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『久保建英が語ったドイツ戦の”ミスマッチ”ってなんなの?』について語り合うファジサポのAとB

《登場人物》
・ファジサポのAさん
30年来のサッカーファンでファジアーノ岡山(J2)を応援している。観戦経験豊富だが、サッカー経験はない。説明好き。

・ファジサポのBさん
Aさんの友人。サッカー経験なし。観戦経験もまだ少ない、駆け出しサポーター。

B「あのさあ」

A「お、どした?」

B「ドイツ戦の勝利があまりにもうれしくてさ!」

A「歴史的な勝利だったね!」

B「生で見たときはNHKだったから、今度はAbemaでもう一回みちゃったよ!」

A「解説の顔触れが違うからそういう楽しみ方もあるよね」

B「試合が終わってインタビューとかどんどん出てきてるじゃない?」

A「うん」

B「気になるから片っ端から読んでいってるんだけど、ちょっとわかんないことがあってさ」

A「ほお?どんなの?」

B「この久保選手のやつなんだけど」

A「ああ、これ読んだ読んだ!おもしろかったね」

B「この中でさ、”ミスマッチ”って言葉が出てくるじゃない?」

所属先のソシエダでレギュラーポジションを掴み、9月のドイツ遠征から左サイドハーフのファーストチョイスに上り詰めた久保。指揮官の信頼は揺らぐことなく、カタールW杯初戦でもスターティングメンバーに抜擢されたが、強度の高いドイツに圧倒されるまま、ほとんど存在感を発揮することができなかった。

 原因となったのは相手の布陣とのミスマッチだ。

ゲキサカ 竹内達也

A「久保選手が活躍できなかった理由のひとつにあげられているね」

B「ミスマッチって言葉自体はわかるんだけど、これがサッカー的にどういう意味なのか?がよくわかんなくてさ」

A「あー」

B「なんか大事そうな話だからAに聞いてみようと思って。これ、久保君はインタビューで何の話をしてるの??」

A「OK、じゃあベーシックなところから話してみようか」

B「お願いします」

A「まずは言葉から行こうと思うんだけど、Bがさっき言ったように”ミスマッチ”ってのは意味はわかるでしょ?」

B「うん、マッチしてないってことだよね?」

A「これはサッカー以外でも使われる言葉だから意味は大丈夫だよね。問題はこの久保選手の言うミスマッチ、サッカーの言葉としてのミスマッチがどういう意味なのか?ってことだね」

