【無料】村上本最速レビュー!【書評】
目指せ村上ソムリエ
私クラスの観戦記者になると、村上プロの顔を見るだけで局面が分かる。
ABEMAを付けた瞬間に
(あ、まだ東2か)
(お、ラス前に突入しているな…)
と把握ということだ。
東1局 どしょっぱつからすでに赤い。↓
東3局 下の方から赤くなっていく。上部が染まっていないうちはまだ東場である。
南1局 染まりきりつつある辺りで南入。
南3局 赤と共に汗でてかってくる。
オーラス 噴火寸前である。
みなさんにも村上ソムリエになってもらいたい。
さて、村上プロの顔が赤くなるには理由がある。
相手の一打一打に読みを入れ、整理し、選択に活かしているからである。
対局中、村上プロが何を考えているのか?
どれくらい相手の手牌を読めているのか?
その謎を解き明かした本が出る。
12/29発売の村上本である。
私は発売前の村上本をいち早く極秘ルートから入手することに成功したので、レビューを書いていきたい。
ページをめくると…↓
実戦譜を使い、鈴木聡一郎プロと村上プロによる会話形式で、村上プロが何を考えていたのかを解説していく流れになっている。
村上本の特徴
村上本の特徴① 超細かい
250ページ近くあるが、とりあげる局は12局しかない。
つまり、1局あたり20ページ近く紙面を割いているということ。
相手選手の一打一打に反応し、手役や打点などを推測していることがわかる。
最初の3局くらいはジャブという感じでスラスラ読めたが、4局目に入ると話が途端にマニアックになってくる。
圧巻だったのは
このリーチに対し、36pと58sの2点で読み、チートイのテンパイから8sを押した後に6pでオリた話。実際に36p待ちだった。
ポイントは6巡目の7pだという。
この7pがどういう形から切られることが多いのかを何ページにも渡って解説している。超マニアックだw
この牌図だけだとたまたまに見えるが、他にもいろんな要素があって(5pが通ったとか)それらを全部統合すると、たしかに36pが濃厚になるな…と感じることができた。
ただ、読みは非常に難しいジャンルだ。
村上プロと言えば、正直こう感じている強者もいるのではないか。
・安牌持ちすぎ、もっと素直にシンプルに打つべき
・ダマテンは弱気すぎる
・不確定な読みよりも手牌に準じて打つべき
自分より明らかに手組みの下手な相手なら、手組だけで勝ち続けることができるだろう。
しかし村上プロの環境…たとえば最高位戦のAリーグとなると、メンバー普通に打てて当たり前であり、プラス何かがないと勝ち続けることはできない。
村上プロにとって、その何かが読みなのである。
村上本の特徴② 地味な局面が多い
くだけた会話調であることから、読みやすくはある。
しかし内容がマニアックな上、取り上げる局面は地味だ。
華々しくアガった局よりかは、オリた局面を取り上げていることが多い。
「こんなオリばっかりの本で売れるのか」
と本書の中でも村上プロが危惧している。
村上プロは長考が多い。
私だって、なるべく長考はしないように心掛けている。
それでも長考してしまうのには2つ理由がある。
1つ目は、1打に乗っている重さ。この1打で人生が変わるかもしれない。私たちは常にそういう勝負をしている。それは相手にとっても同じことで、半端な打牌は相手に対して失礼になってしまうため、礼を尽くして吟味を重ね、打牌を行うことである。
2つ目は考えることの多さだ。
こちらがこの本の内容になってくる。
長考の間に村上プロが何を考えているのか。
何を考えたらあんなに顔が真っ赤になるのか。
本を読み進めるとその謎が解けてくる。
「こんなオリばっかりの本で売れるのか」
という村上の問いに、編者の草下さんはこう答えている。
「売れなくてもいいんです。僕が読みたいので」
それを聞いた村上は嬉々として長考中に何を考えているのかを語りだし、それをまとめたのがこの本である。
本人が語りたいこと、好きなことを語っているものはよいものである。
実用性はあるか
正直、初中級者がこの本を読んで強くなることはない。
読みに比重を置きすぎてしまって、バランスを崩してしまう可能性が高い。
本書の中でも村上は
「読みはあくまでもスパイス」
と語っている通り、読み続けることでたまに役立ったり、ちょっとだけ有利な選択ができたり、その程度のことにすぎない。
最終的な味付けであって、土台の方が圧倒的に大切になる。
だが、エンターテイメントとして感動する部分があると思う。
村上淳はここまで考えているのか、相手の手牌をここまで読めるものなのか…と。
そして上級者には自分に足りない何かを気付かせるために、この上ない教科書だと言える。
正直、ここまで細かく思考が書いてある本は今までになかったのではないか。
私自身フル活用して村上イズムを吸収したいと思っている。
おまけ
スペシャル対談として、滝沢、水巻、丸山の3名と別々に対談している。
1人がそこそこ長くて面白く、マニアックな本パートの堅さを中和する役目を果たしている。
というわけで、初・中級者にはエンターテイメントとして読みやすく、上級者にはワンランク上にいくためのきっかけになるような、そんな良書だと感じました。
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