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潮溜まりの思い出

私が住んでいるところからは行くとして四つの
海 内房 外房 湘南 茨城 泳げる海という
前提で 何年か前 お台場あたりが海水浴場
として開放されたようだが かなり抵抗がある
葛西あたりも水に浸かってしまう人がいるが
遊泳禁止には理由がある 水が遊泳に向かな
かったり 底地の形状が危険だったり

内房と湘南の海は黒かった 外房は忘れた
御宿に行く途中 電車が物凄く混んだ もうこ
の世にはいないだろうが60代くらいの女に無理
やり席をどかされた しばらく停車する駅で つ
れがトイレに立った そこを すごく疲れてい
るの と言われて無理に座られた とても印象が
悪い

茨城の海はきれいだ マリンブルーの海ではない
深い紺の海 冷たい海 大洗のあたりは岩場
が多いと聞いていたのでその先 常陸何々と
つくあたりまで遠出した 小豆色の電車に乗って
高校三年の時友人たちと 甲羅干しよりもしっ
かりと泳いだ ひとり 岩場で波に足を取られて
怪我をした すっかり疎遠になってしまった 帰り
の電車で全開のまどから風が吹きつけて 夏の
シャツの薄い生地のなかに押し込まれて膨らん
だ まだ痩せていた

結婚してからは車で大洗へ出かけた 開通して
それほど経っていない常磐道に千葉から入って
途中のサービスエリアでアメリカンドックなど
齧りながら 大きな水族館がある 込まない平日
実家の母も誘ったりして 誘えば母はどこへでも
ついてきた 孫と車が好きなのかと思った

水族館のショップで 青いイルカのぬいぐるみを
買った 兄に 妹にはピンク 次に行ったときは
イエローの同型の物を買った 兄はその頃から
少ししか精神が長じていないので いまだに
そのへなへなになったイルカを手に持って寝て
いる なぜか ブルーヤンヤン と名付けて持って
いる ヤンヤンとは何だろう ブルヤンと略して
いる 我が家の独自用語の一つだ イエヤン
とピンヤンは放置されている その代わり マザ
ー牧場の手のひらサイズの羊のぬいぐるみを
妹は大切に持っている

駐車場から砂浜に降りられる 砂場色の砂 と
言っても砂場により違いそうだが 砂鉄の含有
が少なそうならくだ色の砂浜が広がり 日立の
方の海よりも青がネイビーよりブルーに近かった
砂浜も岩場がちで しばらく行くと大きな岩盤に
行き当たる

子供たちも交えおそるおそる上がっていくと 岩
の凹みがところどころで潮溜まりになっていて
まず蝦蟹が 続いて小魚が泳いでいるのが見
えた もともとそこに棲みついているのか それ
とも引き潮に残されたのか 干上がりはしない
のだろうか 満ち潮になるとここまで海になる
のだろうか 川を身近にはしてきたが海辺の
ことはほとんど知らない

他の家の子が捕まえた潮溜まりの生き物が
入れられたプラスチックの観察ケースを見せて
もらった 岩場に擬態するだろう茶斑の小さな
魚や 薄茶に透き通った小エビの類が直線め
いた泳ぎ方で生きていて 下の方に動かない
何匹がが沈んでいた 潮溜まりは大きいと温泉
旅館の浴槽ほどもあり 子供たちと手をつないで
滑らないように気を付けながら足をつけて見た
りした 水が冷たかったという記憶は特にない

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