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レノファ山口vs藤枝MYFC 【2-1】マッチレビュー


中国地方近隣のJリーグクラブを盛り上げたい!ということで、今回は見事3連勝を飾った山口vs藤枝の試合についてチェックしていきたいと思います。試合の中で「これはおもしろいな!」と思ったポイントをいくつかピックアップしてお話していきますのでよろしくお願いします。



山口はここ6試合で4勝2敗勝点12ということで、自動昇格ペースをキープしており非常に調子がいい。一方の藤枝も同じく4勝2敗。しかもこの試合で山口に敗れるまでは4連勝中ということで、好調なチーム同士がぶつかる試合となっておりました。ちなみに、山口の試合を見るのは甲府戦以来ということでどういう変化が見えるか?楽しみにしておりました。



スタメン


山口はかわらず442。対する藤枝は3421。さて、山口にとって大きいのはリーグ屈指の敵陣空中戦勝率を誇るFW梅木の不在。かわりに183㎝の山本を起用してきました。とはいえ、持ち味の違いもあるでしょうし梅木の勝率はちょっとスペシャルなものです。なので、山口としては梅木にロングボールを蹴って、こぼれを拾う。あるいは、拾えなくてもボールに絡んでいき再度奪い返す。それができなくてもスローインを取る。といった一連の流れがなかなか出しにくい。ある意味ひとつ封じ手を課された状態で迎えないといけないゲームだったのかな?と思います。


両チームのフォーメーションをかみ合わせてみるとこんな感じになります。まず注目したいのは、藤枝の3バックに対して山口は2トップであるということ。相手が3人いるのに、山口は2人で邪魔しないといけないので1人数的に不利です。したがって、藤枝がボールを持ったときにもう一枚をどう対応するか?が問題になる可能性があります。

一方、山口は攻撃時にフォーメーションが変わります。この変化は藤枝をかなり手こずらせていました。

左SBの新保が高い位置を取り、左SHの河野はやや中よりに移動します。そうすると、全体としては442→325のような形になり3バック化するんですね。

そうすると後ろ3枚にダブルボランチの5人がボール運びに関わる山口に対して、藤枝は前線3枚ですからなかなか邪魔しにくいことになってきます。さらに問題はその後ろ。ここは大問題でした・・・


サイドにボールが出た場合、WBが前に出てプレッシャーをかけるんですがそうするとその背後にサイド奥のスペースができてしまいます。いわゆる”3バック脇のスペース”ってやつですね。

さらに、ボランチのところに目を向けてみると本来であれば藤枝のボランチが山口のボランチを見たいところです。ところが山口のボランチは低い位置に降りていく。したがってマークにつくわけにはいかない。遠すぎますもんね。

この状態から例えば河野がサイドに張りだしていくと、藤枝のボランチの選手はついていく。すると、藤枝の前3枚と中盤の間にこのように大きなスペースが空いてしまいます。こういう問題が見受けられたゲームだったかなあと。


山口のピンチはなぜ生まれた?ー矢村の決定機


こうした構造上の話を踏まえたうえで、山口のピンチのシーンの原因に迫ってみましょう。前半12:20あたりからのシーンです。最終的には藤枝のFW矢村に決められそうなくらい大きなピンチとなったシーンでした。

さっきのフォーメーションのところで、藤枝の3バックに対して山口の2トップだと人数が足りないよねって話をしました。藤枝も当然その数的有利を使いたいので、左右のCBを開いていくわけですが、

このように河野・野寄の両SHがそのまま前に出ることによって左右のCBに対してプレッシャーをかけていきます。なので、この形は問題ない。


ところが、このように3バックの横にボランチを落とされたときに、状況を整理しきれなくて若干対応が遅れます。このとき、ボールをもったボランチの平尾には十分に前をうかがう時間がありました。


平尾から右WB大曾根にボールが出ると、左SB新保が対応に出る。すると、その背後にSB裏のスペースができるので今度はシャドーに中川が侵入していくと。


中川にはボランチの田邊が対応しますが、その背中をインナーラップで右WB大曾根が受けに走る。そしてラストパスが出て矢村のビッグチャンスにつながったというシーンでした。

こうしてみると、やはり初動のところで河野の対応が遅れたこと。そこで藤枝の連動するアクションの引き金を引かせてしまったかなあと。しかし、試合始まって一発目の相手の変化だったので対応は難しかったでしょう。なので、ここはGK関が見事に藤枝の奇襲を救ったなという。この後藤枝は左サイドにボランチを落とす変化を見せるんですが、問題なく対応できていました。

こんな風に左CBのところにボランチを落とし、左CBのウエンデルを前に上げる。そして左WBのシマブクをシャドー化させる。藤枝がよくやるCBを攻撃参加させる形ですが、おそらくウエンデルの高さをもっと使いたかったんだろうと思います。山口は全体的に高身長の選手が少ないのでやはりそのウィークは使いたいというところでしょう。


ちなみにボランチがサイドにつり出されたとき、しっかりと右SHの野寄がFWと最終ラインの間を埋めるべく戻っていました。こういうのが地味に効くんですよね。真ん中の危険なエリアにどれだけ相手を邪魔するフィルターを用意し続けられるか?は失点数につながる大事なポイントだと思います。



相田勇樹がいい選手すぎる件について


では、次にレノファ山口の攻撃でよかったポイントに行きましょう。個人的に非常にいいな!と思ったのが前半11分10秒あたりからの一連のシーンでした。ここはシーンを巻き戻してチェックしてみますね。


最終的にはこの位置でボランチの相田が前を向き、そこからスルーパスがでて新保のクロスにたどりついたという一連の攻撃でした。相手の右WB裏のスペースを上手に使ったわけですが、問題はなぜこんな藤枝コートの深い位置で相田が狙いすましたスルーパスが蹴れたんだ?ってことですよね。何が起こっていたのだろう?


