで残っているのはBスペックの1セットとエキストラ…通常の作戦なら本命のミディアム…の1セットがあり、決勝時のコンディションによって、2スティント目はまだ気温も路温も高いからミディアムのエキストラセットで走り、3スティント目は気温と路温が下がってくるからソフトのBスペックで走る、とそんなストラテジー(戦略)を組み立てることが可能となっている。もっとも、タイヤチョイスはレースストラテジーの “キモ”となるために各チームで公表されることはあまりなく、推論の域を出ないのだが。

Text by Ryo Harada

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