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冴月の花 ―― 朔 ―― / 九廻の噺 第1部
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第1部『九廻の噺、九条の桜 篇 冴月の花 ―― 朔 ――』
オリジナル小説『九廻の噺』シリーズ、第1部。
和風怪異譚『冴月の花 ―― 朔 ――』。
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これは九条サクラという少女が「生まれた意味」を知るまでの物語。
旅路の最後、彼女が辿り着いた自身の出生の秘密とは――――――――。
これは夜の桜が似合う女の噺。
嗚呼、女は花。
世界が拒絶した五分咲きの花。
その花が咲くか、咲かぬかの一廻の噺。
これより幕を開ける物語から遡ること十年。
後の世に赤月の役と呼ばれる、人と鬼の戦いが起きた夜の出来事を君に聞かせよう。
大挙して鬼が押し寄せた里の中、とある屋敷に幼い三姉妹の姿があった。
面倒見のよい、しっかり者の十二歳。
姉には甘えたいけれど、妹には頼られたい七歳。
ぐずってばかりの、怖がりな四歳。
突如として鳴り響く、夜半の警鐘。
三姉妹の中では、長女だけが冷静に事態を理解していたのだろう。
長女は妹たちを屋敷の一番奥の部屋へと連れて行く。
そして、二人の耳元で「ここで、お父さんが帰ってくるのを静かに待ってるんだ。私は、お母さんのところへ行ってくる」と囁き、そっと戸を閉じた。
次女は閉められた襖の前できょとんとする。
それも無理からぬ。なぜなら三姉妹の母親は、とうの昔に鬼籍に入ったのだから。
次女の表情が徐々に不安に染まっていく傍らで、三女は震えながら次女の手を握り、ただ立ち尽くしていた。
それから、時は流れて十年後。
長女の消息は知れず、未だ帰らず。
……だから、これは。
姉の軌跡を辿るべく修行を積み重ねた、三姉妹の次女。
九条サクラの物語。
(本編冒頭 抜粋)
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