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【名探偵コナン】黒鉄の魚影(サブマリン)の感想



はじめに

満を持して公開された劇場最新作、黒鉄の魚影。
早速三回観に行ってきたので適当に感想を語ろうと思います。
ちなみに私はドラゴンボールやバイオハザードと違ってバーローに関しては拗らせてはいないつもりですが、割とガチ勢です。

単行本派なので連載の最新情報が飛び交う考察合戦には参加できていませんが、古くは未回収の焼けたMOとかAPTX4869の効能・ベルモット不老の理由やあの方の正体まで個人的に様々な考察を抱えています。
まあ、そんなオタクの視点による感想であることはご了承を。

所感

まず結論から言うと平均よりは一段上、くらいの出来だったと思います。
公開直後に一回、翌週に二回見た時は新作ブーストもあって良作ゥ!! という感じだったのですが、少し期間が空いて三回目を観てきた今では色々と冷静になっておりこれくらいの評価に落ち着いた感じです。
ただ、私は好きです。この点については最後に。

前作にあたるハロウィンの花嫁も中々の良作映画ではあり、続く期待感を裏切るようなものではなかったことは確かです。
ただ最も期待していたところを外された感もあり、そこは後に語ります。

私はドラゴンボールやらバイオハザードやらテイルズやら、色々と漫画ゲーム等問わず好きなシリーズが色々とあるのですが、中でもバーローは最も公式への信頼感が高いシリーズです。
今回もそこを細かい点で示してくれたことは好印象でした。


灰原哀(宮野志保)について

内容についてはキャラクター別に。
今回のメインキャラクターである灰原ですが、素晴らしかったです。
天国へのカウントダウン以来となる灰原メインでしたが、その空きに空いた期間を埋めるに足るだけのてぇてぇ……となる供給でした。百合もね!!

元々灰原は非常に人気のあるキャラで、原作者も「このキャラはこれくらいの人気が出るだろうなというのが大体分かるけど、灰原だけは予想を遥かに超えた」みたいなことを言っていましたが、そこに更なるブーストがかかったのは間違いないかと。灰原ァ!! 100億の女になれェ!!

今回私が一番評価したいのは直美・アルジェントとのくだり。
これは見出しを灰原哀(宮野志保)とわざわざ括弧をつけて志保を入れた理由にも繋がるのですが、灰原ではなく志保を掘り下げてくれたのは嬉しい。

実は作中で純粋に志保を見てくれるキャラってほとんどいないんですよね。
灰原哀としての志保しか知らなかったり、エレーナや明美を通して見てたり、年季の入ったピュアな志保ストーカーであるジンニキでさえ見ているのはシェリーであって志保じゃない。
いつも裸は想像してるけど。このむっつりスケベがよ……!!

そんな中、直美は灰原もシェリーもなく純粋に志保を見てくれる多分唯一のキャラクター。そんなことを考えながら見ると二人の会話は基本てぇてぇのですが、中でも私が一番好きな台詞がこれ。

「子供だから何? あなた、世代間の差別もなくしたいんじゃなかったの?」
子供の言葉や行動で人生が変わることもある。私はそれを実感して変われた。だから、私を信じて!!

はい4869てぇてぇポイント!!
ここはやっぱり公式は作品のことを分かってる!! となったところ。
何が良いってこの台詞、明らかに歩美のことなんですよね。

歩美ちゃん可愛い

歩美のこの言葉は灰原の人生を変えたんですよね。
もし灰原がここでジョディの提案通り証人保護プログラムを受け入れていたら、安全は確保できたかもしれないけどそれで他の人たちの関わりは完全に絶たれていた。

バスジャックの時といい組織の陰に怯え続けていた灰原が証人保護プログラムという確実な逃げ道を自ら断って危険の中に身を置き続けているのは、歩美のこの言葉があったから。
まさしく子供の言葉や行動で人生が変わった瞬間です。

そんな灰原がその経験を踏まえて直美に手を差し伸べるシーンは、高い原作理解度に裏打ちされた地味ながら本作屈指の名シーンだと思っています。
やっぱり歩美ちゃんだね!! 光彦も頭が良いし、元太はうな重食べるのが上手い。

しかし今作の灰原無双は直美のシーンだけに留まりません。
純粋にヒロインとしても最強でした。おめえ……まだ上があるんか……!?

