祖父の自尊心
祖父
自分には祖父が在った。
小さいころはよく遊んでもらって、勉強も一緒にした。
だからだろうか、いつ頃くらいだろうか、祖父が与えてくれるものを拒んでから少しずつ変わってきたように思える。
なぜ拒んだかというと理由は単純。
いらなかったから。
技術、知識、金いろいろあるけどそれらは単純じゃなくて、しがらみを含んでいる。
それを受け取ることが自分が祖父に無意識に渡していた通貨だった、それから粗野な方法でその通貨を自分から取ろうとするようになった。
記憶の奥底にあるのは自分が美術の時間にやった手の模写、あれは自分の中では自信になるような一つの作品だった、もっとも未完成だったが、それを祖父は半ば強引に奪いそれはお前の手じゃないだろう、じいが書いてやると言って自分で書き始めた、厚塗りで彼自身の手を。自分はそれをそのまま提出した。
自分も似たようなところがある、人が求めてもいないのに介入すること、自分では助けたと思ってわけのわからない自尊心の足しにする。
そんなものは我欲でしかない。
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