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行分け日記 有難み無い


初ものの
トウモロコシ
旨い

甘い
食べ物は
どんどん甘さに
向かう

玉ねぎも甘い
枝豆も甘い
わさびにすら
甘味が
いや
無いよ

脂が
甘い
ぷりぷり
ふわふわ
もちもち
甘い
これが
現代の美味基準

青臭い
ほろ苦い
酸っぱい
思春期じゃ
あるまいし

トウモロコシは
列を無視して
かぶりついた方が
甘い
一列ずつ
ほぐして食べると
根元に
甘さが
打ち消される
と思う

妻は
一列
キレイ派
指でほぐして
皿にのせる

それひょっとして
俺の?
そうだよ

わしづかみで
口に放り込む
ありがたみのない男
と言われる

小さいケーキ
一口でペロリ
ありがたみのない例
気取った椀物
一気のみ

その方が
おいしいから
絶対

熟読と
斜め読みと
速読と

どんな本を
どう読めば
一番愉しめるのだろう

ある詩人の
詩集は
読み飛ばした方が
面白かった
何回も
読み飛ばす
暇になったら
手を伸ばす本

サイズ
重さ
装丁

厚くて
字がみっしり詰まってて
重くて
面白くない本
ありがたみが
わからない男

淹れてもらった
コーヒーも
冷めてから
がぶ飲み

ギリシャの
壁画に
少年が
陰茎にセミを
止まらせている
サフラン摘み
挿画と
本文 題名
ごちゃ混ぜ

読んだ本も
そんなもんだ
おいしく食べても
身体を
通り過ぎるだけだ

何人と
身体を合わせても

斜め読みみたいなもので

そう思っておいた方が
しあわせ
それとも
ふしあわせ

意味わかんない
言われ慣れた
三十年以上
言われ続けた

おいしい
二十年で
数えるほどしか
言ってない

終わらそうとしなければ
終わらない
物だね
書き物なんて

いいことを
言おうとしなければ
いくらでも書ける
いい事と言っても
自分がいいと
思っているだけ
みんなが
いいというものは
誰かがもう
書いている

きれいに
摘まれて
穴が整列している
妻の
トウモロコシの

生ごみ

自殺って
ずるいよね
さあ
考えたこともない


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