私はCP厨ではないので別にその点であれこれ騒いだりはしませんが、コ哀ガチ勢は過剰供給によるコ哀中毒で心停止したのではないでしょうか。ほら、酸素だって過ぎれば毒だし。

中でも抜群の破壊力を誇っていたシーンが二つありましたよね。
ひとつは潜水艦から脱出後のくだり。

「待たせるの好きよね、新一君」

あれれ~?? おっかしぃぞぉ~??
今まであなた、江戸川君と工藤君って呼んでましたよね?
新一君って!! 阿笠博士じゃあるまいしなんで突然新一君なんて呼び方したんですかぁ~??(ウザ絡み)

いやまあ実際のところ、これは不意打ちでしたね。
録音して後でめちゃくちゃ弄り倒してあげたい。

もう一つはやっぱりキミがいればが流れるシーン。
私たち、キスしちゃったのよ……。まあ、灰原はこの後女にも手を出すわけですが(言い方)、そのラストシーンの爆弾については最後に。

というわけで、灰原の満足度は極めて高かったです。

直美・アルジェントについて

先の志保の話と密接に関わってくるので続けて先に直美を。
既に語った通り直美はおそらく唯一、志保を同じ立場から知り純粋に志保を見てくれる人物として登場したことで唯一無二の立ち位置を確保したキャラクターです。

まさか志保の幼少期の話を活かしてくるとは思わず、ここは個人的に相当ポイント高いです。高い原作理解度がないと思いつかない展開。

とりあえず志保をいじめていたカス共は順に全員ブチ殺すとして、同じく東洋系の直美が先にいじめられていてそれを庇ったことで志保が標的になったということが分かりました。
こういう解像度の上がる原作の掘り下げは本当に好印象。

ずっと志保に謝りたかった、ずっとお礼を言いたかった。
そんな思いと過去の体験が直美の原動力となり老若認証とかいうマジヤバシステムを完成させてしまいます。何が老若認証だ!! とんだクソシステムじゃねえか!!

しかしそのせいで組織に目をつけられてしまい、志保を危険に晒すことになってしまったのは皮肉なものです。しかも父親までも失うことに。

このパパンが撃たれるくだりは正直今作のピークだと思ってます。
シリアス度というか緊張感や危機感が最大に達するシーン。
それだけにパパンはあそこで死なせておくべきだったと正直思います。
コルンが狙撃で命中させながらも仕留め損なうとは思えないし。

目の前で父親を殺され泣き叫ぶ直美、ニヤつく内心興奮してそうなウォッカ、涙する灰原。やっぱりここがピークよね。

直美は灰原にあり得ないけど志保の子供? とか聞いたりしていました。
まあ志保は18歳だし……流石に小1の子供がいたら色々まずい。コナンシリーズ存続の危機。

もちろん直美もそんなわけないとは分かっており灰原がシステムで志保としてヒットした理由は分からない、と。

セーーーフ!!
流石に死んで退場するわけでもない劇場版ゲストキャラに正体がバレるわけにもいきません。危うくセーフ!!

あなたみたいな子供に何ができるの!! とか言っていましたが、灰原に見送られて発っていくラストシーン。
実に嬉しそうで穏やかな笑みで、

(また会えて嬉しかったわ……志保……)

いやバレとるやんけ!! 
組織についてもAPTX4869についても何も知らない直美ですが、最終的にはこの子供が宮野志保であると確信していました。
自分の作った老若認証システムに絶対の自信がある故かな? 何が老若認証だ!! とんだクソシステムじゃねえか!!

