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J2第7節 大分トリニータvsファジアーノ岡山 レビュー 【0-0】

またしても10人の試合に


クラブ初の5連勝を達成すべく迎えた大分アウェイでしたが、またしても退場者を出す厳しいゲームとなりました。前半はどちらかといえば岡山の方がチャンスを作っていたので、後半どこかで先制して勝ち切りたいところでしたが右WB柳(貴)が一発レッドで退場と。いわき戦に続いて後半の長い時間を10人で戦わなければならない展開に。大分にボールを握られる状況でしたが、なんとか耐えてドロー。勝点1を得ました。これで2月、3月は無敗。上位陣も軒並み足踏みした節となったので首位キープ、なおかつ勝点差もそこまで縮まらず。そういう意味では運があった、といってもいいのかもしれないですね。


スタメン



岡山は3421。大分は442。

この試合からまた3連戦ということもあってか、メンバーを入れ替えて左CBには本山。ボランチにそのまま仙波を起用。ベンチには齋藤恵太がもどってきました。離脱者の情報もあるので、この連戦でもメンバーの編成には注意を払っておきたいところです。

ゲームの流れ


442の大分に対し前プレをかけにいきたい岡山。大分はFW長沢を降りてこさせてうまくプレスを交わし、ボールを前に運んでいきたいという狙い。若干そこに手を焼いたものの、大きなピンチにはならず岡山の守備は安定していたと思います。一方の攻撃の方では、前半だけで7,8本CKが獲れていましたし、一本ビッグチャンスがあったのでなんとかひとつこじ開けておきたかったところ。

後半修正して悪くない流れで進めていたものの、後半51分にこちらのCKからのカウンターで相手の抜け出しを許してしまいこれを柳(貴)が倒して一発退場。ちょっと、リスク管理が甘かった・・・。とはいえ、まだ0-0でしたからね。すぐさま交代でルカオとシャビエルを入れ、ワンチャンカウンターやセットプレーで一刺しして勝ち点3を目指す構えに移行します。退場後は大分がボールを持つ時間が長く、岡山としては耐える時間が長かったですね。しかし、よく踏ん張っていたと思います。この守備力はリーグ1でしょ。偽物じゃないと思いますマジで。大分にも決定機が訪れましたが、河野諒祐が体でブロックする超ファインプレーを見せ事なきを得ました。そのままゲームはスコアレスで終了し、勝点1を大分から持ち帰ることとなりました。

落ちる長沢を使った大分の攻め方について


岡山の前プレに対してはすでにいろんなチームが剥がし方を対策してきていますが、この試合で大分が見せていたのがFW長沢を使った回避でした。たとえば、2:36あたりからのシーン。


左サイドでファウルをもらった大分がCBにボールを戻す。それをきっかけにグレイソンがプレスのスイッチを押します。すると田中雄大、末吉あたりが連動して大分の選手に寄せていく構えを見せます。


すると、前線3枚とダブルボランチが前に出る分ボランチ脇のスペースや、最終ラインとボランチの間にスペースができやすくなります。


岡山のダブルボランチの脇に長沢が下りてきて、そこで前向きを作られてしまいます。こうすると岡山は前にかけた守備力は即座に大分の邪魔ができません。


ボールの前にたちふさがることができるから相手の邪魔ができるわけで、このように抜かれてしまうとこの図のように実に6人もの守備力を発揮できなくされてしまうわけですね。

また長沢は192㎝と非常に長身なので、ハイボールにめっぽう強く右サイドの浮き球に関しては無双状態に近かった。このように降りてきてボールを引き取って、また味方に流していくという中継役をしており非常にやっかいでした。ところが、長沢が組み立てに参加する分、岡山のボックス内に侵入していくのが遅れるので大分がせっかくクロスをあげたのにそこに長沢はいないというシーンも。このあたりはよくあることですが、痛しかゆしというところでしょうかね。



柳(貴)の退場に至るまでの流れについて


次に51分の柳(貴)退場のシーンをチェックしてみます。岡山の右のCKからシーンはスタートします。キッカーは仙波大志。


細かい説明は省きますが、大分のCKの守備はゾーンでゴールマウスの前を全員戻って固めてくる守り方でした。岡山は大外の阿部に合わせてボールを送り、こぼれ球を再び阿部が触ったものの、そこを大分の野嶽に拾われるという流れです。ちなみに関係する人物以外は省略しています。ごちゃつくからね笑


こぼれ球をひろった野嶽がドリブルを開始するのを見て、FW渡邉がダッシュを開始します。この時点での選手の位置関係は多分このようになっていて、(中継の映像が意味不明なアップになっており確認不可能)岡山の最後列には藤田が控えていました。


