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デジタル臨調とデジタル田園都市国家構想会議

(終盤は私見が強いです。すみません)
11月10日に特別国会が召集され、そこで衆参ともに議会第一党である自民党総裁の岸田文雄氏が首班指名により、第101代内閣総理大臣に選出された。
憲政史上最短の第100代内閣(第1次岸田内閣)が終わったかと思いきや、第101代内閣(第2次岸田内閣)が発足していく。

ところで、総裁選以降も岸田内閣の成長戦略の一つとして掲げられているデジタル改革に関連して、デジタル庁に「デジタル臨時行政調査会(臨調)」と内閣官房に「デジタル田園都市国家構想実現会議(デジタル会議)」がそれぞれ設置された。(関連ニュース)

それぞれ1回目の会合が終わったばかりだが、臨調とデジタル会議の設置目的と所感を書き連ねていきたい。

会議体設置の意図

【臨調の場合】

デジタル化の急速な進展が世界にもたらす根本的な構造変化、発展可能性の拡大を踏まえ、デジタル改革、規制改革、行政改革に係る横断的課題を一体的に検討し実行することにより、国や地方の制度・システム等の構造変革を早急に進め、個人や事業者が新たな付加価値を創出しやすい社会とすること(デジタル庁より引用)

設置目的は上記の通りで、現在進めているガバメントクラウドによる行政システムの標準化はもとより、各省庁の法令により規制され参入障壁などがある分野をなくしましょう(規制改革)と述べている。
なお臨調の構成員には、報道にある通りDeNAの南場智子氏らがいわゆる「有識者」として参画するほか、国務大臣として出席するメンバーには牧島かれんデジタル大臣、松野博一内閣官房長官、金子恭之総務大臣、鈴木俊一財務大臣、萩生田光一経済産業大臣がそれぞれ指名されている。

【デジタル会議の場合】

地方からデジタルの実装を進め、新たな変革の波を起こし、地方と都市の
差を縮めていく
ことで、世界とつながる「デジタル田園都市国家構想」の実
現に向け、構想の具体化を図るとともに、デジタル実装を通じた地方活性化
を推進するため(内閣官房より引用)

また会議で岸田総理大臣は次のように述べた。

「本日は、デジタル田園都市国家構想の実現に向けて、有識者の皆様方に、第1回目の議論をしていただきました。御協力に心から感謝を申し上げます。
 デジタル田園都市国家構想は、「新しい資本主義」実現に向けた成長戦略の最も重要な柱です。デジタル技術の活用により、地域の個性を活かしながら、地方を活性化し、持続可能な経済社会を実現してまいります。同構想実現のため、時代を先取るデジタル基盤を公共インフラとして整備するとともに、これを活用した地方のデジタル実装を、政策を総動員して支援してまいりたいと考えています。
 具体的には、5点申し上げます。まず1点目は、デジタル庁が主導して、自治体クラウドや5G、データセンターなどのデジタル基盤の整備を進めてまいります。
 2点目として、デジタル基盤を活用した、遠隔の医療、教育、防災、リモートワーク、こうしたものを地方における先導的なデジタル化の取組としてしっかり支援をしていきたいと思います。
 3点目として、地方創生のための各種交付金のほか、今回の経済対策で新しく創設をいたしますデジタル田園都市国家構想推進交付金をフルに活用いたします。
 そして4点目として、同時に、デジタル臨調やGIGAスクール、スーパーシティ構想、スマート農業等の成果も活用してまいります。
 そして5点目として、誰一人取り残さないよう、デジタル推進委員を全国に展開してまいります。
 当面の具体的施策及び中長期的に取り組んでいくべき施策の全体像については、年内を目途に取りまとめを行います。その上で、速やかに実行に移していくことで、早期に、地方の方々が実感できる成果をあげていきたいと考えています。
 本日の議論を踏まえ、若宮大臣が、牧島大臣と連携し、本構想の具体化に向け、政府全体として取り組んでいただくよう、よろしくお願いを申し上げます。」(首相官邸より引用/https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202111/11digitaldenen.html)

要点としては、
1.デジタル庁主導による自治体クラウドや5G通信などデジタル基盤の整備
2.医療、教育、防災、労働など様々な面で導入される地方の先進的なデジタル化の取り組みを支援
3.デジタル田園都市国家構想推進交付金の新設
4.GIGAスクール(教育のデジタル化→すでに特区では先行して事業が執行されています)、スーパーシティ構想、スマート農業などの成果を活用
5.デジタル推進委員の全国展開
である。

昨年から続くコロナ禍で、行政のデジタル化は大きく叫ばれている。岸田総理大臣の狙いとしては、地方にもデジタル改革が浸透していくことで、あまねく地方活性化が望めるとのことなのだろう。
年内をめどに、中長期的な施策の全体像についてとりまとめをしてほしいと要請したが、果たして国益にかなう施策が出てくるのか注視したい。

おわりに(個人的な所感)

岸田総理大臣が自民党総裁選に立候補した当初、小泉政権以降続いている新自由主義からの脱却を目指すことと、令和版所得倍増計画を掲げた。
多くの人はその信条や政策に期待して、先の衆院選に投票した人も少なくないのではないだろうか。
しかしながら、第2次政権発足してからは、首を傾げてしまう政策が多い気がする。中でもこのデジタル改革を基調とした成長戦略がその一つだ。
私は、現在のIT技術を広く浸透していくのは、決して悪いことだと思ってはいない。ただ、アプローチの仕方はどうだろうか。
IT先進国であるアメリカも中国も共通して、政府による財政支出(技術開発投資)があるおかげで、日々ITのみならず様々な基礎研究がなされている。一方で日本の場合は、小泉政権よりはるか前の中曽根政権以降続く「小さな政府」路線の緊縮財政で、企業が安定して技術開発できる環境がない。(言い過ぎか)日本の場合、端的に言うと、政府は掛け声だけで、お金も出さず、細かいところはあとは民間でやってくれというスタイルである。民間企業は、技術開発に回せるお金がないので、短期間で効果が出やすい人材に投資するしかなくなる。

臨調やデジタル会議は、これまでの規制改革会議の延長にすぎないと思っている。
どうか、小細工に見えるようなデジタル改革ではなく、国内企業が復活するようなデジタル改革を実行してほしい。

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