かくして直美は灰原=志保を知る数少ない人物の一人となりました。
志保に謝罪とお礼を伝えることこそできなかったものの、直美にとってこの出会いはまさしく人生を変える転機となったことでしょう。てぇてぇ。

灰原=志保も組織の存在も知っていたり、老若認証とかいうマジヤバシステムを作っていたりと色々難しい要素はてんこ盛りですが是非原作に逆輸入してほしいキャラですね。

先に語った通り唯一無二の立ち位置にいるキャラであり、各劇場版ゲストキャラでも間違いなく一番好きなキャラクターとなりました。
とりあえず、志保をいじめてた奴らを老若認証で探してもらえるかな? 大丈夫大丈夫、きっと多分もしかしたら何もしないから。


ピンガについて

こんなイカした髪型してるけど、ジンもどきである

アイリッシュ、キュラソーに続いてある意味今作の目玉キャラでもあった新組織キャラ、ピンガ。
まさかの女装キャラで登場です。インパクトは大事だからね、仕方ないね。

で、そのピンガですが正直まあ……色々と薄かったかな……。
アイリッシュもですが、何より前回のキュラソーが良かっただけに期待値が高すぎた説はあるかもしれません。純黒は全体で見れば色々とアレなところも多かったですが、キュラソーのエピソードは本当に良かったです。

あれは劇場版全体で見ても最高峰に好きなエピソードだっただけに、続くピンガの薄さは際立ってしまったイメージ。
ただこれはキャラ立ての失敗とかではなく、公式の意図通りでしょう。

「お前ジンにそっくりだよ、って言いたいところだが……ヤツならこんなヘマはやらねえ」
「ジンもどきのただのチンピラってところかな」

煽り全一のバーローに揶揄されると煽られ耐性0のピンガくんはすぐ発狂してしまいました。曰くジンに似てるってだけで虫唾が走るのにそれより下のもどきと言われたのが気に入らないらしい。普通にレスバ弱そう。

まあジンは無能だの何だの色々とネタにされてはいますが、ほとんどは小五郎の時のように絵面が面白いから弄られるだけで冷静に考えると妥当な推理をしていたり、赤と黒のクラッシュのキール奪還や海猿島に逃げたキャメルを追う時など名探偵ばりの推理力を披露しています。

神の視点である読者だからあれこれ好きに言えるだけで、割と引き際もしっかり弁えていたりもします。狙撃もできるしジェットコースターにも乗れる。

まあ、ジンもどきくんも25歳だし5年間もグレースを演じていたということはエンジニアの腕は本物なんだろうしラムのお気に入りにまでなっているんだから有能なんでしょうが、いかんせん作中ではそれが全く見えない。

年齢もあってか組織キャラには珍しい(というか唯一)のチンピラ口調だし、バーローの目にも劣化ジンに見えたようで、発狂してるシーンを見て私も(うーん、これはジンもどき!!)と正直思いました。
twitterでクソリプ合戦してそう。

ラストシーンではその蹴落としたいジンに消されてしまったわけですが、ピンガが消息を絶った→(やはりあの爆発に巻き込まれて……?)と死亡が明言されず微妙な生存フラグを僅かに残しているのが気になります。

一番驚いたのはグレースとピンガの声優が同じだったことです。
ところでラムはピンガくんのどこが気に入って側近にまでしたの??


キールについて

ぐうの音も出ない有能

今作No.1の有能です。
キール、水無怜奈。組織潜入中のCIAなわけですが、今回は本当に縁の下の力持ち的な有能ムーブをかましまくっていました。

冒頭では結果的に失敗したとはいえ組織に狙われた人間を逃がそうとし、灰原を縛った際には見た目にはしっかり結んでいるようで解けやすい結び方をしていたり、灰原に仕掛けられた盗聴器に気付きながらも気付かないフリをして脱出のヒントを次々与えていました。
果てはジンに殺されかけた灰原と直美の命を救いまでしました。