野嶽から素晴らしいパスが出て、渡邉が独走状態になります。岡山としては完全に守備を崩された緊急事態ですね。


そのままバイタルエリアに侵入した渡邉を柳(貴)が倒してしまい一発退場と。このような流れでした。

このシーンはいろいろと語りがいがあるので、いくつかポイントを挙げてみたいと思います。

(1)リスクマネジメントについて

まず、一番よくなかったなあと思うのがセットプレーで攻めているときのリスクマネジメントのところかなと思います。大分は全員がボックスに入っているので、岡山としては攻撃になったときにパスを受ける選手はいないという意識があったのかなあと。しかし、ボールが収まるとみると渡邉はダッシュしていますし、柳(貴)は遅れています。つまり、攻守の切り替えで出し抜かれてしまった。攻撃しているときの守備の意識に、隙があった。今年の岡山らしくないエラーですね。

(2)藤田の位置に置く選手のチョイス

次に気になったのがCK時岡山の一番後方に配置する守備者のチョイスです。このシーンでは藤田息吹が控えていましたが、このように相手のカウンターに備えてCKとかでも人を残して準備してあるわけですね。だいたいその役割は走力のある選手、スピードのある選手、小柄な選手が置かれやすいんですが、ここのチョイスはどうだろう?という気がします。ここ、本山遥を置く方がよかったのかな?と。藤田息吹の実力がどうという話ではなくて、単純に本山遥のスピードがかなり高いので広いスペースを追いかけっこさせるとかなり強いからです。後ろから追いかけて普通に捕まえるもんね遥は。

(3)ダーセンと一緒に難しい守備をするチョイス

そして3つめは渡邉が完全にドフリーで抜け出したわけではなく、周囲に岡山の選手も戻っていた。そして前にはブローダーセンが構えていると。ならばここで倒して退場せずに、ダーセンと協力してハイリスクな守備でもいからやってみる選択肢もあったのかな?という話ですね。

たしかに、後半残り時間40分以上を10人でやると勝ち目はかなり薄くなりますし、時間が過ぎれば見切って勝点1をという戦い方にはなる。ここで失点しても11人で40分やれるんだからひっくり返しにいけばいいという考え方もある。

けど、なかなかこれは難しいね笑

ただ、このような厳しい状況に追い込まれることは今後もありますし、そのたびに退場覚悟のプレーはできないのも事実。それに、ブローダーセンと一緒にかなり厳しいシーンをセーブしていくというチームプレーでなんとかするシーンをやっていかないといけないよねっていうのも十分にうなづける話だなあと。


山口戦に次ぐ第2の正念場が来ている


ということで、厳しいゲームになりました。岡山としては勝点1を獲るにはとったが課題も出たというゲームだったかなと思います。次節は横浜FC戦ですけど、今後は戦力的に強いチームとの対戦が続いていきます。

いわき戦のあとの山口戦はかなり正念場だったと思うんですよ。いい流れを継続できるのかどうか?、勝つチーム、勝つメンタリティを保てるかどうか?という。そこで勝利できたので今の首位があるんじゃないかなと思います。

そういう意味では次節の横浜FC戦はかなり重要なゲームになってくるなと思います。この試合でも大分がやってきたように岡山の前プレは研究されはがす手法が一般化してきています。食いつかせて中盤にボールを流して、プレスを無効化させるという。藤枝も、群馬も、大分もそうだったでしょう?開幕2節のようにチャンスの山を作れなくなってきている。その大きな要因の一つは、前プレの効果を薄められているからだと思います。岡山対策は進んでいる。

次に気にかけておきたいのはメンバー編成です。この試合もスタメンクラスだと思しき選手が数名姿を見せませんでした。連戦を考慮して、という可能性もありますがもしかしたら様子を見ないといけない状態なのかもしれない。そうすると、これまで出場機会の比較的少なかった選手がどれだけのものを発揮できるか?が必ず問われるでしょう。それが当たり前の状態になってくる。いわばここからが本当の勝負で、岡山の地力が試されるフェーズに入ったといってよいと思います。6月に入るまでのここ10試合がシーズンを決める正念場となりそうな気配がしています。

今年かつてないほど厚く配された選手層が試される時が来ています。なんとか、この難局をうまく立ち回って首位で折り返したい。そのためにはブレイクが必要です。新しいヒーローがどんどん出てきてほしい。守備力は十分ですから、攻撃のところでスタメンを脅かす戦力の台頭を期待したいです。


出場選手の印象


ボランチ:仙波大志

後半一人少なくなり、531のような形で守るシーンが増えました。大分が右サイドの攻撃を増やしていたので仙波のサイドは中⇔外を行ったり来たりしないといけない苦しい状況でしたが、非常によくやってくれたと思います。もともと一列前でもできる攻撃的な力の高い選手ですが、このように守備でも戦える選手になってくると田部井の牙城を崩す選手になっていきそうだな!と。こういうことだよ。こういう選手がどんどん出てきて、はじめて優勝とか昇格とかそういうものが見えてくるはず。期待しています。


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