距離感.待合編

午前二時、ネカフェを出る。

事前にちゃんと調べなかった私の間違いで一時間早めに出ることとなった。

新橋駅のゆりかもめに行くまでまだ時間がある。

彼はお茶と飲むバナナを私はレッドブルと飲むバナナを買った。

新橋駅前につくと私達は八人目で私達よりも早く並んでる人がいて驚いた。

駅は屋根こそあるものそもそもまだ空いてないのでとても寒く、カイロは必須だった。

彼『アニメダウンロードしてきたわ』

『おお、まじで何ダウンロードしたの』

『みなみけ』

『うん』

『俺ipad持ってきたんだわ、んでdアニメストアのニコニコ支店だから一緒になんか見よう』

『おk』

そうして、使いにくいUIをひいひい言いながらアニメを選んだ。

『これすき』

彼が選んだのはゆるゆりの映画だった。

そうあの有名な、わあいパ○シル! あかりパ○シル好き! のコピペで有名なゆるゆりだ。

dアニメストアニコニコ支店なので動画にコメントがついている。NGをガチガチにしたため民度はよく、当時の古き良きネットスラングで満たされており私達の心を満たした。

周りから見るとかなり不気味な光景だったのではないか。男二人がipadの前でゆりアニメを一つのイヤホンでみている。

十何人いる前でこれをしたのだから当時の疲れている様子がよく伝わる。

自分は変なtシャツを着た金髪の女の子が好きだった。

名前は知らない。クソにわか。

感想は一言で言うなら尊い、も無理、死ゾ。

今度全編通してみるとしよう。

3時間強ほど待って駅が開く魑魅魍魎が己を律し歩いているがもはや競歩だ。私達は尿意と戦っていたのでそのままトイレに駆け込んだ。


おむつをおろし開放感に浸っていたが早くイカなければ席が取られてしまうそう考え大急ぎで絞り出し手を洗い電車に乗る。

何故か座れた。

余裕も余裕だ。あとから来た人は苦しみながら圧縮されていく。長く待ったかいがあった。

生SUICAをポケットに入れる。そのまま国際展示場まで後は待つだけだ。

途中で降りる人がうめき声のような謝罪をしながら外に出ようとしている。

駅が近づき生SUICAを用意する。

ない

ない

やっぱりない

ズボンの前、後ろポケット

パーカーのポケット

コートの内ポケット、外ポケット

どこにもない。

リュックのポケットを探す

ない

もうこれは直感に頼るしかない。

祈る。日本中の神々に祈りを捧げる。必死でマントラをググり祈った。

その時、天啓が降りる。

椅子の隙間だ。

あった。

祈りと日頃の行いが通じた。

大きく息を吐きそのまま目をつむる。

しばらくして眠気が押し寄せてきた。

駅についたとき席にいるのは私達二人だけだった。


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