B「そうそう、そこなんだよ。わかんないのは」

A「ちょっと図を出してみよう」

B「うん」

A「黒がドイツ、青が日本。いまドイツの選手がボールを持っていて、それを久保選手が防ごうといている。こんなシーンを図にしてみたよ」

B「これ2人しかいないけど、話に関係ない選手はここでは書かれてないってことね?」

A「そういうこと、ややこしくなるから除外してる」

B「わかった」

A「で、ひとつ覚えておきたいことは”ひとりの守備者がひとりの相手選手を警戒する”ってのがベースにあるよってことなんだ」

B「ほお」

A「いま、この図では久保選手が相手の選手をマークしてるから、ひとりに対してひとりが付く形になってるでしょ?」

B「そうだね」

A「では、久保選手の近くにもうひとりドイツの選手が来たらどうなるか?」

B「ひとりに対してひとりがベースなのに、もうひとり来ちゃったら多勢に無勢になるね?」

A「そのとおり。そういう状態を数的不利というんだ」

B「あ、それはめっちゃよく聞くやつ」

A「この図の場合、久保選手はひとりで2人のドイツの選手を見ないといけなくなってるから数的不利な状態を強いられてる。こう表現するわけさ」

B「なるほどなあ」

A「久保選手はこんなことを言ってる」

考える暇もなかったし、逆サイドにサイドチェンジされた後に、ふと後ろを見るとやっぱりいつも1枚余っていて、僕が下がらなきゃいけないんだろうなと思いましたけど、

ゲキサカ 竹内達也


B「”余ってる”?また新しい言葉が出てきたな」

A「もう一度さっきの図を出してみよう。仮に久保選手がボールを持ってるほうの選手に付いたとしようか」

B「うん」

A「するとどうなる?」

B「もうひとりの選手がドフリーになるね?」

A「そう、誰もマークにいけなくて人が足りていないでしょ?」

B「あー!それが”余っちゃってる人”ってことか」

A「そういうこと。本来であればひとりに対してひとりついてモレなく防ぎたいところだけど、余っちゃったら防ぎきれないよね?」

B「なるほどなぁ・・」

A「もしBが久保選手だったらどう思う?」

B「え?おれが?・・・うーん、ボールを持ってる選手は自由にしちゃいけないんでしょ?」

A「そうだね」

B「でも、このままだとパス一本出されたら困るし・・・」

A「まさにそのとおり。ミスマッチが起こって、ひとりにひとりがマークにつけなくなると誰が誰を見たらいいのかわかんなくなるんだ」

B「あー、やっぱ迷うんだね?」

A「では、この状況でもし久保選手の近くにもうひとり日本の選手がいたらどうなると思う?」

B「ドイツ2人に対して日本2人だから、"余らなくなる"ね?」

A「そう。こうなるとミスマッチが解消されるってわけさ。ひとりに対してひとりがマークにつくよ!ってベーシックを守れるでしょ?」

B「そういうことかあ。スッキリしたわ!笑」

A「じゃあ、ここまでの話を踏まえてゲキサカの記事を読んでみよう」

原因となったのは相手の布陣とのミスマッチだ。日本は9月のドイツ遠征から4-2-3-1のシステムを採用しているが、ドイツは攻撃時3-2-5のような陣形で押し上げてきたため、4バックだけで守ることが難しく、かといって両サイドハーフが下がって6枚で守ると、ボールを奪ってもいっこうに押し返せないというジレンマを突きつけられていた。

ゲキサカ 竹内達也

B「ふむ」

A「これは記事には詳しく書いてないけど、この試合日本は守備のときは442のフォーメーションで守ってた」

B「うん」

A「一方ドイツのフォーメーションは4231」

B「”ドイツは攻撃時3-2-5のような形で押し上げてきた”って書いてあるけど、これはどういうこと?」

A「ドイツは後ろからボールをつないでボールを運んでいくんだけど、その時に配置が変化するんだ」

B「ほお」

A「特に大きな変化は、左SBのラウム選手がぐー-っと前に出てタッチラインの近くに立つ。そして、もともとそのあたりにいるはずのムシアラ選手は中よりのポジションをとる」

B「あー、これで後ろが3人、真ん中2人、前の方に5人で3-2-5ってことか」

A「そういうこと。これを日本は4ー4-2で迎え撃ったのが前半だね」

B「あ、なんかこうして並べてみるとなんとなくしかわかんなかったひとの位置がイメージしやすくなるね」

A「こんな風に、両チームの立ち位置を重ねてみることを”かみ合わせを見る”なんて言うね」

B「へぇー」

A「さあ、それでは久保選手が何を言っているのか?”ミスマッチ”のことを頭に置いて読んでみよう」

B「待ってました!」

ミュラー選手が落ちてくると(長友と)どっちかマークをつかないといけないし、逆に落ちてこないで前に入ってくるなら、外のニャブリ選手が空くので、そこに長友選手がつかないといけない。僕はピッチでプレーしていて、どこがミスマッチなのかわからなかったけど、確実に僕たちのところは余っていた。

ゲキサカ 竹内達也

A「まずは、”ミュラー選手が落ちてくるとどっちかマークをつかないといけない”ここからいこう」

B「うん」

A「ミュラー選手の位置を図で確認してみよう」

B「これは、トップ下ってやつだよね?」

A「そうそう、FWのすぐ後ろに位置する攻撃的MFのポジションだね。本来ならミュラー選手はこのへんにいるはずなんだけど」

B「”落ちてくる”って話だよね。どこに落ちるんだろう?てか"落ちる"ってなんだ?」

A「正確には覚えてないけど、ミュラー選手が落ちてくるのはこのへんだと思う」

B「ほお。”落ちる”ってのは下がるってこと?」

A「そうそう、位置を後ろ目にすることを”落ちる”って言うんだ」

B「OK、わかった」

A「久保選手の担当エリアにミュラー選手が落ちてくる」

B「うん」

A「そうすると長友選手か久保選手かどちらかがマークにつかないといけない」

B「そうしないと、ミュラー選手が”余っちゃう”ってことだよね?」

A「そういうこと。じゃあ、ミュラー選手に長友選手が付いたとしよう」

B「うん」

A「するとこうなる」

B「うん?おかしいな・・・」

A「どこがおかしい?」

B「ミュラー選手は余らなくなったけど、今度はニャブリ選手が余ってしまうね」

A「そうだね。もともとニャブリ選手を余らせないようにしていたわけだから、長友選手がニャブリ選手を放置してミュラー選手に付こうとするのは現実的じゃない。ゴールにより近いところで”余らせちゃう”と、そこにボールが通ったら一気にピンチになるからね」

B「確かにそうだなあ。記事のなかでこんな一節があったんだけどさ」

A「うん」

久保が苦慮したのは右サイドハーフのMFセルジュ・ニャブリと、トップ下スタートながら右に流れてくるMFトーマス・ミュラーへの対応。DF長友佑都(FC東京)との縦関係で追いかけるには双方ともに移動距離が長すぎた。

ゲキサカ 竹内達也

B「移動距離が長すぎると書いてあるんだけど、これは今の長友選手がミュラー選手に付こうとするときみたいな感じ?」

A「そうだね。この図ではミュラー選手にビタッっとついてる絵になってるけど、それは説明する便宜上のことでね。実際にはニャブリ選手のところからミュラー選手のところへ寄せるには距離があるから時間がかかるでしょ?」

