#あかねさん
「あ、ども」
タンクトップから肩を出し、片脚に重心を寄せて立っている彼女のきめ細かい素肌には、真っ直ぐな長い髪がふわりと載っていた。
ショートパンツからすらりと伸びた脚の先には灰がいくつか落ちている。
日曜日、ぼくらはたまにここで会う。
ぼくはその日の格好でここに来ることが多いが、
彼女はいつもグレーのタンクトップにショートパンツだ。
「家じゃ吸えないの?」
「うん。あかねさんも?」
うん、と言って、タバコを口に持っていく。
ぼくと同じように、このファミマの近くに住んでいるのだろう。
今にも落ちそうな灰にびくつきながら、
吸い殻入れのそばを陣取る彼女に会釈をしたのが、ぼくたちのきっかけだったように思う。
「コンビニに喫煙所があるのって初めてみたんですよね。ここに越してきてから」
「そっか。半年くらいだっけ? あたしのが先輩だもんね」
彼女は指輪をいじりながら、くわえタバコをよくする。
くわえタバコってすごい。鼻や目に煙が入ってぼくはすぐに痛くなってしまうから。
「コツがあんのよ」
タバコ分の時間。
ぼくらはその間だけ話す仲だ。
どちらかが吸い終わると相手の終わりを待ち、ふたりとも吸い終わると、それとなく挨拶をして帰る。
初めて会ったころはお互いコートを着ていたっけ。
彼女のメビウスの残り香を感じながら、
ぼくはリネンのハーフパンツにライターと銀ラークをしまった。
「彼女によろしくー!」
メビウスのケースをカラカラと振りながら、
いたずらっぽくあかねさんは笑っていた。