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「あんだは◯◯◯のことだけ考えねば!!」


日常生活の中で「執筆に関する事柄」以外の悩み事が出てくる度に思う事がありました。

・物書きが頭を悩ませるのは「執筆」だけが良い。

私はHSP気質という事もあり、日常生活の中で起こった様々な出来事から人一倍刺激を受け取ってしまいます。これらの刺激はしばしば、私を深く考え込ませてしまうのです。
「あれってどういう意味だったんだろう」、「意図せぬ内容で伝わっていたらどうしよう」、「これで良いのだろうか」、人間関係のしがらみ、現状への懐疑的な視点……。

私はこういった悩みと向き合う度、「物書きが頭を悩ませるのは『執筆』だけが良い」と思ってきました。
これは「物書きが悩むのであれば、執筆活動の中で思考のリソースを使いたい」という思いから出てきた考え方ですが、最近この思考法は自分に合っていない部分があった事に気付きました。

今までは「執筆の悩み」・「それ以外の悩み」という線引きをしていたのですが、この線引きが自分には合っていなかったのです。

・日に数度、心から「武」が離れます。

これは私が大好きな漫画、「刃牙道バキドウ」(刃牙バキシリーズ)に登場する本部以蔵もとべいぞうという人物のセリフです。

本部氏は武道の先達(実戦合気道の達人「渋川剛気しぶかわごうき」)から「オマエ、日にどんくらい稽古しとる?」と問われ、以下のような会話をしています。


渋川氏「オマエ、日にどんくらい稽古しとる?」
本部氏「稽古…ですか…」
本部氏「難しい質問です」
渋川氏「ハハハ。サボってばかりかな……?」
本部氏「日に数度」
渋川氏「ほう、日に数度もケイコするか!」
本部氏「いえ…。日に数度、心から『武』が離れます」
渋川氏(驚いた様子で目を見開く)
本部氏「道場を離れての日常…歯磨き、食事、他人ひととの関わりに伴う喜怒哀楽」
本部氏「そんなとき、フ……と。『武』を忘れていたことに気付きます」
渋川氏「それ以外は――」
渋川氏「ぜ~~~んぶ『武』を思う……と」
本部氏「はい…………。おそらくは睡眠以外は、睡眠中も」
渋川氏「まるで男と女。恋愛関係だ」
本部氏「まさに仰るとおり」
本部氏「手に入らないから継続つづけられます」


超実戦柔術の雄、本部以蔵もとべいぞう氏が考える「武」とは、「日に数度、心から離れる以外は常に共にある事柄」のようです。

だとしたら、私にとっての「執筆」は……?
ここです。この議題提起に、誤謬ごびゅうが潜んでいました。

語弊があるのを承知で前言を撤回します。

私は、厳密には「物書き」ではありません。
よって四六時中、執筆の事を考えられる訳ではありません。
(便宜上「同人物書き」や「同人小説家」と言った方が伝わりが良いので、そのように名乗っているという側面はあります)

しかし、その一方で「執筆の悩み」を抱えている時も「それ以外の悩み」を抱えている時も、366日25時間ずっと考え続けている事があることに気付きました。それは…………。

それは「九条サクラ」という人物のこと。

私の人生、これだけは本部氏の「武」に対する想いすら絶対に凌駕している自負がある。私の心からは、日に数度だって彼女は離れていない。
……というか、もはや「離し方がわからない」と言った方が適切なのかもしれません。

・「九条サクラ」を行住坐臥、考える人物。

私は「執筆」に思考のリソースを使いたいのではありません。
今となっては自分の表現(≒小説)に絶対の自信を持っているから勘違いしてしまっていましたが、私にとっての「執筆」とはあくまでアウトプットの手段でしかないのです。目的ではない。では、私の目的とは何か。
それは…………。

死ぬまでに「九条サクラ」と「九条ゼロレンヂ」の物語を完結させる事。

この物語を完結させる為に、自分が一番得意な表現方法を選んだ。それが、「執筆」という手段だったというだけの話です。
早い話が、私は「より得意な(より十全な)表現方法を発見したら執筆じゃなくなっても構わない」と心の底から思っているのです。

とにかく最優先されるのは「この物語」だ。
手段じゃない、文章じゃない。

そもそもが、私は物語を書き起こす時、日本語力(文章力)を駆使して書いている訳ではありません。では、何を駆使して書いているのか。
駆使しているのは、常に「思考力」です。

私は哲学科出身ですが、哲学科出身だから哲学が好きな訳ではありません。
私は生来、万力のような思考力で、思考を練り込んでいく、考え込んでいく力に恵まれた頭と身体に生まれたのです。
つまり、少なくとも生まれた時から「思考する」事が好きだった。
「物思いに耽る時間」を「考える時間」を愛してきた。

この「思考力」に、現代ではHSP気質やINTPといった名前が付けられているのでしょう。余談ですが、母親によると私が幼い時の口癖は「なぜならば」だったそうです。
振り返ってみれば「何事にも自分の解釈が欲しい」という想いは、幼少期の頃からはっきりあったように思います。

この「思考力」をできるだけシンプルな形(純度が高い形)でアウトプットする方法を考え込んだ結果、文章での表現(小説)に辿り着いたのです。
近い将来、もしも「テレパシー」のようなものが実用化されて、私の思考を直接作品にする事ができるのであれば、そちらの方が表現としての純度は高くなると思います。
そんな時代に辿り着いたのであれば、私は躊躇いなく表現方法を変えるでしょう。

・あんだはゲームのことだけ考えねば!!