B「そうだね」

A「相手もじーっと待ってるわけじゃないから、ミュラー選手にボールが収まるころには長友選手が間に合わずに全然距離を詰めれない状況になる」

B「遠すぎてミューラー選手を余らせない状態にするのが難しいってことか」

A「じゃあ、次に久保選手がマークにつく場合。こちらもこちらで難しいんだ」

B「ほお」

A「久保選手がミュラー選手をマークに行く」

B「うんうん」

A「すると、久保選手とボランチの田中選手の距離が空くので、ズーレ選手からタテにつけるパスが出しやすくなってしまう」

B「あー・・・中を空けたら空けたで難しいのか。これは困るなあ」

A「久保選手はボールを持ってるズーレ選手を含めてこんなことを言ってる」

B「ふむ」

すると大外からズーレ選手が出てきた。センターバックなのでサイドバックよりも器用というか、センターバックのボールの持ち方でサイドバックに入ってくるので、そうやって中を見せられると中を切らなきゃいけない。それで外のミュラー選手に通されて、2度追いになって、2度追いしてもまた戻されてというふうに本当にプレスがハマらなくて、すごくキツかった

ゲキサカ 竹内達也

A「久保選手はミュラー選手を余らせたくない」

B「うん」

A「しかし、ミュラー選手に寄ると中が空く、そこをズーレ選手が狙ってくる」

B「困るパターンのやつだ」

A「しかたないからミュラー選手を余らせて中に戻る久保選手」

B「するとどうなるんだろ?」

A「余ってるミュラー選手にパスが出てしまうという・・・」

B「困るパターンばっかりやないか!」

A「追いかけても追いかけても振り回されてプレスがハマらない。それでしんどかったと言ってるね」

B「もどかしい・・・」

ミュラー選手が落ちてくると(長友と)どっちかマークをつかないといけないし、逆に落ちてこないで前に入ってくるなら、外のニャブリ選手が空くので、そこに長友選手がつかないといけない。僕はピッチでプレーしていて、どこがミスマッチなのかわからなかったけど、確実に僕たちのところは余っていた。

ゲキサカ 竹内達也

A「次に、ミュラー選手が落ちてこないで前に入ってきた場合、久保選手はなんて言ってるのか?を見てみよう」

B「うん」

A「ミュラー選手が前に入ってくる。ここはたぶん、長友選手の前という意味だと思う」

B「横にズルっとずれるかんじだね」

A「そうなるね。この時も長友選手がミュラー選手にビタっとついてしまうと?」

B「外のニャブリ選手が”余る”」

A「お!いいね!」

B「やっぱニャブリ選手のところ???になっちゃうなあ」

A「じゃあ、今度は久保選手がミュラー選手を気にして下がったとする」

B「うん」

A「久保選手が下がると今度はズーレ選手の前に邪魔できる日本の選手がいなくなるからどんどん前にボールを運ばれて押し込まれてしまう」

B「うーん・・・・どうすりゃあええんじゃ!」

A「ドイツはこういう日本が困ることをやってくるのがとても上手なチームだったね」

B「いやー---、Aの説明を聞いてかなりスッキリしたよ!ありがとう。久保選手が何を言ってるのか知りたかったからすごく助かった!」

A「それならよかった」

B「それにしてもこんなのよく勝てたな日本は」

A「まあ、この試合の前半にもう一点取られていたらさすがにドイツ相手に2点ビハインドは厳しかったと思うので、かなり運も味方してたと思うよ」

B「なんかサッカーってこんな風に見るとなんかパズルを解くみたいだね」

A「そうそう!ロジックパズルを解くみたいな楽しさがあるね」

B「あのさあ」

A「うん」

B「Aはこの試合生で見てて、ここまで話してくれたようなことを考えながら見てたの?」

A「いや、全然」

B「違うのかよ!笑」

A「だってドイツの試合なんて一度も見たことないし、選手の名前すらしらないからさ」

B「ああ」

A「自分はファジアーノ岡山専用機なので、自分とこの選手やチームのことならある程度分かるけど、ドイツも日本も大して知らないから初見でここまで”ははーん、そういう仕組みか!”みたいに観るのは無理だね」

B「そういうもんなのね」

A「まあ、でも、知識をたくさん持ってるひととか、分析的にサッカーを観る力が高い人は初見で見てもきっと”お?これは!”みたいに気がつくんだろうなと思うよ」

B「Aもおれからすると力高いと思うけどどうなん?」

A「生観戦で分析的に見るのは苦手なのよ・・・。この試合みたいに緊張感があってドキドキしながら見てるときは特に」

B「そういうもんなんだねえ」

A「まあ、それでも”ん?なんだかおかしいな?”くらいは感じるかな」

B「へえ。それはどういうとき?」

A「さっき話した”余ってる”ときなんかはそうだね。相手の陣内深くで余ることができればチャンスなわけだから、余る理由みたいなものがきっとあるんだろうなあと思いながら見てるかな」

B「あ、じゃあ、次試合観るときは”誰がどこで余ってるか?”発見するといいのかもね」

A「そうだね!それだけでも頭に入れとけば、少なくとも”なんか異変が起きてるかも!?”ってサインをキャッチできるかもしれない」

B「ありがとう!コスタリカ戦がめちゃめちゃ楽しみになってきたよ」

A「はじめてのW杯を大いに楽しんでくれたまえ」


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