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東武ワールドスクエア

東武ワールドスクエア

幼少時、近くの中学校に東京タワーを模したと思われる三メートルほどの鉄塔が建っていた。その鉄塔のたたずまいに何故か心惹かれるものがあった。今、その中学校には娘が通っている。鉄塔はもうない。

何かの建造物を模して小さく作り替えたものが好きだ。だからといってプラモデルのような小さいものではなく、ある程度大きさのあるもの、ちょうど三メートルの簡単な鉄塔のような。

東武ワールドスクエアには十五メートルほどのスカイツリーがある。過去、二度行った。一度目は冬、二度目は真夏。山を後ろに、ワールドスクエアはぽつんとある。真夏、陽を遮るものがほとんどない。

その夏は三十度で涼しいような酷暑で、その日も三十何度という快晴だった。一家と私の母、一行五人は入場する否やとてつもない暑さに見舞われた。ただいるだけで汗が滲む。子供たちには帽子をかぶらせたが、スクエア全体が低温サウナのようにミニチュアの町や建造物を蒸していた。ご自慢の新名所、スカイツリーもダリの時計のようにたゆんでしまうような狂暴な暑さであった。

その暑さのなかでミニチュアの東京駅、ピサの斜塔、万里の長城、サクラダファミリア教会、その他万国の歴史的建造物などを見て回ったのだが、まず、一時間が限界だった。途中、保冷剤の小さいものや、霧吹きの水がでている場所、休憩所もあったがそれでも余りに暑すぎた。

子供らの祖母は暑い中、エアコンをつけるのがもったいないのか、嫌いなのか、暑さになれていて一番元気だった。もっともバテていたのが私だ。そして思った。ここまで精巧に再現されていると何か鑑賞の対象になってしまう。幼少時に見たあの鉄塔の、遊具なのか模型なのかよく意図のわからない粗末なたたずまいが逆により懐かしく思いおこされるという次第だった。

校庭のはじっこにぽつんと建っていたあの三角の鉄塔。中学生が遊具にするにはか細く、微妙な高さの華奢な鉄塔。とにかくとんでもなく暑い日に東武ワールドスクエアに家族で行った。

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