うーん、これは有能!!
素直に潜水艦のあれこれを全部レクチャーしてくれたウォッカもある意味有能です。優しい。

今までは特別目立った活躍があったわけではないだけに、ここにきてキールがこういう形で活躍してくれたのは嬉しいです。霊圧が消えた瑛祐くんも草派の陰で喜んでおる。

そして私が今回一番好きなのは直美の父親が撃たれるシーンのキール。
父さん!! と泣き叫ぶ直美を見て思い出したのは父親・イーサン本堂の最期でした。そして瑛海がキールのコードネームをもらって幹部入りするきっかけにもなった一件。

「諦めるなよ、瑛海!! 待ち続ければ必ず味方が現れる!!」

自分が原因で父親を死なせてしまったあの時と目の前の直美を重ね合わせ、拳を震わせるシーン。CIAの一員として、目の前で父を失った経験者として助けたくても助けられない悔しさや無力感、申し訳なさが見えて好き。

こういうところでさらっと原作ネタを拾ってくるあたりが公式への信頼感が高い理由なんですよね。全日本8000兆人のキールファンもこれにはニッコリ。

ベルモットについて

今作No.2の有能です。
元より敵でありながら味方のようなムーブをすることも多いベルモットですが、今回もそれが遺憾なく発揮されました。

パシフィック・ブイを沈めたり直美を誘拐したりする一方、助けてもくれたベルモット。というか、今回は今までと違って明確に灰原がシェリーであるとバレてしまったため、どう収拾つけるのかドキドキしながら観ていました。直美パパンが撃たれたシーンと並んでここはピークかも。

よく見るとウォッカくん割と全方位敵で草

最終的にはベルモットがシェリーに変装して各地に現れることで難を逃れました。何が老若認証だ!! とんだクソシステムじゃねえか!!
キールがいなければそもそも脱出不可能で殺されていたし、このベルモットの行動がなければ脱出しても詰みでした。ちゃんとベルモットにありがとうしなきゃね?

上手いなと思ったのはベルモットが灰原を助けた理由。元々灰原=シェリーがバレると新一のことも一緒にバレるから助けざるを得ないところはあるんですが、まあ最初の婆ちゃんがベルモットだったとは流石に予想外。

(追記)
ただここは少し疑問点でもあって、婆ちゃんがベルモットなら灰原の組織センサーが反応しなかったのは何故? センサーが鈍くなってきてるみたいな話はあったもののなくなったわけではないし、過去ベルモットにも反応してるし、あそこまで接近してて組織の人間だと分からないことある?

ベルモットはシェリーのことは諦めると発言しています。
ただ同時に、たとえばミステリートレインの時のように自分が手を下さないだけでシェリー絶対殺すウーマンであることは変わりありません。宮野夫妻に対しても同様の感情を抱いているようです。

(彼女だけはこの世にいてはならないのよ……)

ベルモットがここまで言うほどシェリーを殺したがる理由は未だ不明ながら、ベルモットが何故か歳を取らないことを踏まえるとAPTX4869が理由だとかねてより考察しています。

私の考察はAPTX4869は不老不死を目指したもので宮野厚司・エレーナ夫妻が研究を進めていた。研究が志保に引き継がれる前に夫妻の試作品的なものをベルモットがなにがしかの経緯で服用することになった。

しかし薬は不完全で、不老にはなったが不死ではなかった。
更には何らかの副作用でベルモットの体は蝕まれている。
故にベルモットは宮野夫妻、そして研究を引き継いだ志保を憎んでいる……というもの。

ただこれには色々穴もあって、まず灰原が(私が作らされていた薬は本当は別のものなんだけどね……)という発言。APTX4869ではない説。

また、不老不死を目指して開発がスタートしたなら烏丸蓮耶の指示にまず間違いないものの、宮野夫妻が研究を始めた時には年齢的に烏丸はもう死んでると思うんですよね。

それが生きているということはそれより前にAPTX4869かその先達となるような何らかの薬を飲んでいると予想され、順番がおかしくなる。

……という脱線話は置いておくとして、そこまでシェリーを消したがっているベルモットがブローチひとつの礼で命まで救ってくれたことには、もしかしたらまだ何らかの明かされていない背景があるのかもしれません。
A secret makes a woman woman。ベルモットも謎が多いキャラだしね。

