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「子育て中の女性医師活躍中!」の職場で実際におこっていること

多様な働き方が叫ばれるようになってから久しい。
長時間労働で悪名高い医師の世界にも、少しずつその流れは及んでいる。

この記事では、筆者が10年間
「子育て中の女性医師が活躍しています」と求人を出している
医療機関で働いた経験をもとに、その実態、メリットとデメリットについて
赤裸々に書いていきたい。

※本文中に当院と書いてますがもう退職した医療機関です

なお、子育て中の女性医師も在籍、とか、子どもがいる女医さん歓迎、など
「子育て」イコール「女性がするもの」
「男性は子どもは作るだけで育児はしないのがアタリマエ」
という考えの職場には
ハッキリ言って就職しないほうがいいし
(子育て・介護をしている医師、といった書き方をすればいいのに、なんで女性医師に限定するんだ?)

一番ヤバいのは院長や上司が子どものいる男性医師で、
ふだんの育児は無職の配偶者に丸投げし、
自分は週に半日子どもと公園に行くだけで
「オレも子どもがいるけど仕事と両立はできる(ドヤァ)」
とか言っちゃってる場合。けっこうある。

なお、私が働いた診療所は
・救急指定なし
・入院なし外来メイン
・地域の健康診断や予防接種もする
・医師は常勤と非常勤合わせて2ケタ人、ほかに内視鏡だけのバイト医師もいる
・当直はないが医師会に頼まれての夜勤などがある
といった感じです

1.どんな医師が働いているか


当直オンコールがないので、子どもが小さい人は多い(男女とも)。

というか男性医師はほとんど子持ちで、当院に限らないだろうけれど、
既婚で子どもがいない人が少なく、1割もいない。

女性医師は子どもが保育園児から小学生くらいの、30代40代がメインで
上は50代までいる。子どもがいない人は3人に1人くらい。

2.子どもの体調不良で早退、欠勤しなければならないとき


無職の配偶者がいたり、引退した両親が近くに住んでいるのでもなければ
子どもが小さいうちは絶対ついてまわる、保育園からのお迎え要請。

当院では遅刻・早退・欠勤の連絡はすべて事務長さんにする。
で、事務長さんが抜けた医師の穴をどう埋めるか考えてくれる。

1人の医師が2倍の業務をするのではなく、
多少余裕がある3人くらいで
休んだ医師の穴うめをする感じ。

これは医師の数が多い、ある程度の規模がある医療機関だからこそ
できることだと思う。
COVID-19やインフルエンザが流行った時期は
複数の医師が休むこともあったので正直キツかった。

いちおう「お互いさまだから」となっているが、
子どもがいない医師たちがどう思っているのかは不明。
事務長さんもそこに気を使っているのか、
子どもの体調不良で休んだ医師の穴うめは
同じく子持ちの医師がすることが多い。

なお、子どもの小さい医師ばかり休むのかというとそうでもなく
すでに子どもが成人している男性医師で休む人がかなりいた。

これは彼ら本人がCOVID-19に感染したためであったり
感染症でなくても持病が悪化して入院したためであったりした。

穴うめをしてくれた医師にお礼は言うのがよいと思うが、
私は「大して穴うめに貢献してない医師にはお礼を言った医師が、
アナタのせいで超絶忙しい勤務をした医師=私には一言もなしだった」
を経験したことがある。

おそらく本人が気づかなかっただけだと思うが、中途半端にお礼を言うなら、何も言わないほうがマシなのではと思った。

私はあまり休まないほうだが、休んだ場合はシフト表を確認して迷惑をかけた医師全員にお礼を言うようにしている。


3.やりがいとキャリア


医師としてのやりがい、キャリアの面ではこの働き方はデメリットもある。

まず当院、重症の患者さんが来ないのはもちろんのこと
「そもそもアナタ、病院に来る必要あります??」
という患者さんが一定数いる。

健康診断を含む自費の検査もやっているが
そもそも「やらなくてもいい」
「検査によるデメリットがメリットより大きい」
検査が多いので
患者さんの希望とはいえ
まともな医師であれば、良心の呵責がある。

病気の人を治すことにやりがいを感じるタイプの医師(私もだが)には
物足りない働き方といえる

予防接種もしているため、
インフルエンザの予防接種が始まる秋は目が回るほど忙しい

予防接種は予約数が多いためスピード勝負となり
まるで工場のラインのように問診票をチェックし注射を打っていく
(当院、なぜかナースが注射を打たないので医師が注射もする)
ほぼ単純作業でありやりがいは少なめだ

キャリアであるが、部長など管理職は全員男性である
ここはハッキリ差別されていて
・男性かどうか
・院長と同じ大学出身かどうか
・違う大学出身ならイエスマンであるかどうか
が管理職になるための登竜門となる

冒頭に、「子育て中の女性医師」と謳う
子育ては女性がするものだと決めつけている職場には
就職しないほうがいい
と書いたわけが
わかってもらえただろうか。

院長は親も院長で世襲、
既婚子持ちだが妻は医師免許がありながらほぼ専業主婦。
(週1回、半日だけ外来をしている)
医者というより、ナチュラルに女性差別をする自民党の政治家みたいな
雰囲気と物言いの人である

じゃあ男性医師が就職したらどうなるのか?
楽に出世できます。

でも、明らかに女性医師より少ない外来患者数で
自分より勤続年数が長い女性医師をさしおいて昇進するの、
トランス女性です!って主張して優勝する男性アスリートみたいで、
居心地悪くないのかな?とは思います。

4.女性医師が損することと、賃上げ交渉の重要性


最後に、このnoteで絶対伝えたいことがある

女性患者さんの、「診察は女性医師がいい」という要求にこたえると、
当然男性医師より女性医師の外来が混む。

医師の性別を男性に指定する人はほぼいないからだ。

特に、婦人科や乳腺外科でこの傾向は顕著である。

が、外来の診察数が少ない男性医師と、多い女性医師とで
給料が違うかといえば、そんなことはない。

ごくたまにある出来高制の病院を除けば、
医師の給料は医師免許取得後の年数、拘束時間、専門医の有無など
で決まる。

当院にも乳腺外科の女性医師がいるが、彼女は外来患者や検査の数が本当に多い。同じ乳腺外科の男性医師は検査をしないのに、である。

こういう人はきちんと給料の額を交渉したほうがいいと思う。
男性に比べて女性は昇給の交渉をしないというデータがある。

特に「乳腺外科の女性医師」「産婦人科の女性医師」は
多くの病院・クリニックで引く手あまたなので、
働いた分に見合った報酬を提示してくれる病院を探すか、
働き始めてから1年、2年など経ったときに報酬アップを交渉することを強くオススメしたい。

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