進退

12月23日

布団に入ってから2時間ほどたつ。

導入剤はマイスリー10mg、レンドルミン0.25mg

現在、25時04分

これ以上は無駄だと思い体を起こす。

とろとろになった自分に冷えた床が噛み付いた。

エアコンの設定温度は22℃

木造築20年のアパートではそんなに温まらない。相変わらず床は冷たいままで足には感覚がなくなってきた。

社会人になって五年、彼女はおらずクリスマスはまた一人だ。

高校卒業後、情報処理の専門学校に入りこの仕事についてからのことを考える。理不尽な顧客に納期の短縮、いつも使っているソフトの仕様変更により悪化するサービス残業。

結局、体を壊し不眠になり精神科医へ通院することとなった。

飲み始めはブレーカーを落としたように眠れたが最近はまた眠れなくなってきた。

冴えてきた頭で将来のことを考える。

やめた。

しわしわになったタバコを後ろのポケットに詰めてサンダルを履いて外に出る。

目指すは少し遠いほうのポテトが美味しいコンビニ

風のない静かな夜、通りには誰もおらず人口に見合わない数の街灯に点々と明かりのある家々を通り過ぎながら、厳しい冬の寒さを全身で感じる。

何もないと考え事をしてしまう癖は治らない。

そういえば、タバコをすうと脳の血流が悪くなるそうだ。

残り少なくなった市販品のキャスター5mgに火を付ける。

高校卒業後、この街に来て7年経った。

学校での人間関係に苦しみ、眠れない夜に歩いた町並み。

会社での部下との関係に悩み、手を尽くしても眠れない夜に歩く今

風景も自分も周りも変わってしまった。

どうすればいいのだろうか、天を仰ぐ。

澄み切った寒空の上で輝く星々は輝きに違いはあれど、どれもちゃんと輝いている。

あるきながら星空を見ると見えたり見えなかったりする星があることに気づく。

ああ、わかった。

街灯の下で消える星、コンビニの光で消える星、トラックのライトで消える星。

どれも自分の環境で見えるかどうか変わっているようだ。

他者からみた自分はどの星だろうか。

街灯で消えるのか、はたまた通り過ぎるライトのせいで消えるのか。

今の自分はどれくらい輝けているか。

馴染みのタバコ屋も閉店し、好んで吸っていたこのタバコも最後の一本となった。

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