地味に犬を飼ってるのが判明しましたね。
あと、ネグリジェ? やバスローブ姿などえっちな恰好が多かったので好きです。

その他キャラについて

健康診断で肺引っかかってそう

ジン、ウォッカ。
ジンについては相変わらずでしたが、ウォッカは今回目立っていた印象。
キールを通して灰原や直美を救出する影のMVPでもあります。そろそろジンに消されそうだよね

面白かったのは灰原の誘拐をピンガにやらせると話していたシーン。
ベルモットには計画外の行動は控えるべき、バーボンには計画の失敗を招く、キールには身体の調子が戻っていないと次々誘拐反対を食らって「お前らと手を組む気はこっちもない」とか吐き捨てていましたが、

ウォッカさん、割と今四面楚歌ですよ。

ベルモットはシェリー殺すウーマンだけどちょいちょい味方もするし、バーボンは公安だしキールはCIAだしちょっとウォッカが可哀想になりました。

(追記)
そういえば今回、初めて? 組織の一般構成員ががっつり登場しましたね。
いやジン、ベルモット、キールとかのコードネーム持ちは幹部なわけで一般構成員がいるのは当たり前なんですが、ちゃんと描写されたのは記憶の限り多分初めてでは?

赤井がそうだったように、ああいう人たちの中で有能ムーブを決めて評価されたものがコードネームを与えられて幹部になるんでしょうね。


毛利蘭

むしろ何故銃弾程度避けられないと思うのか

蘭姉ちゃんことランネー・チャン。
今作でもその極まった戦闘力は健在でした。
しかも今回は寝起きでありながら灰原誘拐の気配を察知し即座に二階から跳躍。普通に車を破壊してナイフを持ったピンガを追い詰めて手痛い一撃を叩き込みました。

もう京極さんと蘭姉ちゃんだけでいいんじゃないかな。

赤井秀一、安室透

赤井秀一、安室透。
正直この二人については不安でした。
というのも、人気があるから仕方ないとはいえ正直流石に出しゃばりすぎだと思っていたからです。異次元と緋色、執行人と花嫁と事実上メインの映画を二本もらっていながら純黒のように他でも活躍している二人。

もちろん全く嫌いとかではないものの、今作でもポスターにやたらデカデカいるもんだから怖かったんですが、杞憂でした。
特に赤井は少ない出番でしっかり美味しいところを持って行った感。

「海自が来る前に済ませろよ、ライ」
「もちろんそのつもりだよ、バーボン」

スコッチ……諸伏の件で(主に安室が一方的に)毛嫌いしている二人ですが、この会話好き。

ただ、灰原救出は任せて潜水艦に専念してくれと頼まれたからとはいえ赤井が灰原救出に何も噛まなかったのはちょっと引っかかりました。
それで明美に顔向けできるんか?


「キミがいれば」について

花嫁に続いて流れたボーカルありのキミがいれば。
正直流し始まりは完璧でした。灰原の吐露に合わせて静かなアレンジで流れた時はひょおおおおおおおおおおおおッ!! ってなりました。

あんなに美しい入りはこれまでなく、歴代最高だったと思います。
ただ、その後がいまいちでした。基本的にキミがいれば、というかメインテーマが流れる場面はクライマックスで熱いシーンだったりカタルシスに溢れていたりするわけですが、今作は特にそれがない。

まあ、キミがいればをバックにピンガくんが爆死するシーンは中々に草生える面白ポイントではあったものの、あとは陸に上がってなんか一発ボール蹴っ飛ばしただけで別に窮地を賭けで切り抜けるシーンとか敵と決着をつけるとかそういうわけでは全くありません。