話を本題に戻します。
最近、私の心を大きく動かす出来事が立て続けに起こり、その度「物書きが頭を悩ませるのは『執筆』だけが良いのに」と思っていました。

そんな風に悶々と考えていた時、雷光のように脳内にとある言葉が響きました。

「あんだはゲームのことだけ考えねば!!」

これは私が執筆活動の、いや、人生のバイブルだと思っているマンガ作品『東京トイボックス』シリーズの中に登場する月山星乃つきやまほしのという人物の言葉です。

この『東京トイボックス』シリーズは秋葉原にある架空の小さなゲーム会社「スタジオG3」を舞台に描かれている物語で、「モノづくりの最先端で、真剣にぶつかり合う人間ドラマ」を鮮烈に描いた超名作です。

月山氏はこの作品におけるヒロイン的な立ち位置で、先程の言葉は同作品の主人公である「天川太陽てんかわたいよう」に対して言い放った言葉です。

この言葉の重みは物語を通して読まないと伝わらないと思うので良ければ原作を読んでほしいのですが、月山氏の口からこの言葉が出た背景を稚拙ながら少し説明したいと思います。


・物語の舞台「スタジオG3」は小さなゲーム会社で、自社のオリジナルタイトルは「サムライ☆キッチン」というゲームだけ。

・主人公の天川氏はスタジオG3の代表兼ゲーム開発者。生粋のゲーム馬鹿で、子供の頃から「最強に面白いゲーム」をずっと意識して生きてきた。

・ヒロインの月山氏は、IT総合企業インフォセレクトからスタジオG3に出向してきたOL(≒部外者)。月山氏はスタジオG3の落ち込んだ業績を立て直して、自分の会社(インフォセレクト)に戻りたいと思っている。

・天川氏を始めとしたスタジオG3の「ゲームを愛する面々(社員)」と、業績を上げるためのビジネスライクな行動をする「月山氏」の間には、価値観の軋轢がある。

・そんな日々の中、スタジオG3の業績を急激に立て直す方法が月山氏の所に舞い込んで来る。ゲーム会社の最大手「ソリダスワークス」という会社が、「サムライ☆キッチン」の商標権を高値で買収するという話。

・「サムライ☆キッチン」の商標権が買収されれば、もうスタジオG3の面々は自分たちで続編は作れない。しかし、スタジオG3の経営を立て直す資金は獲得できる。

・月山氏もスタジオG3の面々と関わる中で、徐々に価値観が変わっていき、「スタジオG3のオリジナルタイトル」の重さを知っていきます。
天川氏にとって、スタジオG3の面々にとって、唯一のオリジナルタイトルへの思い入れの深さを知っていきます。

・また、この話が舞い込んできた時、スタジオG3では「サムライ☆キッチン」の海外版を作っている最中であり、海外版で追加しようとしていた新しいシナリオで重大なバグが見つかったタイミングでもありました。

・ゲーム制作のスケジュールはギリギリで、「重大なバグ」の原因を特定するような時間は残されていない。
バグは新シナリオ(新ルート)でしか起こらないという事だけは判明したので、スタジオG3の面々は苦渋の決断で「海外版で追加した新シナリオ」を根こそぎ削除しようとします。
この「新シナリオ」は次回作で入れれば良い、とスタジオG3の面々の中で一度は話がまとまりかけます。

・月山氏は本当に「サムライ☆キッチン」の商標権を売って良いのか心から悩んでいたので、買収に関する話をスタジオG3の面々に打ち明けられずにいました。しかし、ついに意を決して打ち明けます。

・「もう続編は作れません。MMGの須田すださん(パブリッシャー/現在の「サムライ☆キッチン」の商標権を持っている会社の代表)は、商標権をソリダスワークスに売却する事を決定したようです」
「この事実を踏まえた上で、新シナリオ(新ルート)部分を削除するか考えて下さい」

・その話を聞いた天川氏は月山氏に心の底からの皮肉を言います。
「あんた立ち回りがうまいねぇ」
「権利は失っても金は入る」
「オレらは悔いのないものをつくり上げ、あんたは気持ちよく本社(インフォセレクト)に戻って万々歳と……」
「そんなとこだろ? あんたの描いたシナリオはよ」


