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今井翔太著「生成AIで世界はこう変わる」読後感想

2024/01/08 読了

日本でのAI研究の先端である東大・松尾研究室の今井翔太氏「生成AIで世界はこう変わる」が1/7に届き読了しました。氏は私のAI関連や先端技術関連の情報入手先の一人として、X界隈で良く発言を聞いているので私的には大きな驚きのある内容ではなかったですが、上手く言語化・データを用いて記述してあるので自分の思想のコアが補強されて骨太になった感はあります。

250P程度の新書版ですが、内容は2023年時点での研究者目線での最新AI研究と考察に基づいており、
・生成AI技術がどういう経緯で発展し、どういう技術で形成されているかというバックボーン
・生成AI技術の発展により近未来的な労働市場・雇用市場への影響。消える仕事と残る仕事の考察
・絵や文章といった人間の創作に対する、生成AIの影響と今後の法整備などの方向性
・生成AIの作成物や発展により「現実」と「フェイク」の境目の曖昧化。近未来で人間とは何か言語とはなにか等の哲学的な問題を問う革命となりうる生成AI。及び巻末の松尾豊氏との対談

などが判りやすく平易な文章で纏められています。最新技術の説明には最新概念の理解が必要となるので、参考にするツール・アプリ等の横文字も取り上げてますが、難しい数式や理論などは省略され比喩表現などで代替することにより、私のような素人にも「2023年時点での生成AI関連の大まかな地図と現在地」が理解できるような作りになっていると思います。ストレス無く・読み返しすることもなく、時間ある時に一気読みできました。

好むと好まざるに関わらず、労働や雇用・趣味や実益まで今後の社会全体に大きなパラダイム変換を与えつつある・また更にその加速度は大きくなると予測される生成AIの背景を理解することは必要であると考えます。

ここからは私見になりますが、生成AIの活用により生産性を上げる人材の活用により、企業内での単位時間生産性は上がると思います。ただドライな企業であれば上がった生産性の分の余剰人材は整理してコストカットを図るでしょうし、そういう人材同士・企業同士が競合する事により近未来の雇用市場は今より勝ち組負け組がはっきりするかも知れません。
流通革命により消費者は安価で良質な商品を入手することが出来るようになったが、その過程で勝ち組のスーパー・コンビニ・ネット商店は潤った反面、各街にあった小規模商店・家族商店は駆逐され大規模な雇用と消費が減少する…という例でイメージできるかも知れません。

IMFの予測のように勝ち組の上位層が数を減らしながら富を集中させ、雇用を奪われた現ホワイトカラーが所得を減らし消費を減らすようになれば、今以上の所得の両極化が進み、その結果として幅広い層での消費が冷え込むことになれば、同じ国内でも社会の分断や社会不安の要因となるかも知れません。

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