あれなら最後まであの静かなアレンジを貫いて雰囲気出しに徹した方が良かったのでは? あとボーカルありは滾りますが、連発するとありがたみが薄れるのでしばらくは控えてほしいです。

花嫁で滾ったのは十字路以来超久しぶりの復活だったからなのでね……。


未回収の伏線について

今作では三つほど何かの伏線? と思いながら何もなかったくだりがありました。それが残念だったところです。

ひとつは鯨。
主題歌は「美しい鰭」、作中でもホエールウォッチングだの鯨の鳴き声の話だのが色々とあり、鯨が何かしら絡んでくると思ってましたが何もありませんでした。あの鯨押しはなんだったのか……?

灰原の暗喩的な考察も見ましたが、原作で灰原が言っていたのは「蘭は人気者のイルカだけど自分は意地汚いサメ」ということなので鯨をたとえに使ったことはない。何故?

ちなみに今回の主題歌「美しい鰭」ですが、かなり好きです。

ひとつは解毒薬。
灰原が誘拐された後、蘭と電話していたバーローがいざとなったら駆けつけてやると言いながらAPTX4869の解毒薬を見つめるカットがありました。
ええ、飲みませんでした。

あんなシーン入れて戻らないなんてことある?
まあ今回は灰原メインだし新一じゃなくて志保に戻るのかなとか思っていましたが、何もなし。だったらあのカット要らなかったのでは?

ひとつはピンガとの交渉。
バーローが言っていたピンガに交渉を持ち掛けるという話。
結局そんな展開にはならなかったわけですが、一体何をどう交渉するつもりだったのか……?

未回収の伏線といえば原作にもたくさんあり、古くはピスコの時のさりげなく灰原が回収していた焼けたMO、明美から赤井へのメールのPS、板倉のソフト、組織が半世紀前から進めていた極秘プロジェクトとか色々ありますが、あまり話題にならないけどずーっと気になっているのはこれ。

倉吉に何があるっていうんだ灰原ァ!! というか未回収伏線の大体は灰原が喋ってくれればそれで判明することだぞ灰原ァ!! 隠すなジンに突き出すぞ灰原ァ!! 

最大の不満点

今作で私が一番残念だったのは、灰原が中盤あたりであっさり救出されたことです。組織にシェリーだとバレる→誘拐される→直美のパパンが処されるあたりの流れは緊張感もあって素晴らしかったものの、その脱出はあっさりだっただけでなくキールアシストがあったとはいえそもそも普通に自力でやってしまいました。

組織の手に落ちた灰原をどう助けるか、それが今作最大の見どころだと思っていたし奪還の過程が今作のクライマックスだと思っていただけに、あんなに早くあっさり流されるとは予想だにしていませんでした。

もしその劇的な救出劇がクライマックスであれば、キミがいればももっと映えたのかもしれません。

ラストシーンの爆弾について

今作最大最後の不意打ちです。
言うまでもなく、灰原と蘭姉ちゃんのキスシーンです。
百合!! 百合!!(上映中に席を立ちながら)

なんということでしょう。コ哀だの新蘭だのでわちゃわちゃしてる中に突如彗星の如く現れた新勢力。一体誰がこんな展開を予想しえたというのか?
てぇてぇってレベルじゃねーぞ!!

コ哀? 新蘭? 安哀? ジンシェリ?
ええいそこをどけ!! 蘭哀のお通りだ!!
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお蘭哀最強!! 蘭哀最強!! 蘭哀最強ぉぉおおおおおおおおお!!