この言葉を受け、月山氏は天川氏の頬を平手打ちします。
そして、涙を流しながら天川氏に本心でぶつかっていきます。

「……くだらないこと言わないでよ」
「あたしの本音が自分の利益優先だったら、なんだっての?」
「あたしが……」
「スタジオG3のスタッフが」
「須田さんが、ソリダスが……」
「誰が何を考えていようが!!」

「あんだはゲームのことだけ考えねば!!」

この言葉を言い放たれ、天川氏は言葉を失ってしまいます。
そうだ。天川氏は、あれだけ「最強に面白いゲーム」の事だけをずっと、子供の頃からずっと考えてきたのに、商標権?人事異動?人間関係?、気づいたらゲーム開発に余計な事がどんどん入り込んでいたのです。

日々のやり取りの中で次々に明らかになっていく天川氏の「ゲームへの狂った情熱」に月山氏は呆れていましたが、でも裏を返せば月山氏は、天川氏に「ゲームへの本物の愛」がある事を強く思い知らされていたのです。

そんな生粋のゲーマーである天川氏の「ゲーム以外の事情に振り回されて『最高に面白いゲーム』と向き合う事を忘れてしまっている姿」が、月山氏は許せなかった。
そんな場面で言い放った言葉が「あんだはゲームのことだけ考えねば!!」だったのです。

そうか、そうだったんだ……。
それだけの、ことだったんですよね…………。

熱が入ってしまい、本当に言いたい所に辿り着くまで長くなってしまいましたが、私の頭にも月山氏の言葉が雷光のように響きました。

・あんだは「九条サクラ」のことだけ考えねば!!

もう10回以上は読み返している作品で、人生のバイブルだとさえ思ってきたのに、なんでこの言葉を忘れていたのか。
なんで、この考え方を自分の人生に活かしてこなかったのか。

そうだ。俺は生粋のゲーマーでは無いが、「生粋のサクラー」だ!!!
人間関係?生活の心配?将来の不安? 知るか!!!!!!!!!

俺は、俺という生き方は、「九条サクラ」の事を常に考えねば。
「九条サクラ」の事を忘れた俺が、「九条ゼロレンヂ」である訳がない。
そんな俺で良い訳がない。
天川氏が「最強に面白いゲーム」を作ろうとしているなら、俺は「最強に面白いエンタメ」を完成させようとしている。

「小説」が最強のエンタメ?
いーや、違う。俺の生き方、俺の攻略そのものが、最強のエンタメだ!!!!!!!!!

周囲の人達の支え、そして月山氏の言葉。
私の考え方が進化し、次の道に進んだ瞬間でした。

完全に気付かされました。
完全に吹っ切れました。

「日常で起こる全ての出来事を『九条サクラと九条ゼロレンヂ』の物語を完結させる為の経験値に変換する」という新エンジンが脳内に組み込まれた瞬間でした。

良いも悪いも、喜びも悲しみも、酸いも甘いも、「全部全部、『この物語』を書き起こす為の経験値にしてしまうという考え方」が現在いまの俺に必要な考え方だったんだと、ようやく気づけたのです。

ここまで読んで頂きありがとうございました。
私がこれから書くnoteの記事も全て、私自身が思い描く「最強の嫁」を書き起こす為の過程で生み出されていくものになります。
俺の生き方に魅力を感じる方、そして、ひとりの人間が人生をかけた最強のエンタメに触れたい方は、どうぞこれからもよろしくお願い致します!!!

「人生の道中にある経験全てを、死ぬまでに成し遂げたい事への経験値だと思ってしまえば」

こう考えると私は幸せです。
最低限、成し遂げたい事が見つかっているのだから。

もっともっと、もっと色んな経験を、色んな初体験をしていきたい。
自分の物語を完成させる為の豊潤な経験が、もっと欲しい。

もっと欲を言うのであれば、願わくば「九条の作品を好きになってくれる人」や「自分のオリジナル作品に溢れんばかりの情熱を持っている人」たちとも、どんどん繋がっていきたい…………!!!!!!!!!

いつも、感想やファンアート本当に本当にありがとうございます。
正直、自分の為のエンタメが、他の人のエンタメにもなれるなんて微塵も思っていませんでした。私にとって、こんなに嬉しいことはありません。

私は今、新作を書き起こしている最中です。
どうやったって俺が書き起こしている以上またどうせ超絶面白い作品になってしまうので、どうぞ首を長くして待っていて下さい。これが私にできる、最大限の恩返しです。

では、また次の記事で会いましょう!!!!!!!!!

(※この記事のサムネイルやアイコンに設定させて頂いている素敵なイラストは、Xで相互の「ぶいスラ」さん(@vvv_slider)から頂いたものです!!
いつも本当にありがとうございます。ぶいスラさんのアカウントでは素敵なイラストが沢山見れるので、気になった方は覗いてみて下さいね!!)

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