ひとつ前のシーンに戻ってみると、相田にパスを出したのは河野でした。その河野についているのは藤枝のボランチ平野です。フォーメーションのところでも指摘したように、山口のSHは中に入ってくるのでどうしても藤枝のボランチがマークにつく機会が増えるんですね。このシーンもそういう流れでした。


さらにシーンを戻してみると、まさに!という感じになってきます。新保が右WB大曾根をつり出して、その裏のスペースへ河野が出ていく。するとボランチの平野がついていくので、このように中央にはぽっかりと大きなスペースができます。なので、そこにボランチが走ってボールを引き出すとチャンスになるよね!って寸法だろうと。

しかし、この相田勇樹選手はいい選手ですね。知り合いの山口サポーターに聞けば運動量豊富でデュエルに強く、なおかつロングスローも持っていると。志垣監督の元でプレーした経験をもっているということでやり方に習熟しているというところもあるでしょう。

このシーンでもそうですが、攻撃でもボールホルダーへのサポートに走っていいタイミングでボールを引き出し、さらにはスルーパスで仕上げまでやり切る。実によい仕事をしているなと思います。

藤枝ペースのままセットプレーから同点に



1点リードして迎えた後半は藤枝ペースへと移行していきます。藤枝はGK北村をフィールドプレイヤーと同じように使いはじめ、左CBウエンデルや交代して入った右CBカルリーニョスを押し出します。

枚数がやはり一枚たりないこと、そして体力的な消耗もあり藤枝コート内で相手を規制する力が落ちた分徐々に押し込まれていきました。これが後半藤枝にペースを譲った一因だったかなぁと。こういうときに梅木へのハイボールをつかったシンプルな攻撃があれば、いくらかペースを取り戻せそうな感じもしますね。


そうしてペースを握れないままCKから同点に追いつかれてしまった。ここもGK関が触ってるんですけど、叩きつけられたボールの軌道が良かったですね。この失点シーンだけじゃなくて、前半にあったCKでもそうでしたが藤枝は徹底して山口の選手がゾーンで守っているかたまりの外側で待っているんですよね。そして勢いをつけてバチンと叩きにくる。

やはり、山口の高さ不足というのはどのチームもねらい目だと考えているようで、今後もこのウィークをいかにして克服していくか?は課題になりそうだなあと思います。


この後は前半と同じように後方でボールをつないで相手コートに入っていく構えを見せて勝ち越しを狙います。ところが藤枝も前半の修正をしてきました。新保や河野に食らいつくのはかわらないんですが、前線の選手があまり中盤と離れすぎないように、あまり深追いしないようになります。そうなると中のスペースにパスを通すのが難しくなり、前半とおなじようにはいかなくなってしまう。

さらには山本も交代せざるを得ず、前線にCBの平瀬を投入する苦しさ。これはさすがに3連勝は難しいのでは?と思われたなか、ユース上がりのルーキー末永がATで押し込んで2-1で勝利と。いや、ほんとよく勝ったな!すごいな!というゲームでした。

志垣レノファの方向性と今後について


ということで、藤枝戦おもしろかったです。以前見たときに比べると少し志垣レノファの目指す方向性が見えた試合だったかなぁと思いました。率直に「あ、変わろうとしてるのかな?」と感じたんですよね。

じゃあ、それはどういうところなの?という話なんですが、まず守備ではプレッシングの開始位置が少し高くなったな?と思うんですよ。以前は、ハーフウェイラインあたりからプレスを開始するミドルプレスで、あんまり相手コート深くに入るって印象はなかったんですけど、この試合ではもう少し前から藤枝の攻撃を邪魔しよう!という意図が感じられました。

もしかしたら藤枝相手だからということもあるかもしれないですが、プレスの開始位置を高めたいということはより高い位置でボールを奪いたいという形を目指しているのかな?と思わせる挙動です。

一方攻撃の方では、以前よりもボールを持つ時間が明らかに長いです。まあ、といってもこの試合は大黒柱の梅木がいないというのもあるかもしれない。しかし、それを踏まえてもより平面でボールを動かせるようになってきているのは間違いないかなと。

この変化から考えると志垣レノファはもうすこし相手コートでサッカーをできるようにと考えているのかもしれないなと思うんですよね。

もう数試合でJ2リーグも折り返しになりますけども、山口がPO圏内から上を目指すうえではやはりある程度はボールを持って押し込むことや、押し込んで仕留めるという要素が求められてくるだろうと思うんですよ。特に残留がかかるクラブ相手だとドローでもOKという試合も増えてきますし、取りこぼしが多いと順位が保てない。もしかしたらそういったことも視野にいれていのかな?と思った藤枝戦でした。

8月末のvs岡山戦が楽しみです!

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