総評

はじめにで語った通り、冷静になった結果平均よりは一段上、くらいの印象です。灰原好きとしては灰原メインの今作には色をつけたいところですが、基本的に大切なのは作品としての出来であって自分の好きなキャラが活躍したからとかそういう評価の仕方はしません。

劇場版は当たり外れ激しいです。紺碧とか向日葵、ストライカーとかは悪名高いですね。ケルッテイウヨリ、コスリアゲルカンジカナ
まあとりわけ紺碧は実際クソの山だからね、仕方ないね。

基本的に劇場版は三つの軸で自分の中で評価しています。

 1.推理要素がしっかりあるか
 2.キャラの使い方
 3.最後のパニックパートの緊張感

1の推理要素については当然ですね。あたしゃアクションが見たくてバーロー追ってるわけじゃないんで。おい、推理しろよ状態はちょっとね。純黒なんかはキュラソー周りの話はとても良かったんですが推理要素ゼロでした。近年だとから紅なんかはこの点良かった印象。べ、べつに和葉の可愛さに釣られてるわけじゃないんだからね!!

2のキャラの使い方。
上手い動かし方してたりなんでいるの? がなかったりとかそういうこと。
ゼロの執行人の少年探偵団が分かりやすい例だと思います。
あれは自然な活躍のさせ方で個人的にかなりポイント高いです。流石元太、ドローン操作できる上にうな重まで食べれるなんて只者じゃねーぜ!!

3のパニックパートの緊張感。これは自分の中で評価の比重割と占めてます。ここがなかったり低かったりすると「え、あ、もう終わりなんだ?」って尻すぼみ感。楽譜なんかはそのいい例です。花嫁もこの点はもうちょっと欲しかった。

逆にここが良かった好例が銀翼です。銀翼の他の部分はお世辞にも良いとは言えませんが、最後のパニックパートはかなり良かった。この一点突破で私の中では銀翼は割と悪くない位置につけています。絶海なんかもここは良かったし、執行人は飛天御剣流ばりの隙を生じぬ二段構えのパニックパートで随一の出来でした。
ちなみに、私が一番好きな劇場版はダントツで「瞳の中の暗殺者」です。

こうして見てみると、今作って2以外は割とどれもいまいちなんですよね。
推理要素はレオンハルト毒殺のところだけで飾りみたいなもんだし、パニックパートに至っては最早存在しなかったと言っても過言ではない。

キャラの使い方に関しては直美の立ち位置や赤井の差し込み方、キールの活躍のさせ方など光るものはあったんですが……。

……というのが、何様だよという視聴者様視点の「評価」です。
主観的な「好き嫌い」と第三者的な「評価」って別物なんですよね。
何事もそこを混同させてはいけないと思っています。

ドラゴンボールで言えば私はヒーローズは好きじゃないですが、10年以上続いていてシリーズに新規層を取り込み続けているヒーローズは心から本当に凄いと思っています。

超だって好きじゃない人は大勢いるでしょうが、超がドラゴンボールブランドの売り上げにどれほど貢献しているかはバンナムの決算報告等を見ればすぐに分かることで、それは誰にも否定できない純然たる事実です。

それと同じで、黒鉄の魚影は上から目線で評価するのであれば平均より少し上、くらいだと思っていますが私個人の好みで言うのであればもっと上にきます。そして、どうしても私は好みを優先する人間なので魚影は良作判定です。クソゲーだけど自分は好き、とかそういうのあるじゃん?

ややこしくなりましたが、要するに「黒鉄の魚影は平均~ちょい上くらいの出来に収まってるけど、私はとても好き」というのが結論です。なげーよ。

来年はキッドと服部ということで、初見は友人たちと4人で観に行ったんですが上映前に来年映画の予想会やってたんですよね。
キッドか服部だろうという予想になったんですがまさかのWビンゴでした。

キッド映画は山ほどやってますがこういう珍しい組み合わせなら新鮮みもあるし、流石に灰原メインの組織ものというインパクト抜群だった今作ほどではないですが期待値は高めです。キッド映画は微妙の法則を覆してほしい。

ところでもう何年もず~っと世良ちゃん映画待ってるんですがまだですか?
完全にレギュラーキャラだし、京極さんがOKで世良ちゃんがこないの真剣に謎なのでお願いいたします。

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